真珠の耳飾りの少女来日:日本アンニュイ史を編纂したい【美術ニュース】
真珠の耳飾りの少女、今夏来日!!!
◯最後の来日?
先日、オランダの画家ヨハネス・フェルメールの大傑作、《真珠の耳飾りの少女》が8月21日〜9月27日に大阪中之島美術館にて展示されることが発表された。世界の誰もが知る教科書級大名画の彼女は、所蔵先のマウリッツハイス美術館からなかなか貸し出されることがなく、今回14年ぶりの来日は、当美術館の改修工事による休業により実現したもの。マルティネ・ゴッセリンク館長によると、この《少女》の旅は、日本の皆さまに彼女を送り届けられる、おそらくは最後となるであろう特別な機会です」だそう。
https://www.mauritshuis.nl/jp/コレクションを探す/アートワーク/670-真珠の耳飾りの少女
なすにきび的には、見たことがないので、そりゃあもちろん見に行きたい気持ちはあるもの、《真珠の耳飾りの少女》はかなり小さい。モナリザくらいならまだしも、その小さな作品を大混雑の中、巡回がないために東京から大阪まで足を運ぶか、、、意外と微妙なところ。いつか、オランダ現地に見に行ける日のために、感動をとっておくのもありかなと迷っている最中。
◯2026年はめちゃくちゃ
2026年は《真珠の耳飾りの少女》も加わったということで、「教科書レベルの大人気画家」という括りでも、すごい数の特別展が開催される。去年に引き続きのゴッホに、東京都美術館の開館百周年記念もあり、下のようなすごいラインナップ。
・フェルメール《真珠の耳飾りの少女》
大阪中之島美術館 マウリッツハイス美術館より
・ダ・ヴィンチ《美しきフェロニエール》
国立新美術館 ルーヴル美術館 ルネサンス展
・ゴッホ《夜のカフェテラス》
上野の森美術館 クレラー・ミュラー美術館より
《ローヌ川の星月夜》
東京都美術館 オルセー美術館展
・ミレー《落穂拾い》 東京都美術館 オルセー美術館展
・モネ《戸外の人物習作-日傘を持つ右向きの女》など
アーティゾン美術館 オルセー美術館より
・アンドリュー・ワイエス 東京都美術館 ワイエス財団
・ターナー 国立西洋美術館 テート美術館より
人気どころ、大有名どころという括り(個人的イメージ、勝手)だけでもこの数。ここに、東京都美術館の北欧展や西洋美術館のチュルリョーニス展、国立新美術館のYBA展、ピカソmeetsポール・スミス展など、普段はなかなか見ることのできない特集もあり、府中市美術館の蘆雪展、太田記念美術館の葛飾応為展、MoMATの竹久夢二展、サントリー美術館の河鍋暁斎展と、日本美術も絶対に外せないものがいくつも。森美術館ロン・ミュエク展、現代美術館のエリック・カール展と現代美術、絵本まで気になるものが多く、どれもめちゃくちゃ楽しみ。
なすにきび的には東京中心で申し訳ないですが、府中市美術館の「蘆雪展」は待ちに待った大イベント。かわいい・ゆるい日本美術代表の府中市美術館金子学芸員の担当される最後の企画展らしいので、寂しいけれど、期待膨らみます。
フェルメール来日& 2026年美術展すごいニュースの紹介でした。ここから先はフェルメールの真珠の耳飾りの少女に関する、勝手おしゃべりになるので気になる方はぜひ。気にならない方も、いいねだけでも嬉しいのでしてやって!
