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今日は夫の【父に、打ち明けてくれたこと】に恋をした。― マリニエールと、森の中の長い話。― |2026.07.12

はじめに

このエッセイは、

国際結婚と、海外生活と、マルチリンガル育児の中で、

私が日々つまずきながら、

「わたしらしく生きる」ための実験の記録です。

「毎日、夫に恋する生活を。」

2026年の元旦に、そう決めて、

「今日の夫の好きなところ」を、

一つだけ、言葉にしています。

それだけで、同じ一日が、

少し違って見えることがあります。

完璧な妻でも、理想的な母でもありません。

それでも、結婚と子育てを通して、

女性として、妻として、母として、人として、

成長していきたいなと。

今日もこの記録が、

誰かの生活の中の、

小さな呼吸になりますように。


午前中は、部屋から出られなかった

7月12日。

昨日の夜、大喧嘩をして、

「明日、話そう」とだけ決めて眠った、

その翌日です。

私は、

気力も体力も残っていませんでした。

午前中はずっと寝室で、

本を読んでいました。

夫が、

朝ごはんのときに、

声をかけてくれたけれど、

一人にしてほしい、

とだけ伝えました。

お昼前に、

やっと部屋を出て、外に行ったら。

夫が、

涙ぐみながら、

お義父さんと庭で話していました。

そして、

そのまま散歩に出ていきました。

お義父さんが、言ってくれたこと

私は、

お義父さんのところに行って、

せっかく招待してくれたのに、

喧嘩をしてごめんなさい、

とだけ言いました。

そうしたら、お義父さんは、

うん、うん、とうなずいて、

こう言ってくれました。

夫婦も、子育ても、いろいろある。

しかも君たちは、

それを海外でやっていて、

こんなにかわいい子を、

立派に育てている。

ここにいるあいだくらいは、

いつでも僕たちを頼りなさい。

できることがあれば、言ってね。

話しにくいこともあるだろうけど、

僕たちは家族なんだから。

そして、息子を父親にしてくれて、

僕をおじいちゃんにしてくれて、いつも感謝しているよ。

辛いことがあっても偽らなくていいし、

隠さなくていいんだから。

それが、意外だった

正直に書くと、

夫が喧嘩の中身を

お義父さんに話したことが、

私にはとても意外でした。

以前も書いたのですが、

夫とお義父さんのあいだには、

越えられない薄い膜のようなものがあります。

夫は、

ネガティブなことや、

自分が困っていることを、

絶対にお義父さんには話さない人でした。

昨日、夫がいちばん爆発したポイントも、

実はそこでした。

「明日、私は帰る。

だから、お義父さんにも

今の私たちの状況を話す」

私がそう言ったことが、

きっかけのひとつだったんです。

まだ闘病中のお義父さんに、

心配をかけたくない。

その気持ちが、強かったんだと思います。

そしてそこには、

厳格な父と、

問題を起こさない息子、

という長年の図が、

やっぱりあるんだと思う。

でも今回、

夫は初めて、

自分のほうから、

夫婦の抱えている問題を、

お義父さんに話しました。

私たちが何も言わなければ、

お義父さんのほうから

昨日の喧嘩に触れることは、

絶対にありません。

人との距離のとり方を、

わきまえている人だから。

だから、

夫が自分で話したんだ、とわかりました。

隠さなくて、よかった

夫には悪いけれど、

今回、隠さずに喧嘩してよかった、

と思っています。

家族の前で、

声が筒抜けの家で、

いちばん見せたくない姿を見せて。

でも、そのあとで、

本当の意味で家族になっていく感覚が

ありました。

いい姿だけを見せている関係は、

きれいだけど、

どこかでずっと

お客さんのままです。

崩れたところを見せて、

それでも「家族だから」と言われて、

初めて、

膜の内側に入れる。

森の中で、話したこと

午後、

息子をお義父さんたちに預けて、

私たちは二人で、

森に散歩に行きました。

そこで、

昨日の続きを話しました。

去年、私が何を感じていたか。

今、何がフラストレーションになっているか。

昨日、なぜ切れたのか。

ハノイの空港で話したことを、

もっと具体的な中身に

落とし込んでいきました。

夫のほうも、

話してくれました。

私が鬱になって崩れてから、

心配をかけまいと、

あまり出さないようにしてくれていた、

彼自身が感じていること、考えていること。

そして今回は、

ただ謝るのとは、違いました。

何を変えるのか。

そのために、何に取り組むのか。

気持ちだけじゃなくて、

具体的なステップまで、

話し始めていました。

長い長い会話の末に、

ようやく、

感情のぶつかり合いじゃなくて、

実際に次に進むための道筋が、

見え始めました。

マリニエールと、アペロ

その日の午後、

お義父さんが、

私たちを隣町のブティックに連れて行ってくれました。

私と、夫と、息子に、

プレゼントを買うために。

ブルトンスタイルの、

ボーダー柄のトレーナー。

マリニエールと呼ばれる、

フランスらしいデザインの長袖です。

これでダナンの冬も大丈夫だね。

フランスらしさを、

ベトナムにも持って帰りな。

そう言葉を添えて。

夕方になると、

近所の人たちがアペロに来ました。

私も参加しました。

ミュスカという、

甘い白ワインのようなお酒を飲みながら、

テーブルに並んだ

フィンガーフードをつまむ。

途中で、

統合失調症の話になりました。

専門的な単語も出てきて、

また、会話についていけなくなった。

そうしたら夫が、

そっと、通訳に入ってくれました。

昨日、

「あなたは私の声を聞こうとしない」と

あんなに責めた、その相手が。

ああ、この人は、

喧嘩のたびに一度は反発するけれど、

言われたことを、

ちゃんと覚えて、実行してくれるんだな。

小さなことだけど、

その日いちばん、

昨日の話し合いが本物だったと

わかった瞬間でした。

悪者にされていなかった

夜、寝る前に、

もうひとつわかったことがあります。

夫が、お義父さんに話した内容です。

彼は、

私を悪者にして

話してはいませんでした。

自分ができていなかったこと。

それが、どれだけ家族に

負担をかけていたか。

その角度で、

お義父さんに打ち明けていました。

昨日、

耳を塞ぎたくなるような言葉も

たくさん飛んできたのに。

でも、

家族の前では、

私のせいにしなかった。

たぶんこれが、

この人の本当のところなんだと思います。

今日の夫の好きなところ

【父に、打ち明けてくれたこと】

昨日、大喧嘩をした翌日。

夫は初めて、

自分のほうからお義父さんに、

夫婦の抱えている問題を話しました。

夫とお義父さんのあいだには、

越えられない薄い膜があって、

彼は困っていることを

絶対に父には見せない人でした。

まだ闘病中の父に、

心配をかけたくなかったから。

でも今回は、話した。

しかも、

私を悪者にするのではなく、

自分ができていなかったこと、

という角度で。

昨日あんなに責め合ったのに、

家族の前で、

私のせいにしなかった。

隠さずに喧嘩して、

隠さずに打ち明けて、

私たちはやっと、

本当の家族に近づいた気がします。

今日の夫の好きなところは、

【父に、打ち明けてくれたこと】


▼ 「扉だけは、閉めなかったこと」昨日の話はこちらに。

今日は夫の【扉だけは、閉めなかったこと】に恋をした。

▼ お義父さんが、どんな人かはこちらに。

余命数ヶ月から1年。義父は今朝も走りに出かけた。

▼ このシリーズを最初から読む。

毎日、夫に恋する生活を。|Day 1〜

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