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今日は夫の【黙って、一人で行ったこと】に恋をした。― 出発前日、息子が吐いた日。― |2026.07.04

はじめに

このエッセイは、

国際結婚と、海外生活と、マルチリンガル育児の中で、

私が日々つまずきながら、

「わたしらしく生きる」ための実験の記録です。

「毎日、夫に恋する生活を。」

2026年の元旦に、そう決めて、

「今日の夫の好きなところ」を、

一つだけ、言葉にしています。

それだけで、同じ一日が、

少し違って見えることがあります。

完璧な妻でも、理想的な母でもありません。

それでも、結婚と子育てを通して、

女性として、妻として、母として、人として、

成長していきたいなと。

今日もこの記録が、

誰かの生活の中の、

小さな呼吸になりますように。


出発前日に、手術が決まった

7月4日。

明日の夜のフライトで、

家族3人でフランスへ発つ。

その前日に、

夫の手術が急に決まりました。

嚢胞ができていて、

取らないといけないという話になって、

麻酔をかけて、縫うところまでやる。

思っていたより、ちゃんとした手術だった。

海外で暮らしていると、

こういうことが本当に急に決まります。

日本のように

「じゃあ来月の予約で」とはならない。

行ったその日に、今日やりましょう、になる。

しかも明日から3週間、

国を離れる。

やるなら今日しかなかった。

「じゃあ、行ってくる」

前の日の夜の空気は、

まだ完全には抜けていませんでした。

だから夫は、

じゃあ行ってくる、という感じで、

一人で出ていきました。

私も、送らなかった。

いま思えば、

あの状況で夫が

「一緒に来てほしい」と言うのは

すごく簡単だったと思うんです。

麻酔をかけて、縫う手術で、

明日は長距離フライトで、

前の日に大喧嘩をしている。

これで来てほしいと言われたら、

私は行くしかなかった。

そして、行った時点で、

前の日の話は

全部なかったことになっていたと思う。

でも夫は、それをしなかった。

黙って一人で行って、

黙って一人で帰ってきた。


その間に、息子が吐いた

夫が出ていったあと、

家で息子が急に吐きました。

熱があるわけでも、

変なものを食べたわけでもない。

ただ、吐いた。

出発前でバタバタしていたから、

疲れが出たのかもしれない。

環境の変化に敏感な時期なのかもしれない。

理由はわかりません。

ただ、背中をさすりながら、

去年の年末のことを思い出していました。

あの頃も、私たちは毎晩ぶつかっていました。

ある夜、屋上に3人で座っていたとき、

突然息子が、

私の手と夫の手を片方ずつ取って、

4つの手をくっつけようとしたんです。

まだ言葉もほとんど話せない頃でした。

それでもこの子は、

自分の家族に何が起きているのかを

ちゃんとわかっていた。

「毎日、夫に恋する生活を。」を始めたのは、

その夜がきっかけでした。

あれから半年以上経って、

出発前日の床で、

また同じことを思っている。

小さい子は、

言葉の意味はわからなくても、

声のトーンと空気は全部拾っている。

私たちは、

「子どもの前ではやめよう」と

何度も話してきました。

それでも、

声が大きくなってしまう夜がある。

そのたびに、

いちばん小さい人が

いちばん近くにいる。

海外で子育てをしていると、

逃げ場が本当に少ないなと思います。

実家も、祖父母も、

一時的に預かってくれる場所も近くにない。

夫婦の空気は、

そのまま家じゅうに満ちて、

息子はその中で

一日を過ごすしかない。

だから、

自分たちのために整理するというより、

この子のために整理しないといけない。

そう思ったのが、この日でした。

腹をくくった夜

その日、フランスの家族へのお土産の足りないものや、

あちらで必要な物の買い足しだけすませて、

夜は、早く寝ることにしました。

そして決めたことが、ひとつ。

フランスに行く前に、

二人でちゃんと整理をしないといけない。

3週間、義実家で過ごすということは、

逃げ場のない距離で

3週間過ごすということです。

言葉も、私だけが不自由な場所。

そこに、

このまま持ち込むわけにはいかない。

そう腹をくくった夜でした。

そして同時に思ったのは、

夫が今日、

手術を切り札にしなかったこと。

弱っている自分を見せれば、

相手は折れる。

夫婦のあいだで、

これはいちばん簡単な手だと思っています。

体調も、疲れも、

相手を黙らせるために使える。

一度使うと、たぶんクセになる。

夫はそれをしなかった。

喧嘩は喧嘩、手術は手術として、

分けて持って帰ってきた。

その日の夜、

私が腹をくくれたのは、

たぶんそのおかげでした。

今日の夫の好きなところ

【黙って、一人で行ったこと】

出発の前日に、

急に手術が決まった。

麻酔をかけて、縫う手術だった。

前の日の夜の空気は、

まだ残ったままだった。

一緒に来てほしいと言われたら、

私は行った。

そして行った時点で、

前の日の話は

なかったことになっていたと思う。

でもこの人は、

黙って一人で行って、

黙って一人で帰ってきた。

弱っている自分を、

交渉に使わなかった。

だから私も、

逃げずに向き合おうと決められた。

今日の夫の好きなところは、

【黙って、一人で行ったこと】


▼ 「長い返事をくれたこと」昨日の話はこちらに。

今日は夫の【長い返事をくれたこと】に恋をした。

▼ 屋上で4つの手をつながれた夜から、このシリーズが始まりました。

毎日、夫に恋する生活を。― すれ違いの中で見つけた、たった一つの習慣。―

▼ このシリーズを最初から読む。

毎日、夫に恋する生活を。|Day 1〜

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