ドラクエで楽しむ日本美術|応挙と蘆雪のモンスターズ【ドラクエの日】
5/27はドラクエの日!
2026年はドラゴンクエスト発売40周年アニバーサリーということで、新作ナンバリング12の発表など、情報解禁に期待が高まっています。
なすにきびも小学生の頃、ポケモンや妖怪ウォッチをやっていない中でドラクエだけはやっていた、ドラクエっ子。特にモンスターズシリーズから入った、モンスターズ大好き派なので、今回は、ドラクエを楽しむように日本美術を見る、という時々やると面白い見方を紹介します。
※ぜひ動画を再生しながら読んでみてください
◯応挙の虎が こちらを見ている

鳥山明が描いた、シンプルなのに最大限に生き生きとしたモンスターたちは、言うまでもなくドラゴンクエストシリーズの大きな魅力の一つ。唯一無二のかわいらしさを持つモンスターだからこそ、他のRPGでは物足りなくなってしまうのはなすにきびだけでないはず。
「自然に生きる存在としての息吹と、視覚的に楽しむ絵としてのデフォルメのちょうどいいところを攻める」という、ドラクエひいては、日本の漫画・ゲームイメージ界で重要なポイントは、生物の描写において古来から続く日本美術の永遠の命題だ!
日本美術史の中で描かれる生き物たちというと、何が思い浮かぶだろう。最古の漫画とも言える《鳥獣戯画》や、江戸時代奇想のスターである伊藤若冲による《動植綵絵》も素晴らしい。だけど、上記の点で一つの頂点を極めたのは、円山応挙じゃないだろうか。
三井記念美術館で昨年開催された「円山応挙展」。そこで、初めて東京にやってきた香川県の金毘羅神社にある《遊虎図襖》はうますぎる応挙の虎を存分に楽しめる。

かわいい。かわいいしカッコいい。それでいて、自然に生息する動物であることを全く疑わせない説得力の高さは、鳥山明による生き生きとしたデザインを見ている時の感覚に近いものがある。
さらに鳥山明のモンスターといえば、「プレイヤーである、画面のこちら側を見ている」ことが大事にされているなんてよく言われるけれど、この応挙こんぴらとらも、1匹1匹がこちらをみている!広い平原で突然エンカウントしたような場面。

仲間のリーダー格のように見える。

なんだかメスの虎に見えてくるような気も、、、?

こいつを仲間にしたい

こちらを見ているだけでなく、そのポーズと表情から、性格や強さなんてのも勝手に読み取れてしまう。決して情報量が多くないのにここまで想像力を掻き立てられること自体が素晴らしい。「上手さ」にジャンルがあることは言うまでもないけれど、これからこういう絵の上手さを説明する時は、「鳥山うまい」「応挙うまい」みたいな言葉を作れば分かりやすいんじゃないか。
虎の筋肉と模様、応挙による絶対的な観察眼と写生力に裏付けされた生き物たちは、まさに一休さんの虎のように現実世界に出てきそうなリアル感を持ちつつ、かわいらしくデフォルメされてこちらに媚びてくる。ドラクエモンスターの系譜を作るとするならば、応挙はそのバランス感覚の始祖と言えるのかもしれない。
ちなみに、鯉も虎以上に応挙の技巧が光るモチーフ。ドラクエの水世界と見比べると何か発見があるかもしれない。
ドラクエの虎といえば、5初登場のキラーパンサー。他にもピンク色という奇抜な「キラータイガー」。びっくり見た目なのになんだか受け入れてしまう「とらおとこ」だったり、魅力的な虎が多い。鳥山明といえば、メカとドラゴンが代表的なイメージだけれど、虎も結構好きなのだろうか。動物の中でも、筋肉のつきかたや、猫科の習性と凶暴性、かわいさとかっこよさの絶妙なところを描きあげられるのか?といった点で、虎という存在が「鳥山うまい」を測る基準になると言える。
虎といえば、応挙の弟子、長沢蘆雪の虎も有名で、先日まで府中市美術館で代表作の襖絵、飛びかかる虎を見ることができた。
もちろんキャッチーなかわいさを持つ虎だけれど、個人的には応挙の虎の方が断然好き。蘆雪は蘆雪でゆるかわの系譜を開拓しているものの、師匠のリアルと汎用性の追求は超えられない。虎一つをとっても、蘆雪の虎は禅をルーツにもつ伸びやかな雰囲気が支配する、「鳥山うまい」とはまた別の路線であることが分かる。
しかし、ドラゴンクエストといえば、もちろんドラゴンでしょう!
龍で言ったら、蘆雪の龍は魅力抜群。
◯蘆雪の龍に 君は勝てるか

