今日は夫の【扉だけは、閉めなかったこと】に恋をした。― 声が筒抜けの家で、大喧嘩をした夜。― |2026.07.11
はじめに
このエッセイは、
国際結婚と、海外生活と、マルチリンガル育児の中で、
私が日々つまずきながら、
「わたしらしく生きる」ための実験の記録です。
「毎日、夫に恋する生活を。」
2026年の元旦に、そう決めて、
「今日の夫の好きなところ」を、
一つだけ、言葉にしています。
それだけで、同じ一日が、
少し違って見えることがあります。
完璧な妻でも、理想的な母でもありません。
それでも、結婚と子育てを通して、
女性として、妻として、母として、人として、
成長していきたいなと。
今日もこの記録が、
誰かの生活の中の、
小さな呼吸になりますように。
正直に書くと、今日は喧嘩の日です
7月11日。
先に書いておきます。
今日は、
いい話では終わりません。
別荘に来て、数日。
この日から、
お義父さんのパートナーさんも合流しました。
子育てをしてきた女性が
家にひとり増えるだけで、
空気がずいぶん変わります。
あちこち歩き回って
なんでも触る1歳児を見る手が増えて、
私はやっと少し、
肩の力を抜けた感じがしました。
でも、
その夜に大きな喧嘩をしました。
家族全員に
声が筒抜けの家で。
その前に、少しだけ背景を
なぜそうなったのかを、
順番に書かせてください。
今回、夫が
「全部マネージするから」
と言ってくれたので、
私は自分のSIMカードも、
現金も持たずに来ました。
車の免許もないので、
一人でどこかへ行くこともない。
夫が事前に組んだスケジュールに、
ただ乗っているだけ。
いい面は、何も考えなくていいこと。
でも、この状態だと、
自分で食べたいものを食べに行くことも、
会いたい人に会いに行くことも
できません。
私はフランスに住んでいたことがあるので、
本当は昔の友人もたくさんいる。
でも、
好きなときに好きなことをする、
という選択肢が、
生活からきれいに消えていました。
誤解しないでほしいのは、
家族が
そのプレッシャーをかけてくるわけじゃない。
これは私自身が、
勝手に感じてしまうものです。
そして、
それが夫には伝わらない。
「遠慮」という感覚が、
フランス人の彼には
うまく届かないんです。
彼からすると、こんなに準備しているのに、
いったい何が不満なんだ、と。
会話の中で、消えていく自分
その夜、
夕食の会話が、
フランス映画や経済の話になりました。
ワインも入っていて、
疲れも出ていて、
だんだん会話に
ついていけなくなっていきました。
7割くらいしか理解できないまま、
輪を壊したくなくて、
必死で食らいついていく。
途中で夫に通訳を頼みました。
でも、夫も会話の流れを配慮して、
私が英語で伝えたことを、
全部は訳してくれない。
そのうち、
夫と、お義父さんと、パートナーさんと、
私の会話が、
だんだんチグハグになっていきました。
言葉がうまく通じないとき、
その人が
少しバカな人みたいに映る瞬間があります。
言っていることが、ナンセンスに聞こえる。
彼らがそんなふうに
私を見ているとは思っていません。
でも、
カタコトのフランス語が続くと、
私自身の自信が
どんどん削れていく。
口を開く回数が減って、
その場にいるのに、
いない人みたいになっていく。
たぶんこの時点で、
イライラが積もり始めていました。
アイスクリーム
息子の寝かしつけの時間が来て、
私はそっと席を外しました。
戻ってきたら、
食事はもう終わっていて、
テーブルの上に、
アイスクリームが置いてありました。
お義父さんが、甘いもの好きの私のために
わざわざ用意して、出してくれたものでした。
正直、
食べたくありませんでした。
愛想笑いをして、
ありがとうと言って食べることも、
できたはずです。
きっと、いつもならそうしていた。
でもこの日は、
一日のフラストレーションが
一気に溢れて、
いらない、と言いました。
そうしたら夫が、
横から、こう言いました。
冷凍庫から一度出したものは、
お義父さんは戻さないんだよ。
せっかく用意してくれたんだから、食べなよ。
好きでしょ。
お義父さんと、
パートナーさんの前で。
その瞬間、
これまでの喧嘩の記憶が、
頭の中をぐるぐる回り始めました。
またこの人は、
私が何を感じているかを飛ばして、
自分の正解を押しつけてくる。
雰囲気が悪くなるのは、
わかっていました。
みんなが私を元気づけようとして
アイスを出してくれたことも、
わかっていました。
それでも、
私がどうしたいかくらいは、
私に決めさせてほしかった。
もう、それしか残っていないから。
夫の目を見て、
もう一度、いらない、ときっぱり言いました。
彼は甘いものが得意じゃないのに、
黙って、
少し苦笑いしながら、
そのアイスを自分で食べました。
声が筒抜けの家で
