第3編|その新規事業、止めるか、賭けるか。――「小さく試す」意思決定が欠けた組織で起きていたこと
意思決定が極端になるとき
新しい取り組みを検討する場で、
意思決定が極端になる瞬間があります。
慎重になりすぎて、何も決められない
あるいは
十分な検証がないまま、
勢いで大きな投資判断が出てしまう
どちらも、
決して珍しい光景ではありません。
なぜ、この二択しかない状況に陥ってしまっているでしょうか。
①|「筋は悪くない」が続いた事業
ある事業の話です。
顧客課題の仮説もあり、
方向性としては、決して悪くない。
関係者も真剣で、
否定的な意見ばかりだったわけではありません。
会議では、
「やる価値はあると思う」
「方向性は理解できる」
そんな言葉も、
何度も聞かれました。
それでも、
GOは出なかった。
②|議論が「二択」に収束していく
議論が進むにつれ、
論点は次第にこう整理されていきました。
この規模で、本当にやるのか
失敗した場合、説明がつくのか
気づけば議論は、
「大きくやるか/やらないか」
という二択に収束していました。
本来あるはずの、
事実を取りに行く
次の判断材料を増やす
小さく始める
という選択肢は、
ほとんど俎上に載っていませんでした。
③|止まった理由は「慎重さ」ではなかった
結果としてその企画は、
明確に否定されることもなく
明確なGOも出ないまま
いつの間にか議題から消えていきました
これは、
誰かが慎重すぎたからではありません。
「小さく刻んで前に進む」
という動き方が、
組織の意思決定に組み込まれていなかった
からです。
そして、この新規事業の起案者は「この会社では何もできない」と去っていきました。
④|一方で、勢いでGOが出た案件もあった
皮肉なことに、別の場面では、
十分な検証がされないまま
かなりの金額を投じる大きなGO判断
が出たこともありました。
「動かないよりは、動こう」
その判断を
一概に否定するつもりはありません。
ただ、
小さく試すプロセスを経ていない分、
学びのコストは高くついた
という実感があります。
その後、その意思決定をした部門長は「立ち上げた」成果によって次のキャリアに栄転していきましたが、その事業は「売れないが、でもやめられない」という状況に陥っていきます。
⑤|問題は「覚悟」でも「勇気」でもない
みなさんの会社でも、これまで挙げたような事例を目にしたことがあるのではないかと思います。
ここで感じたのは、
覚悟の問題でも、
勇気の問題でもありません。
問題は、
仮説を小さく試し、
判断を更新していく“刻み方”が、
組織の意思決定として設計されていないこと
でした。
止まるか、賭けるか。
この二択しかない状態では、
どちらを選んでも、
歪みが生まれます。
結び|次に考えたいこと
では、なぜ多くの組織では、
小さく試すことが評価されず
途中経過が判断材料にならず
結果だけが問われてしまうのか。
次回は、
この「刻めない意思決定」が生まれる背景を、
評価・会議・責任の構造という観点から
整理してみたいと思います。
