今日は夫の【ママのおかげだよ、と言ってくれたこと】に恋をした。― 頼れる仲間が、一気に2人増えた日。― |2026.07.06
はじめに
このエッセイは、
国際結婚と、海外生活と、マルチリンガル育児の中で、
私が日々つまずきながら、
「わたしらしく生きる」ための実験の記録です。
「毎日、夫に恋する生活を。」
2026年の元旦に、そう決めて、
「今日の夫の好きなところ」を、
一つだけ、言葉にしています。
それだけで、同じ一日が、
少し違って見えることがあります。
完璧な妻でも、理想的な母でもありません。
それでも、結婚と子育てを通して、
女性として、妻として、母として、人として、
成長していきたいなと。
今日もこの記録が、
誰かの生活の中の、
小さな呼吸になりますように。
着いた瞬間に、言われたこと
「今回は本当に、3週間ゆっくりしてね。
全部、僕がマネージするから」
フランスに着いた直後、
何か、彼の中でも一つ腹を括った様子の夫がそう言いました。
全部、というのは、
息子のこと、
滞在中の家事全般、
3週間の予定を組むこと、
そしてその手配のこと。
つまり、全部でした。
ダナンを出てから、乗り継ぎを入れて丸一日。
寝不足の頭で聞いたので、
最初はうまく飲み込めませんでした。
去年の私は、黒子だった
去年も、私たちは2ヶ月ほどフランスに来ています。
そのときのことを、
私はほとんど覚えていません。
寝不足と取れない疲労を抱えたまま、
食事の準備をして、
片づけをして、
息子がご機嫌でいてくれるようにスケジュールを回して、
その合間でフランスの家族と会話に参加する。
そのあいだに何を食べたのか、
本当に思い出せない。
その場にいたけれど、
私は私としてそこにいませんでした。
でも、誤解のないように書いておくと、
誰かに強いられたわけじゃないんです。
年に一度しか会えない家族との、
限られた時間だから。
夫にも、息子にも、義家族にも、
いちばんご機嫌な状態で
その時間を楽しんでほしかった。
だから私が全部引き受けたほうが早い、
と自分で決めていました。
もうひとつ、たぶん大きかったのが、
私の育った家です。
うちは母が専業主婦で、
家事を全部やる家でした。
男の人がキッチンに立つところなんて、
見たことがなかった。
だから国際結婚なのに、
「夫の実家=粗相がないように」という
日本の嫁みたいなプレッシャーを、
私は自分で自分にかけていたんだと思います。
誰にも言われていないのに。
それが、見えていなかった
夫にとって、
去年のフランスは
とても良い記憶として残っていました。
家族とゆっくり過ごせて、
みんなが楽しそうで、
息子もずっとご機嫌でその笑顔がまた家族の笑顔をもたらした夏。
その「みんなが楽しそうだった」の裏側に
何があったのか。
彼には、ほとんど見えていなかった。
ハノイの空港の3時間で話したのは、
結局そこでした。
私がやっていたのは手伝いじゃなくて、
段取りと配慮と先回りの全部だった、
ということ。
見えないところで回していたから、
見えなかった。
「ママがいるから」
フランスに着いたその日、
義祖母が息子を見ながら言いました。
この子は本当に、いつもご機嫌で笑ってるね、と。
そうしたら夫が、さらっと。
「この子がいつもご機嫌なのは
ラッキーだからじゃなくて、
いつもご機嫌でいられるように
ママが完璧にお世話してくれてるからだよ」
私は、その場では
何も言えませんでした。
去年、私がいちばん言われたかった一言でした。
でも、自分では絶対に言えない一言でもある。
私がやりました、と言った瞬間に、
それはただの主張になってしまうから。
黒子は、自分で名乗るものじゃない。
誰かが言葉にしてくれないと、
存在しないままになる。
それをあえて義母の前で夫が口にしたのは、
私にとって、とても意味があることでした。
キッチンで、ハーブティーが出てきた
その夜、
洗い物をしようとキッチンに立ったら、
夫に止められました。
そして代わりに、
ハーブティーを出してくれました。
たぶん、
「やらなくていいよ」と言うより、
これのほうが早いと思ったんだと思う。
手が空いてしまった私に、
持つものをくれた。
お義母さんの「全部やるから」
同じ日、
お義母さんからも言われました。
滞在中くらいはゆっくりしてね。
息子(夫)とたまにはデートしておいでね、普段なかなか二人で遊べないでしょ、と。
車も滞在中ずっと使っていいから。
ボランティアもお休みをもらったから、
子どもを見てほしいときはいつでも言ってね。楽しみにしてたんだから!
