よもすえ団のみなさんが、ゆるゆると地球を侵攻中です!(改訂版)その7
『第2章が始まりますよ~』
【よもすえ団のお仕事ってなんですかー?】
ずちころねんの思い付きにより、無事チーム名を手に入れた『よもすえ団』
その5匹のその後の様子はどうなったかというと。
何も進展していなかった。
いや、それぞれが勝手気ままにくつろいでいた。
どこかの家庭で見られるような、とんでもなく日常な光景が、そこで繰り広げられている。
座卓の前ではずちころねんが『デイリー・ギャラクシー・タイムス』を拡げ、煎餅をかじりながらぬるくなったほうじ茶をすすっている。
その向かい側に座っているちょこぺんが、鉱石ラヂオを聞きながら『スターゲート競馬場、第386,592回ネビュラ杯』のゲートオープンを、今や遅しと待っていた。
手にした赤ペンを器用にくるくると回転させている。
窓辺近くでは脳筋族のぱふんが筋トレで汗を流し、床の間の前ではちぃたんが量子クレヨンでお絵かきに夢中になり、その隣では、ももちゃんが立派な柱で爪を研ぎ始めていた。
のどかだねぇ。
御用聞きの兄ちゃんと口やかましいご隠居、それと鬼嫁が出てこないのが不思議なくらいだ。
実に和やかな雰囲気だ。
アットホームなドラマでも観てるのか、俺は?
もっとほら……急に室内の灯りが点滅したり、不気味な声が聞こえて空中に目玉が浮かび上がるなどの超常現象が起きて、このちび共が慌てふためくとかいう展開はないのか?
あれ?
それってもしかして、俺の役目だったりしないか?
俺、屋敷に取り付いてる地縛霊。
本業は、この屋敷に足を踏み入れたやつを目いっぱい怖がらせること。
あ~、でも今の俺ってナレーション担当なんだよなぁ……何気に俺の仕事、増えてね?
それも、前任の担当者が職場放棄したせいだ。
バチ、バチッ、バチ、バチッ!
廊下の電灯が、急に明滅し始める。
そして、よもすえのちび共がくつろいでいる部屋もまた……
「およ?なんだか……96、お化け電気に……97、なってるぜ…98、従業員に言って……99、電灯変えてもらおうか……100!」
畳の上でぱふんが、チカチカ電灯を見ながら筋トレを続けていた。
バチン!
いきなり天上の電気が消えた。

「およよ!」
「停電か?新聞が読めん」
「ラヂオは聞こえるがな?」
「ふふふ、真っ暗にゃん!」
「怖いよー、怖いよー、暗いの怖いよー!」
息の上がったぱふんは大の字になり、新聞が読めなくなったずちころねんが不満げな声を上げ、ちょこぺんはレースの勝敗に夢中になり、ももちゃんは暗闇でまん丸な目玉を光らせ、ちぃたんが泣き喚いた。
真っ暗闇の中でちび共がパニックになっていた。
ガタン!
何かがひっくり返る音。
「痛ぇ!」と叫ぶぱふん。
カラ~ンと瀬戸物の転がる音。
ビリビリ、紙の破れる音。
「まだ、人生相談のコーナーを読んでおらん!」
ずちころねんが座卓ををパンパン叩く。
ごちん!
誰かが何かを蹴飛ばした。
ガガガ…ザザ……ラヂオのノイズ。
「やや?一番大事な部分が!」
ちょこぺんがぼやく。
「シクシク、シクシク……38」
これは、ちぃたんだった。
うふふふ……
闇の中、空中にキラキラと光る目玉が浮かび上がった。
怖ぇぇ~。
怖いよ、ももちゃん。
俺の寿命が100年ほど縮まったんですけど、って……俺、とっくに死んでる地縛霊でした。
いや、とにかく狭い和室の中は大混乱の様子。
灯りが着いたら、さぞかし見事な仕上がりになっているに違いない。
といっても俺、この屋敷の電気系統にイタズラしたわけじゃないんだけどなぁ?
まあいいか。
俺が天井裏で聞き耳を立ててる事にちび共は気付いてないし、もう暫くこのまま実況を続けるぜぃ。
「ううー、こんなに暗くては何も出来ん。ここを出て、大広間の方へ行ってみるか」
ずちころねんが四つん這いになって、戸口に向かって移動を開始した。
「お外は真っ暗にゃん。お月さま、どこかに行っちゃったにゃん!」
「お月さまなら、さっき誰かに食べられてたよ?」
ちぃたんが窓のそばで、カーテンの隙間から暗い空を見上げていた。
その言葉を聞いたももちゃんは、丸い瞳を三日月に変えて笑い始めた。
「にゃはははは!誰ですにゃん、それ」
「知らな~い。でも、おっきいわんちゃんみたいな影を見たよ」
つ、月を喰うでっかい犬みたいな奴?