ドラクエの話からすると、冒頭でも少し触れたように、なすにきびはナンバリングをやっていた現役世代ではなく、モンスターズ、それもジョーカー2から初めてドラゴンクエストの世界に入った、モンスターズジョーカー世代なのです。DSの中を2画面に渡って覆い尽くす、巨大モンスターの存在。フィールドに突然奴らが現れるワクワクは、BGMを聴くと鮮明に蘇る。
「強大な魔物に挑戦」↓
この音楽がかかると、普通に生活していたフィールドのモンスターたちが一斉に逃げ出していく。でもどこからくるかわからないので、視点を変えて探していると、急に背後からはち切れサイズのヌシが現れてびっくり!という楽しい時間がありました。ドラクエ人生の中のハイライト。
元々ドラクエモンスターズ2ドーク戦用の曲で、他のシリーズにも使われるけれど、個人的にはジョーカー2と言えばの曲。ナンバリングとは違う、モンスターだけに溢れたジョーカー世界の質感にもビタはまり。やっぱりすぎやまこういちは天才なんだと思い知らされるなー。
長沢蘆雪が描く龍はまさにこの「強大な魔物に挑戦」がピッタリのビジュアルをしている。ぜひ聴きながら見てみてほしい。
蘆雪の水墨画の滲んでる部分が好きです。なかでも、竜を描いた絵で使われる滲みの表現は、本当、竜が出てくる気象の表現にぴったりで、しびれます。滲みって偶然の影響が大きそうなのに、どうやってこんな風に仕上げていったんでしょうか・・・・竜はいつ描くの?滲ませてから?それとも、滲みが後??… pic.twitter.com/fDATDvfdOf
— 長沢蘆雪展図録(東京美術刊)編集チーム (@edo_fam) May 1, 2026
ドラムの音と共に、嵐の中からぬっしりと姿を現した龍。顔だけでもヒリヒリする気迫と、一体全長はどれほどなんだ!?というワクワクと恐怖。人語も喋れるのかな?と思わせるほどの知性のある顔つき、かと思えば開幕からはげしい炎を喰らわせられてしまうんじゃないか!という絶妙な怖さとかっこよさは、まさに魔物。ドラクエの音楽に遜色のないポップさは、師匠譲りと言えるかもしれない。
〖#日曜美術館 50年展 好評開催中!〗
— 東京藝術大学大学美術館 (@geidai_museum) April 10, 2026
島根県松江市の西光寺本堂を荘厳する、長沢芦雪の《龍図襖絵》(雲龍図)。
大きくうねる雲流を引き裂くようにして現れた龍の姿は気迫に満ち、今にも襖から飛び出さんとするかのよう。
本作の展示は東京会場の当館のみ!是非、芦雪の龍に会いに来てください🐉 pic.twitter.com/02svYUTtOy
現在上野藝大美術館の日曜美術館50周年展でみれる、《龍図襖絵》も迫力抜群。襖の全体に跨って、空間を捻じ曲げるようなモンスターの表現。これはまさにDSのような多画面を支配するモンスターの祖先と言ってもいいんじゃないだろうか。さすが奇想の蘆雪!
この巨大な龍たちに手持ちのモンスターで立ち向かってみたい。ボス戦BGMである「君は勝てるか?」も蘆雪龍にピッタリ。モンスターズおなじみの開幕3カメで蘆雪の龍を見たらまたかっこいいだろうなー。そういうイマーシブシアターをいつか見られるだろうか。
余談だけれど、ジョーカー2のボス枠「レオソード」も相当好きな造形。
ちなみに龍が今まさに出現するという雨風の滲む表現も師匠譲り。応挙の《驟雨江村図》も流石の描写力と舞台構成力を窺わせる。↓

◯二人が現代に生きていたら
卓越した技術と天性のユニークさによって、画面に新しいモンスターを生み出した円山応挙と長沢蘆雪。彼らは伝統的でありながらも、常に新鮮なワクワクを鑑賞者に届け続ける存在として、日本美術史の中に燦然と輝いています。その存在はまさに、40年以上も進化を続けながらも信頼のクオリティとブランド力を維持するドラゴンクエストのようで、日本美術に特に興味がない人にもお勧めできるでしょう。応挙と蘆雪がもし現代に生きていたら、その遊び心から、漫画やゲームを作っていたんじゃないかな。
府中市美術館の長沢蘆雪展は終了しましたが、日曜美術館50年展は開催中。さらにリニューアルした江戸東京博物館で11月から円山応挙展!「リアルの先へ 空間革命」ということで今記事のような日本イメージの源流を探れるものなんじゃないでしょうか。楽しみ。
ドラクエの日ももうすぐ!楽しみ。
おわり
応挙・蘆雪は多く記事があるのでぜひ
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