[小説]僕は僕を信じて生きていた 中学生編episode 11
中学生 episode 11
一 勉強なんて二の次で良い
二 常に相手の身になって物事を考えられる人となれ
三 友人関係は深海の様に何処までも深くしろ
四 心からの友情に偽はない
五 数多くの親友を作れ
この良八さんの教えがなかったら、今の俺も朋子とも出逢えずにイコール、武蔵も生を受けなかった事は間違えない!この辺りにはそんな奴らがゴロゴロしてんだよ。この三つの教えは紙に残して逝ったけど、四と五は心に刻めって言ってたよなぁ・・・。お前らは知ってっか?」
「ご、権田さん?俺達は良八さんに育てられたんですよ!。今更そんな事言わせないで下さいよ~」
「お~、悪り~悪り~!ちょっと試しただけだ。勘に触ったら許してくれ」
「何言ってんすか~!やめて下さいよ!って言うか、権田さんは勿論、四と五を言えるんですよね?」
「おっ、お前誰に言ってんだ?」
「え?権田さんに決まってるじゃないですか?権田さんの目を見てお話してるんです」
「お、お~~~・・・。お前、大分精悍な目を身に付けたな!ここまで成長するとはな~。俺はそこまでは無理だって思ってたんだけどな・・・。そんな目で良八さんと目を合わせたら、きっと泪を流して喜びながら・・・。俺も一度しか味わった事ない・・・。まるで獣の様な眼。全身ピクリとも動かす事が出来なかった。あの眼力は尋常じゃなかった。眼でこの権田が眼で殺されたんだ。お前ら味わった事あっか?あのゾクゾクもあり、何処までも澄んだ瞳の奥に隠された・・・。お~っと悪り~悪り~!同じ過ちを犯すとこだったぜ!お前らには愚問だったな」
「なんなんすかぁ・・・。完全に試してるって感じが見え見えですよ!あの言葉を言わせたいだけじゃないですか?丸暗記です。あんなのいつでも言ってやりますよ!
四 心からの友情に偽はない
五 数多くの親友を作れ
ですよね!」
しばらく権田さんと目があったまま数分が経過した。
「お前、そうじゃねぇだろ?」
四 深海から広がる友情に偽はない
五 多くの友人を作れ
だろうが!今頃良八さんは天国で泣いてるな!」
「えっ!権田さんマジで言ってるんですか?って言うか本当にそう教えられてたんですね・・・」
「な、なんだよ!このクソガキが~~~」
「いえ、生前良八さんが言ってたんですよ~。『権田には嘘を教えておいた』いつかお前らに間違った教えを説くだろう。その時は思いっきりバカにしてやれ!やられたらやり返されるって事を教えてやらねぇと、権田はいつまでたっても偉そうな態度を改めねぇからな・・・』良八さんが嘘を吐くなんて、後にも先にもこの一回限りでした」
「はぁ?この権田様が良八さんにそんな無礼な事するはずねぇだろ・・・」
それですよ!その認めないところが駄目だって言ってましたよ。なんでも権田さんは駄目な事をやらかしても一切認めなかったらしいじゃないですか~」
どうやら権田さんはバツが悪くなり話題を変えてきた。
「そう言えば、お前さっき『言ってやりますよ!』なんて言ってたな!目上の人に向かってなんて口の聞き方してんだよ!良八さんにそんな事教わったのか?」
「はい!その時が来たら権田にはタメ口で良いと言われてました」
「はあ?良八さんが許しても、タメ口なんて権田様が許すはずがねぇだろうが」
「って言うか、深海から広がるってどう言う意味ですか?深海って意味不明なんですけど・・・」
「俺も一時期精神的に病んだ事があったよ。