おいおい、それってまさか……
いや、まだ判んねぇし。
心当たりが無いわけではない俺。
後でちょっと確認しておくか。
ぎゅるるるるー!
物凄い音がした。
腹の虫が鳴く音、のようだった。
誰だ?
「ううう~、はらひれはらほろ、腹減った~」
あ、ぱふんか。
なるほど、納得の腹の虫の音だった。
「腹減ったよ~。飯食いてぇ~」
腹が減り過ぎたぱふんの声には、いつもの勢いと力強さが感じられなくなっていた。
いやまあ、このくらいでいいか?
暗闇の中、もぞもぞ、ずるずるとちび共が移動する音が聞こえてきた。
相変わらずあっちこっちにぶつかりながら、わーわー大騒ぎしながらの移動だった。
「はぁ~、夕飯を食べるのなら、食堂に行くべきだな。ふぅ、最近ろくに食べてない気がする。たまには豪華に海鮮丼が喰いたいものだ」
ため息交じりに希望をのべたのは、ちび共の中では比較的年長者のずちころねん。
いっちょ前に海鮮丼だと?
確かにメンバー構成から言って、海の幸グルメが好きそうな連中ばっかだしなぁ。
そりゃあ、おもてなしならいくらでもしてやりたいけど、ここはお化け屋敷だよ?
といってそうそう、ごーぢゃすな夕食にありつけるなんて思わないで欲しい。
……って、おいおいおい!
「おさかな―!おっきいの持ってきたにゃん」
ふと見るとももちゃんが、立派なメバチマグロを黒い穴から引きずり出そうと奮闘していた。
い、いったいどこから持ってきたー?
「うにゃ~、重たいにゃん。手伝ってほしいにゃん」
ももちゃんはめっちゃ歯を食いしばっている。
そこへちぃたんがやって来て、手伝いながらそっと尋ねた。
「ももちゃん、これお値段は?お金、持ってたの?黙って持ってきちゃ駄目だよ?それじゃネコババだよ」
ちぃたんに尋ねられたももちゃんは、何やら紙切れを手渡した。
『子供銀行券・10万円』
紙切れにはそう記載されていた。
「ももちゃん泥棒猫じゃにゃいもん」
あははは……
それで買い物をしてくるとは。
まー、この世界には葉っぱで買い物しようとする連中もいるから、子供銀行券でもOKかもなぁ。
しっぽをくわえて踏ん張るももちゃん。
しかしいくら引っ張っても、大きすぎるメバチマグロは動かない!
みんな協力してやってよ~。
ぱたぱたぱたと残り3匹がやってきて、一斉にマグロに飛びつき、力任せに引っ張った。
「ぱ、ぱふん、今こそお主の怪力を使う時じゃ!思いっきり、全力で引っ張ってくれー!」
ぱふんに抱き付きながら、ちょこぺんが声を振り絞る。

「おう!」
言われるがままに力を込めて、マグロを引っ張るぱふん。
ずっぽーーん!
見事に引っこ抜かれたメバチマグロ。
それは宙を飛び、ずってーーんと床に着地すると、しゅるるーと廊下を滑りあちこちにぶつかったあげく、とある小部屋に飛び込んで行った。
「へい!メバチ入りやした!」
威勢のいい板前の兄さんの声。
さっそく解体ショーが始まったらしい。
ギュイイーーン!
チェーンソーの音がした。
調理場では今、メバチマグロ VS 板前の60分一本勝負が開始されたところだった。
うーん、これは何時になったら板ご飯が食べられるのかな?
ちび共の腹の虫も、そろそろ限界に近いはず。
急げ、板前!
大惨事世界大戦がはじまる前に、マグロを始末してくれ。
「おかのしたー!」
どこかで聞いた声。
まあいい、ちょっぱやで頼む。
それから待つ事37分21秒。
遂に、ごちそうがちび共に供された。
よかったなぁ。
本当に良かったよ。
世界と、この屋敷が無事で。
(次回に続くぞー)
『作者の呟き』
フォロワーの皆さん、そして初めてお越しくださった皆様──
大変お待たせしました!
よもすえ団の物語、ゆるゆると第2章が始まりました。
この日を心待ちにしてくださっていた皆さん、今回も思いっきり楽しんでいただけたなら、作者としてとても嬉しいです。
毎回、予想外の事態が発生するこの物語ですが……今回もまた、やってくれましたねぇ。
次回はさらにテンション上げ上げで、破壊的ギャグをぶちかます予定です。どうなることやら……?
そして、はじめてこの作品に触れてくださった皆様へ──
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