雰囲気が悪いまま、
私たちは寝室に上がりました。
そこから、大きな喧嘩になりました。
彼からは、
自分勝手だ、
自分のことしか考えていない、
とののしられました。
私は、
あなたは、私が何をしたくて、
何が必要かに、
一度も耳を傾けてくれない、
と反論。
自分がいいと思うものを押しつけてきて、
そうじゃないと説明すると、反発してくる。
私の好みや、考えや、希望くらいは、
私から奪わないでほしい。
もう、それ以外に
何も残っていないんだから。
全部マネージしてくれているのは、
ありがたい。
家族の優しさも、気遣いも、
わかっている。
でもそれは、
お互いの遠慮と配慮で成り立っていて、
こちら側にも、
見えない努力がある。
そのうえで、
食べたくもないものを
義理の親の前で
「いらない」と言うのが
どれだけしんどいか、
あなたには何も見えていないし、
私の声を聞こうともしていない。
そう、爆発しました。
この別荘は、
庭は広いけれど、
家の中は声が筒抜けで。
全部、家族に聞こえたまま、
私たちは深夜2時ごろまで言い合いを続けました。
傷跡は、残る
夫は、素晴らしい人です。
でも、感情的になると、
なんのフィルターもかけずに、
そのまま感情を言葉にしてしまうところがある。
耳を塞ぎたくなるような言葉も、
これまでたくさん受け取ってきました。
喧嘩が終わると、
本心じゃないのに
ひどいことを言ってごめん、
と謝ってくれる。
でも、
その一つひとつは、
私の中に、
傷跡として残っていく。
フランスにいるあいだは、
平和に過ごしたかった。
彼と息子の、
いちばんいい姿を、
家族に見てほしかった。
でも、今年は
そうできませんでした。
夫もショックだったと思います。
そのショックが、
全部、言葉になって飛んできました。
逃げようとした
私は、
翌日のバスと電車を調べました。
もうここにはいたくない。
一人でパリに戻って、
その後、飛行機を取る。
そのスケジュールのスクリーンショットを、
夫に送りました。
これでダメなら、
ダメだったんだ、と
腹をくくって。
きれいな話にできなくて、
すみません。
でも、これが本当にあった夜です。
「明日、もう一度話そう」
結局、
私たちはこの日、寝室を分けました。
しばらくして、
感情的になっていた夫のほうが、
一度、夜の庭に出て、
頭を冷やしてきました。
そして戻ってきて、
こう言いました。
明日、もう一度、ちゃんと話そう。
それだけでした。
でも、
その一言だけは、
受け取ることができました。
逃げ場のない家です。
でも、私は何も言わずに去ることはなく、
パリに帰るスクショまで送っていました。
きっと、彼が止めてくれることを期待していたんだと思います。
このまま、
どちらかが黙って終わることも、
できた夜でした。
でも彼は、
庭で頭を冷やして、
わざわざ戻ってきて、
「終わり」ではなく
「明日」と言った。
7月に入ってから、
私たちが少しずつ学んできたのは、
たぶんこれでした。
その場で全部を解決しようとしない。
一度、離れる。
そして、扉だけは閉めない。
問題は、何も解決していません。
アイスクリームのことも、
私の自由のことも、
彼の言葉のことも、
全部そのまま、
翌日に持ち越しました。
でも、
「明日話そう」があるかないかで、
夜の重さは、
まったく違うんだな、と思っています。
今日の夫の好きなところ
【扉だけは、閉めなかったこと】
今日は、
いい話では終わりませんでした。
義理の親の前で、
食べたくないアイスを勧められて、
いらないと言った。
それが引き金で、
声が筒抜けの家で、
大喧嘩になった。
ひどい言葉も、たくさん飛んできました。
私は、翌日パリに帰る電車の時間を調べて、
スクショを送りました。
何も、解決していません。
でも、感情的になった夫のほうが、
一度庭で頭を冷やして、
戻ってきて、こう言った。
明日、もう一度、ちゃんと話そう。
終わり、ではなく、明日。
逃げ場のない夜に、
扉だけは閉めなかった。
今日の夫の好きなところは、
【扉だけは、閉めなかったこと】。
▼ 「もう一度、ここに連れてきてくれたこと」昨日の話はこちらに。
今日は夫の【もう一度、ここに連れてきてくれたこと】に恋をした。
▼ 屋上で4つの手をつながれた夜から、このシリーズが始まりました。
毎日、夫に恋する生活を。― すれ違いの中で見つけた、たった一つの習慣。―
▼ このシリーズを最初から読む。
===========
お読みいただきありがとうございます。
スキいただけると嬉しいです!
次の執筆のはげみにさせていただきます。
チップは活動の励みにさせていただきます!
===========
いいなと思ったら応援しよう!
もし気が向いたら、チップでそっと応援してもらえたらうれしいです。
いただいたチップは、書く時間と心の余白に使わせていただきます。