自分の脳みそがドンドンと溢れ出てる事を実感したんだ。もう訳が分からな句なってよ~。宇宙が拡がり続けてるってきっとこんな感じだと確信したよ。しかも、拡がるスピードが半端じゃねぇ。このままじゃどうにかなっちまうと、めちゃくちゃ怖くなった。でも、こんな感覚は誰にも理解してもらえねぇだろ。そんなある日の真夜中の事、食卓の上に親父が競馬の予想をした残骸が残されていたんだよ。一本で赤と紺色の色鉛筆。これが全ての始まりだった。
自然と指先が動き始めて、自分でも訳も分からず・・・。変な話だけどよ、自分の指に身を任せて見たんだ。そしたらアレヨアレヨと訳も分からねぇ?絵というのか、図形っていうのか・・・。本当に気持ち悪くなったぜ!なんてったって描くのを止めようとしてもどうにもこうにも止まってくれねぇ・・・。自分で思ったよ!完全に頭がおかしくなっちまったんだ。
後に自分か同じ状況になるとは思いも知らなかった」
「所長、また訳も分からない話ですか?かなり前ですけど同じ事言ってたじゃないですか~俺達急ぐんでまた今度。竜士~!『mugenn』に戻るぞ!」
僕は言わられるままに良一さんのタンデムシートへと飛び乗った。予想通り後ろタイヤを空回りさせながら白煙と共に急発進。僕は良一さんの脇腹を思いっきりしがみつきながら大声で問いかけた。
「良一さん!自分が大型バイクの免許が取れたらバイク貸して頂けますか?」
良一さんは無言のまま『mugenn』へと到着。到着したと同時に片手で胸ぐらを掴まれ、地面に両足に着かない程に持ち上げられてしまった。以前のゲームセンターでの記憶が走馬灯の様に脳裏を駆け巡る。以前、かばってくれた慎二達は居ない。絶体絶命。息苦しくも精一杯の声で、
「すっ、すみません!本当にすみません!思い入れの有るバイクを貸して下さいなんて・・・。本当に申し訳有りま・・・」
その後の記憶はなく気がつくと病院のベットの上。どうやら持ち上げられたまま気を失ったみたいだった。視線をずらすと、なんと良二さんが腕組みをし仁王立ちしていた。
「話は聞いたぜ!竜士は何も知らないんだからしょうがねぇじゃんかなぁ・・・。後から聞いてもしょうがねぇだろうけど、又とない機会だから何故良一が激怒したか教えてやるよ。実は良一が一六歳の時、自分が貸したバイクで親友が右手の薬指を切断しちゃったんだ。それはそれは、貸した事を後悔するばかりの毎日で暫くは夜も寝れない日々だったらしい・・・。今でも皆んなで指を探している夢でうなされてるらしいんだ。結局、側溝の中まで探したんだけど見つからず第二関節で先っぽは丸くなっちまって・・・。とうの本人は、『俺が勝手に借りて起こした事だから竜士は関係ねぇ。気にすんな!』って、言い続けてるらしいんだけど、良一からすれば気休めにしか聞こえねぇよな。彼奴の性格だから一生背負って行くのは間違えねぇ。彼奴はそう言う男だ!まぁザックリとこんな感じだな・・・。そんな顔すんなよ・・・。まぁ、気にすんな。彼奴も反省してるはずだ・・・。お前が気がついたらお会計して帰って言いってよ。『mugenn』でトラブってるらしいから早く行こうぜ!良一は速攻向かっちまった。最近の良一はテンションが高すぎて手がつけられねぇんだよ・・・。ここだけの話、良一は双極性感受障害って言う精神病でテンションが高ぶると何をしでかすか・・・。俺は単車まわして来るから、お会計済ませて表のタクシー乗り場まで速攻な!!!」
良二さんに言われるがまま大急ぎで支度しタクシー乗り場まで猛ダッシュした。
「おせーよ!速攻って言ったろ?」
「すみません!。夜間のお会計はちょっと面倒くさいらしくて・・・」
「まぁ良い、さっさと乗り込めや!」
良二さんのバイクは何とサイドカー付き。エンブレムを見ると、かの有名なHarley-Davidsun?をあからさまに手書き。しかも、スペルミスで堪えきれず吹き出してしまった。