と、笑いながら。
「あと、ご飯は今回、私が全部やるから。
食べたいものを取りたいとき以外は、
キッチンに来なくていいわよ」とウィンクしてくれました。
そのうえで、
息子が食べられるものだけ
軽くヒアリングしてくれて、
私たちが荷解きしている間に、
その足で買い物に行ってくれました。
義祖母のほうは義祖母のほうで、
もう完全に預かる気満々でいてくれました。
粘土のおもちゃ、絵本、
息子の年齢でも遊べる近所の公園を
事前に調べてくれていて、
その横にはたくさんのプレゼントが用意されていて。
会う前から、
もう準備が終わっていました。
頼れる仲間が、一気に2人
このダブルパンチで、
ようやく実感しました。
ああ、バカンスが始まったんだな、と。
正確に言うと、
頼れる仲間が一気に2人増えた、
という感覚でした。
海外で子育てをしていると、
いちばんきついのは
作業量そのものではなくて、
「最終的に判断するのが自分しかいない」
という状態が続くことだと思っています。
実家も、幼なじみも、近くにいない。
熱が出たら誰に連絡するか。
この食材は食べさせていいのか。
全部、自分の頭の中だけで決まっていく。
その頭の中を、
この日、初めて他の人と分けられました。
しかも二人とも、
「言ってくれたらやるよ」ではなくて、
「もう用意してあるよ」だった。
そしてわからないところは、聞いてくれる。
ここが、大きい。
キッシュローレンの匂いの横で
ひとつだけ、忘れないでおきたいのは。
夫にとっても、
これはバカンスのはずだということです。
この3週間で、
私だけじゃなくて、
彼のバランスと、
家族としてのバランスを
調整していけたらと思っています。
そして、これも書いておきたい。
色々衝突はあるけれど。
夫の優しさはもちろんですが、
こうやって家族として迎え入れてくれて、
本当の意味で家族同然に扱ってくれる、
義母をはじめとする彼の家族や、
友人・知人のみなさんの優しさに、
本当に頭が上がりません。
義母が焼くキッシュローレンの匂いがする横で、
そのことを改めて痛感していました。
この人と、この人たちと家族になってよかったなって。
今日の夫の好きなところ
【ママのおかげだよ、と言ってくれたこと】
去年のフランスで、私は黒子だった。
限られた家族の時間を
みんなに楽しんでほしくて、
自分で引き受けた黒子だった。
夫の記憶に残っているのは、
いい夏の思い出のほうだけ。
その裏側は、見えていなかった。
でもフランスに着いた日、
おばあちゃんが
「この子はいつもご機嫌だね」と言ったとき。
この人はさらっと言った。
ラッキーなんじゃなくて、
ママが完璧にお世話してるからだよ、と。
黒子は、自分では名乗れません。
誰かが言葉にしてくれないと、
いなかったことになる。
今日の夫の好きなところは、
【ママのおかげだよ、と言ってくれたこと】。
▼ 「同じ飛行機に、乗ってくれたこと」昨日の話はこちらに。
▼ 屋上で4つの手をつながれた夜から、このシリーズが始まりました。
毎日、夫に恋する生活を。― すれ違いの中で見つけた、たった一つの習慣。―
▼ このシリーズを最初から読む。
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