見出し画像

都蘭山居手帖:「タオの調べ、漂流の果て:天地と結ばれる原始の野性」

涼亭が完成してからは、近隣の住人たちが足を止めては、気軽に庭へ立ち入るようになった。ある日、近くの谷の寺から二人の若い比丘尼が通りかかり、
「上に上がらせていただいても?」と声をかけてくる。彼女たちは、樹幹を刻んだだけの不安定な階段を、両手で慎重に支えながら這い登っていく。二階のバルコニーから樹林越しに広がる青い海を眺め、二人は顔を綻ばせた。「ここからの海は、なんと美しいのでしょう。私たちの寺にも、こんな涼亭がほしいわ」

週末になれば、山道を行く旅人たちが門を叩く。「すみません、コーヒーはやっていませんか? なぜ売らないのですか? ここは本当に素晴らしい場所だ。写真を撮ってもいいですか? 上に登ってみても?」

都蘭に暮らすアミ族の友人たちは、四、五人で連れ立ってやってきては、腰を下ろして何時間も歓談する。「ここで昼寝をすると、どうしてこんなに気持ちがいいんだろう。本当にゆったりと過ごせるよ」と彼らは笑う。 またある時は、隣組の長がふらりと現れ、一瞥してこう言った。「お前の家の柱は、一本として真っ直ぐなものがないな。だが、それがまた格好いいじゃないか!」

近所の子供たちは、この場所を我が物顔で遊び場にしていた。裸足の子供たちは、まるで樹上の猿のように身軽に上下し、スニーカーを履いた小学生たちは、怖がって悲鳴を上げながらも、ようやくの思いで頂上へ這い登る。この涼亭はいつしか、近隣の子供たちにとって、誰にも邪魔されない不思議な冒険の「樹屋」となっていた。

大武山を背負うパイワン族の警察官であり、邦訳『山豚、モモンガ、サキヌ』で知られる作家・サキヌが、ララウラン青年会の若者たちを連れてやってきた。彼は私の涼亭を見上げ、若者たちにこう言い放つ。 

「見ろ! 一人の『白浪(漢人)』が、流木だけでこれほど堂々とした二階建ての小屋を建てたんだ。我々も襟を正すべきだ。お前たちもいつか、自分たちの手で、自分たちの青年会所を建てるんだ」

山や海にあるありあわせの材で、人を魅了する空間を組み上げたこと。多くの先住民の友人たちが、この涼亭を称賛し、驚きをもって受け入れてくれた。かつて世界中の独創的な樹上の家をまとめた写真集を手にしたとき、そこにはロビンソン・クルーソーのような、流浪の美学と遊び心に満ちた暮らしが息づいていた。この涼亭もまた、そんなささやかな冒険の結実なのである。

一年後、蘭嶼の作家であり、『海を想う日』の著者でもあるタオ族のシャマン・ランポアンが姿を見せた。彼は富岡漁港までわざわざ引き返して極上の魚を仕入れ、自ら台所に立って刺身を切り、汁物を煮込み、酒を酌み交わした。夜が更け、彼が静かに口を開く。

「お前が蘭嶼について書いて報道文学賞を獲ったあの作品……。俺はあれを最低の出来だと思っていた。正直、ずっと見くびっていたよ。だが今日、この涼亭を見て確信した。俺はタオ族の男として、あんたを正式に認める。あんたは自らの手で、自分が『人(タオ)』であることを証明したんだ。だからこそ、俺は今日、魚を捌いてあんたをもてなした。あんたは、本物の男だ」

「土虱(トス)」の父親は、蘭嶼のタオ族の出身だった。彼は涼亭に静かに腰を下ろすと、私にこう語りかけた。 「お前の涼亭は大きくて、実に美しい。お前という人間もまた然りだ。この場所が本当に好きだよ。お前は、とてつもなく勇敢なことをやってのけたんだ」

その言葉を聞いた瞬間、二十年以上も前の旅の記憶が鮮やかに蘇った。蘭嶼の野銀集落を歩いていた時のことだ。タオ族特有の作業用涼亭の前を通りかかると、老人が手招きをし、日陰に誘ってくれた。並べられた干し魚とタロイモを指し、彼は言った。「皆で食おう。あるものを分け合うだけだ。お前は俺の客なのだから、遠慮はいらない」

私は微笑んでこう返した。「ようこそお越しくださいました。いつでも友人を連れてきてください。ここは、あなたの台東での家ですから」

この場所をすっかり気に入った彼と二日間を共にした後、彼は私に祈りを捧げたいと告げ、生きた鶏と米酒を用意するよう求めた。彼はタオ語の祈祷詞を低く呟きながら、涼亭の流木の柱の周りを歩き、最後に鶏の血を滴らせた。儀式が終わると、彼は涼亭に座り、再び長い祈りを捧げ始めた。

低く響く声は、次第に独特な旋律を帯びていく。シンプルながらも抑揚のある、力強いリズム。それは、タオ族に古来伝わる祭歌であった。

その歌声に身を委ねていると、意識は次第に遠のいていく。まるでオーストラリアの砂漠で、先住民が古の調べを吟じている場に立ち会っているかのようだ。太古の集落、荒野の海岸……時空が溶け合い、意識は深く沈んでいく。人間が天地や日月星辰と分かちがたく結びついていること、そして我々の内に眠る原始の野性的な本能が、静かに呼びかけてくるのを、私は肌身で悟った。


いいなと思ったら応援しよう!