「ざ~~~んねん!やっぱりお前も笑ったか・・・。その通り!このエンブレムを見て馬鹿にしない奴には出逢った事がねぇな。・・・・・・。おっ、一人だけ居たな。身内をカウントするのも可笑しいか~。手書きのエンブレムを見れば、皆んな日本車にペイントしたんだと思う人がほとんど。ところが、良一に初めて見せた時の第一声ときたら、『あぁ~~~勿体無い。良二も本当に馬鹿だよな!Harleyちゃんが泣いてるぜ~!』流石、良一だと思ったよ。ほとんどの人が、Harley-Davidsonに乗りたいけどお金がないからとりあえずアメリカンバイクにHarley-Davidsonって書いちゃうみたいな・・・。そんな話を良一からいやっちゅう程聞かされてたから、そんな中途半端な奴と一緒にして欲しくないって事でこんな感じになった?・・・。何だか意味が分からなくなって来たな。まぁ何でも良いわ!さっさと乗れや!サイドはノーヘルメットでOKだ!」
恐らく、人生最初で最期のサイドカー。今までに何回かは見かけた事があったけれども、見かけるたびにサイドカーに乗ってる人は相当恥ずかしいだろうと思っていた。まさか自分が乗る事になるなんて想像もしてなく、全身全霊でためらっていると、いやいやに振舞っているのは良二さんに筒抜けの様。お姫様抱っこされサイドカーに押し込められた。
「お前、めちゃくちゃ嫌がってるじゃんかよ~~~。嫌なら置いてくぜ!どうする?」
「嫌がってないですよ~。ちょっとドキドキしただけです。早く行きましょう!」
「はぁ?お前まさかあっち系か!」
「あっち系って何ですか?」
「はぁ?あっち系はあっち系に決まってんだろうが!男しか好きにならない奴。そうならそうって言えよ~。大丈夫、俺は両刀だからお前の気持ちは分かるぜ」
良二さんの真剣な眼差しに全否定など出来るはずがない。とにかく話題を変えるしかない。
「早く出っ発しましょうよ!!!」
「んな事言われなくても分かってるわ!お前が言うんじゃねぇよ。『mugenn』までブッ飛ばして行くからガッツリしがみついてろよ!」
良二さんのサイドカーは全てがむき出し。フレームだけで本当に振り落とされてもおかしくない構造。言われるがままに両脇のアルミ製のパイプを渾身の力で握りしめたと同時にアクセル全開にされた。有り得ない程のパワーで加速して行く。病院の前の道は二キロメートルの直線で、ちょうど真ん中の一キロ地点に押しボタン式の横断歩道。急いでいるからと言っても流石にこのスピードは息すらも吸えない程で殺人的。当然、良二さんに声を掛ける事すら出来ずに涙だけがチョチョぎれ、加速の時にたまたま開いていた口も閉じる事すら出来ない。握力も限界に達し死を覚悟した瞬間に急に減速。これがまた今までに味わった事のない気持ち悪さが全身を襲いかかった。押しボタン信号に救われた。ようやく信号で停止したと思ったら良二さんから耳を疑う一言が、
「ど、どうなってんだ?誰もいねぇじゃんかよ・・・」
道の両側は、背丈が膝下程の原っぱでイタズラ後に隠れようがない場所。
満月の月明かりで視界も良好。二人で辺りを見渡すも誰も居ない。
「俺、マジでこう言うの苦手なんだよ・・・。出てこいや!」
誰も居ないので出て来るはずもなく、良二さんが気をまぎわらしているのが見え見えで、ちょっと残念な気持ちにさせられた。
「そう言えば、ホレ!俺の名刺。裏見てみ~!」
見ると、
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☆ 時速八〇キロオッパイ揉み揉み体験コース ☆