◯名画の格
先ほどの2026年教科書級名画来日リストは、実はリストアップ順はなすにきびによる勝手な名画ランキング格付けをしている。ゴッホ、モネは昨今の印象派人気と観客動員数、見た時の癒し、映えの感覚など色々な点で、人気で言ったらずば抜けているとは思うけれど、「名画」としての認識で言ったら、一概にトップと言えないところがあると考える。
個人的な意見ではなく、ここでいう「名画」という意味合い、あくまでも一般的な「美術=静かな感性による鑑賞」という認識に準じた時、当てはまるのはやっぱりルネサンス、来日し得る中ではダ・ヴィンチが圧倒的。モナリザはまさに名画中の名画、名画を超えた偉人が生み出した宝、名画王としても異論は出ないはず。
そういった名画の格を考えるフェルメールももちろんトップ争いに入ってくる、しかし、フェルメールと言っても部屋や画中画、差し込む光などはやっぱり「名画の格」を邪魔する情報になってしまうことがある。《牛乳を注ぐ女》は有名どころだとしても、やはりフェルメールの中でも《真珠の耳飾りの少女》はモナリザと同格とも言っていい、トップクラスの名画。
モナリザのようになんかすごいんだけれど、なんなのかよくわからないし、なんで目が奪われるのかはよくわからない。情報が少ないようで、少なさを考えた時に、膨大な時が過ぎてしまうような、、、印象派のようにただ綺麗だなーという情報に偏らないのが、「名画の格」。ダ・ヴィンチ《美しきフェロニエール》も名画だけれど、《真珠の耳飾りの少女》は有名点を加味して、今回の名画来日リストでは一位においた。ただ、フェルメール含め、有名になったのはここ20〜30年くらいのこと。↓
◯アンニュイの始祖としてみる
一瞬の時を切り取ったような、光と空気感。日本人に刺さるフェルメールのこのスタイルは多くの作品だ共通している。けれど、《真珠の耳飾りの少女》は背景が黒く、光も強い、他の作品と比べてもさらに一瞬、雑誌のようなインパクトと、それに伴い儚さも増大している。モデルがわからない、胸から上の絵というアイコンとしても使いやすいのが、人気と名画の格を押し上げている。
フェルメール絵に登場する人物は大体何かしている、牛乳を注いだり、編み物していたり、手紙を読んでいたり、《真珠の耳飾りの少女》は振り返っているだけ。なんの行為かわからない、その上で目が虚ろげで、口が半開き。そして眉毛もない。この少女には儚さだけがある。そこでこの少女を「アンニュイ」表現の先駆けとしてみようと思った。
フランス語に由来する「アンニュイ」という言葉は1980年代ごろから日本で使われたらしい。なすにきびは若者なので「アベック」とかと同じ雰囲気で流行り出した言葉なのかなー、と分からないながら想像しつつも、アンニュイは現代でもよく使われる言葉として生き残っている言葉。気だるげ、退屈という雰囲気から、儚げ、色っぽいというポジティブ面を示すアンニュイという言葉。最近でも雑誌や、アンニュイな俳優とかよく聞く言葉だと思う。《真珠の耳飾りの少女》はまさにアンニュイな感じがする。
◯フェルメールと日本人は合わない
このアンニュイという言葉、調べてみるとここまでよく使われるのは、日本だけらしい。そもそもがフランスの言葉なので、フェルメールの生きた17世紀オランダに、その概念が存在するわけがない。しかし、アンニュイと言痛い。そもそもフェルメールの一般的なイメージである静けさというところも、本人はそこまで考えていないどころか、感覚も違う。
記憶に新しいところだと、《窓辺で手紙を読む女》を修復したところ、キューピッドの画中画が出現したれ例。実物も見たけれど、当時も言われていたように絶対修復前の方がいい、少なくとも日本人の侘び寂び的美的感覚にはビッタリはまる。フェルメールは意外と情報が多い画面が好き。
《真珠の耳飾りの少女》も鑑定によると、本来は背景が黒ではなく、少し緑がかった色で、カーテンの描写もあったかもしれないという。もし《窓辺で手紙を読む女》のように修復されたら、今のような「アンニュイ」は崩壊し、人気が落ちてしまうかもしれない。そういう意味ではフェルメールは時間が掛かって再評価された画家だけれど、時間、経年劣化に助けられたラッキー名画だと言えちゃう。本人の意図と離れて。
◯フェルメールを通して
つまり、フェルメールも静けさ、アンニュイを追求した画家でもなく、世界的にあの少女をアンニュイとは位置付けない。しかし、アンニュイとしてみる。「フェルメールを見る」という行為自体から日本人の美的感覚を研究する、そういう実験を行うことができるかもしれない。1990年代以降のアンニュイカルチャーの歴史を作るとしたら、《真珠の耳飾りの少女》はかなり大きなアイコンになるんじゃないだろうか!
アンニュイに明るい方はぜひ、コメントなどでルーツを教えてください。
振り返る動作、表情などに見えるここまでのアンニュイ加減、色々考えると、この絵はモデルを見て描いていたとしても、ポーズをとっていないなんでもない雑談の時間に、ふとフェルメールが良いと思った瞬間を描いた。そんな偶然の産物だという可能性もある。
人々が寝静まった夜、名画たちが動き出すなんていうアニメーションなどがあるけれど、実際《真珠の耳飾りの少女》は目を離したら1秒前の見え方は2度と訪れないような、一瞬の光がある。なすにきびがもし実物を見るなら、目がカッピカピになるまで、じっと見つめて、絶対に動きを見逃さないようにしよう。どんな混雑具合になるか含めて、夏の来日に期待が高まる!
おわり
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