「親性脳」と「アタッチメント」 今そして10年後20年後のために
子育て支援の多くは、
「子育ての大変さをいかに軽減するか」
という方向に進んでいます。
たしかに大変さの軽減は大事です。
大変さに苦しんでいる人がいたら、
できる限り手助けするのは当然です。
「楽に」と「楽しく」が分かれるところ
利便化省力化を追求しても
人間は幸福になれない。
これは先日「いのちの講演会」で、
脳科学者の明和(みょうわ)政子さんの言葉です。
ここからは、明和政子さんの講演の内容を
ご紹介します。()内はわたくしの説です。
脳の成長は25〜30歳まで続く
脳の成長は胎内から始まり、
出産時にもかなり完成していますが、
成熟にはとても時間がかかるそうです。
脳のうち特に前頭前野、
人間らしさを司る部分は
環境の影響を受けにくくなるまでに成熟するのは
なんと25〜30歳。
これは生殖機能の完成から10年かかります。
脳が成熟していないうちに親になっていく。
その未熟な部分は、人類の長い歴史では
「共同養育」で補われてきました。
母親だけでなく、両親だけでもなく、
祖父母、おじおば、大きい兄姉、隣近所の年長者などが
赤ちゃん〜幼児〜子どもの成長に関わりました。
母親のみに負担が集中する子育ては、
20万年の人類史上のうち80年に過ぎず、
ヒトにとって不自然なことだそうです。
(核家族化は「大家族の束縛」からの「解放」でしたが
同時に子育ての「一極集中」となり、
両親特に母親の孤独や負担も強めたことになります。)
経験によって育まれる親性脳
(子育てに必要な脳や心)
親性脳の動きは、
①無意識的な反射 すばやく敏感
②意識的客観的 推論
例えば赤ちゃんが泣いたら、
①すばやく気がつき(そばに行き)
②どうしたのかな?どうしたらいいかな?と考える
という脳の動きです。
このような親性脳は、研究では、
子どもと過ごす経験によって育まれることが
わかっているそうです。
昔は普通だった多人数きょうだいや親戚の
赤ちゃんや小さな子どもとの日常、
近所での異年齢集団での関わりで、
親にならずとも親性脳は育つとのこと。
また逆に、そのような経験がないと
親性脳は育たないということになります。
そしてそれが、虐待につながってしまうのです。
「親になったら親性のスイッチが入る」のでもなく
「女性が生まれながらに母性がある」のでもなく
遺伝的に組み込まれているのではないというのが
最新の研究結果だそうです。
また、近年の「子育てロボット」は
一見便利なようで、実は
親性脳の発達の機会を奪う、とのこと。
講演の中で見せていただいた動画は、
授乳ロボットとおむつ替えマシーンでした。
利便性と省力化のきわみですが、
以下の動画の最初の10秒がおむつ替えマシーンです。
また、人間が成長課程で(親になるまでに)
赤ちゃんとじかに接する経験があることが、
これが親性脳が育ちやすいことにつながる。
戦後の歴史の中で、
異年齢異世代が関わる機会は
どんどん減っていきました。
赤ちゃんとじかに接することなく大人になってしまう、
赤ちゃんの感触のポジティブな経験がないこと、
むしろ「赤ちゃんって子育てって大変!」という
ネガティブな感覚。
それが少子化の大きな原因であり、
成長課程で赤ちゃんとふれあう経験ができるように
社会全体で育む必要がある、と強調されました。
アタッチメントの重要性―幼少期に育むべきもの
他者は心地よさをもたらしてくれるという
心身全体での感覚の記憶が、生きていくために必要
というお話もありました。
つまり、大人になってからも、
いざというときに
いつでもくっつける誰かがいる
ことが、心身のホメオスタシスの崩れを治す。
人間の
外受容感覚(身体外部の知覚―五感)と
内受容感覚(内臓感覚―空腹、ドキドキなど)の
連合学習によって統合していく。
たとえば赤ちゃんが
抱かれて授乳してもらうと
内受容感覚のお腹が満ちていく心地よさの感覚と
外受容感覚の抱かれる感覚とを
同時に味わいます。
外受容感覚の抱っこや授乳は、哺乳類共通ですが、
ヒトに特徴的なのは声かけや微笑み、
チンパンジーでも決してしないそうです。
「あらかわいいわねぇ」「どうしたの?」などなど、
おせっかいなまでに赤ちゃんに関わろうとする、
耳に入る声、目に入る表情。
(おせっかいなまでに。
そうです。わたくしが当地での子育て期間、
一番力になったのは人のまなざしと声でした。
助かったのはわたくしだけでなく、
子どもたちもなのだ、とは感慨深いです)
下の記事「新米母を支えた周りの人々」のことを
つづっています。
赤ちゃんはあやされるとき、
外側からの感覚としては
心地よい声を聞いてあたたかいまなざしを見て、
なでられる感触をキャッチします。
そして身体の内側の感覚としては
なでられる(秒速2〜3センチ)ことにより
脳下垂体からオキシトシン(幸せホルモン)が
分泌されて内側からほっとします。
この繰り返しで
「他者は心地よさをもたらしてくれる」
という記憶が心身に刻まれていき、
生きていく自信
他者と円滑に関係を築いていくための土台が
できていく、というのです。
赤ちゃんや子どもにとってのアタッチメント対象は
両親や祖父母に限らず、
他者でも全然かまわない。
つまり、他者であっても他者としても、
目の前の赤ちゃんや子どものアタッチメント形成に
充分関われる、ということです。
人はアタッチメントが不足している限りアタッチメントを求める
明和政子さんのお話では、
トーヨコ、グリ下などに若い人が吹き寄せられるのは、
アタッチメント対象を求めて、であって、
生物として生きるために
どうしてもそうせざるを得ない、とのこと。
このような話を聞くと、
ニュースの見方も変わってきます。
事件の「犯人」について、
「なんでこんなこと…」と批判的だったことが、
「アタッチメントが足りなかったんだろうな」と
変わります。
そして、赤ちゃんや子どもが
充分アタッチメントが形成されるように、
また大人のアタッチメント不足も補われるように、
社会として個人として何ができるだろうか。
そういう思いが進んでいきます。
親でない人ができる「子育て」
赤ちゃんや子どもにとってのアタッチメント対象は
他者でも全然かまわない。
つまり、他者であっても他者として、
目の前の赤ちゃんや子どものアタッチメント形成に
(つまりは10年後20年後の大人の人格形成に)
充分関われる、ということです。
長くなりましたが、
これでも簡単にかいつまんで、
明和政子さんのお話をご紹介しました。
ヒントになる何か、があれば、なによりです!
最後になりましたが、
明和政子さんご自身の言葉で
わかりやすく説明されている記事をどうぞ!
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