☆ お一人様 五分 二五〇〇円 一二歳から一五歳限定 ☆
☆ ◉◉◉秘密厳守致します◉◉◉ ☆
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「りょ、良二さん!時速八〇キロオッパイ揉み揉み体験コースって?」
「ほ~ら!やっぱり竜士も男だな!オッパイのフレーズで反応しない男は居ないと自負してんだ。興味津々だろ~。顔がニヤケてエロい事考えてるのが見え見えだぜ~」いいから、俺の言う事聞けって!窓の外で両手広げてそのままにしてろ~。もうちょい、もうちょい・・・。うぃっし!今だ!グーパーグーパーしてみ!」
良二さんに言われるがままにやってみて衝撃を受けた。
「恥ずかしがらなくて大丈夫だぜ!良一もお前と同じで男しか好きになれない奴なんだ・・・。他の人には死んでも言いふらすなよ!良一は俺も知らないと思ってるはずだからよぉ・・・」
言葉を失った。喧嘩も強く男気が溢れている憧れの良一さん。お年寄り、子供達、女の子、特に大人の女性には途轍もなく優しい良一さんがまさかのホモ。ホモ・サピエンスだとは思いもよらず驚きを隠す事すら出来なかった。
「良一さんがホモ・サピエンスってどう言う事ですか?」
「はぁぁぁ?そのままじゃねぇかよ!ホモ。男好きって事しかねぇだろう。ホモのホモはホモ・サピエンスのホモかららしいぜ・・・。ホモ・サピエンスって言い辛いだろ?言ってみろよ。僕はホモ・サピエンスです・僕はホモ・サピエンスです・僕はホモ・サピエンスですって早口で三回言えるか?」
「だろ。言えるに決まってんじゃんかよ!まともに三回言い切ったのはお前だけだよ。どんだけ真面目かってんだよ・・・」
「あっ!ヤベ~~~!!!忘れ物しちまった。サイドターンすっからしっかり掴まってろよ~」
「サ、サイドターンって何ですか?」
良二さんは不敵な笑みで信号が青に変わった瞬間やっぱりアクセル全開。ありえないスピードで加速して行く。大きな看板に『この先急カーブ』『速度おとせ』『死亡事故発生地点』サイドブレーキを引いた。
『キキ~~~』物凄い音と共に車体は180度。
「どうだ?これがサイドターンってやつだ」
僕は放心状態。
「竜士!こんな程度でびびってどうすんだよ!それはそうと、この間お前誰かの相談に乗って愚痴を言ってたな!見返りなんか期待して相談にのってやってんのか?見返りがないと陰口叩きやがる「せっかく彼氏だの仕事だの紹介したのに・・・。とか言いやがってよ~。そもそも、お前の紹介なんてそんな物だって事に気が付いてない。人には向き不向きってもんがあるじゃんかよ!お前が偽善者ぶって適当に紹介するから、お互いに不愉快な気持ちになるんだ。おせっかいかもしれねぇんだ。そう言う奴に限って、周りの空気を読む事が出来ねぇ!相手の気持ちなんて一切考えず・・・。?、ってか考えられねぇんだろうな。まぁ、俺から言わせれば可哀想な人種だな。どこまで行っても本当の友達は出来ねぇよ。でも、そう言う奴に限って知り合いが多いのは認めるけどな・・・。今まで築き上げて来た友情をそんなちっぽけな事で台無しにするんだったら・・・。お前から声かけて友達になったんだろうが!何って言ったら良いか分からねぇ・・・。これだけは自信を持って言えるぜ!お前が薄っぺれぇ~ってな。良一の友達も俺の友達も分厚い心を持った奴らばかり」
僕は図星だった。本当に薄っぺらい人間だと自分を責めた。
この中学生での出逢いを大切に思い、僕達は無事中学校を卒業した。
僕達のバンド、お子様ランチーズのギターとベースは未だ決まってない。
