今日は夫の【今度は、引いてくれたこと】に恋をした。― フリマのアコーディオンと、別荘最後の夜。― |2026.07.14
はじめに
このエッセイは、
国際結婚と、海外生活と、マルチリンガル育児の中で、
私が日々つまずきながら、
「わたしらしく生きる」ための実験の記録です。
「毎日、夫に恋する生活を。」
2026年の元旦に、そう決めて、
「今日の夫の好きなところ」を、
一つだけ、言葉にしています。
それだけで、同じ一日が、
少し違って見えることがあります。
完璧な妻でも、理想的な母でもありません。
それでも、結婚と子育てを通して、
女性として、妻として、母として、人として、
成長していきたいなと。
今日もこの記録が、
誰かの生活の中の、
小さな呼吸になりますように。
朝、フリマへ
7月14日。
別荘での、最後の一日です。
朝から、
お義父さんと、夫と、息子と、
みんなでフリマに行きました。
フランスのフリマは、
イメージ通り、
おしゃれなものが多いです。
アンティークや、古本や、
古い食器。
特に、昔のものは、
木やしっかりした素材でできていて、
今みたいに安く気軽に買える
プラスチックやプチプラとは違う。
長い年月、
誰かから誰かへ受け継がれてきた、
という歴史と、愛情を感じます。
素材がとにかく良くて、
これはまだ何十年ももつぞ、
という顔をしている。
夫は、こういう場所が好きな人
夫は、
大きな観光地より、
こういう日常が好きな人です。
一緒に旅行に行っても、
有名な名所は、
私が行きたいと言えば行ってくれるけれど、
そうでなければ、
その土地の日常に転がっている
ローカルな暮らしを体験するほうが好き。
だからこの日も、
自分の好きな場所ということで、
私をここに連れてきてくれました。
お義父さんは、
このフリマの常連みたいでした。
小さなアコーディオン
現地に着いて、
それぞれ好きなように見て回りました。
夫が息子の乳母車を押して、
お義父さんと私は、
別々の方向へ。
古い食器や、色あせた絵本や、
誰かの家で長く使われてきた道具を、
ひとつずつ眺めていく。
そうやって歩いていたら、
小さなアンティークのアコーディオンを
見つけました。
とても可愛かった。
そのあと夫と合流して、
可愛いアコーディオンがあったよ、
と伝えたら、
どの店?と聞かれて、
見せに行きました。
そうしたら夫が、
何を思ったか、
値段を交渉し始めて、
買おうとし出したんです。
フランスに来た思い出に、
プレゼントしたい、と。
私は、
その気持ちだけで嬉しい、と伝えました。
正直、
どうやって持って帰るんだとか、
持って帰ったあと使うのか、とか、
現実的なことを
いろいろ考え始めていました。
そうしたら夫が、
何パーセントくらい欲しいの?
と聞いてきました。
本当は、欲しくない。
可愛かったから、
ただシェアしたかっただけ。
そう正直に伝えたら、
夫は、すっと引いてくれました。
三日前と、同じ状況だった
このやり取りをしながら、
私はずっと、
三日前のことを思い出していました。
アイスクリームです。
お義父さんが出してくれたアイスを、
私が「いらない」と言ったのに、
夫が「せっかくだから食べなよ、好きでしょ」
と押してきて、
そこから大喧嘩になった夜。
この日のアコーディオンは、
構図がまったく同じでした。
私が「いらない」と言っているのに、
夫が「でも、せっかくだから」と
良かれと思って進めようとする。
三日前なら、
たぶんまた
小さな火花が散っていた場面です。
でも今回、
夫は引いてくれました。
いらない、と言ったら、
それ以上、押さなかった。
森で長い話をしたときに、
彼が「具体的に何を変えるか」まで
話してくれたことを、
書きました。
その一つが、
たぶんこれでした。
相手が「いらない」と言ったら、
自分の正解を押しつけない。
言葉だけじゃなくて、
三日後に、
行動で見せてくれた。
派手な変化じゃありません。
でも私にとっては、
森の中の約束が
本物だったと確かめられた瞬間でした。
昔のアルバム
午後は、
お義父さんが、
昔のアルバムを見せてくれました。
夫や、その家族の過去。
私が知らない、
夫の子ども時代。
国際結婚をしていると、
相手の過去に触れる機会が
本当に少ないので、
こういう時間は、
夫を理解するための、貴重な資料です。
別荘最後の夜、ワールドカップ
そして夜。
サッカーのワールドカップ、
準決勝がありました。
フランス対スペイン。
息子をおじいちゃんたちに預けて、
夫と二人で、
街の中心地まで見に行きました。
バーを2軒はしごして。
フランス人の妻になって、
初めてのワールドカップでした。
今までとは、
全然違う感じ。
結果は、負けてしまったけれど、
こうしてフランスの地で、
夫の国を応援できたことが、
うれしかった。
そして、
二人でこうやってデートみたいに
外に出ると、
出会った頃、
この人に一瞬で恋をした、
あの記憶が、
一気に呼び起こされます。
一生は、続かない時間
明日は、
マミーのいるパリに戻ります。
別荘での日々は、今日で終わり。
私は、父を亡くしています。
だから、
夏の1週間しか一緒に過ごせない
お義父さんとの時間が、
どれだけ貴重か、わかっているつもりです。
一生続くものじゃない。
いつ急に終わるかも、わからない。
去年、
余命の話が出た人です。
その大切な時間を、
一度は喧嘩で
塗りつぶしてしまいました。
それでも、
こうして別荘最後の夜に、
同じ人とワールドカップを見に来ている。
塗りつぶした日があっても、
塗り直せる。
7月に入って、
いちばん学んだのは、
たぶんそれでした。
今日の夫の好きなところ
【今度は、引いてくれたこと】
フリマで、
可愛いアコーディオンを見つけた。
夫に伝えたら、
思い出にプレゼントしたい、と
交渉を始めた。
でも私は、
欲しかったわけじゃなくて、
ただシェアしたかっただけ。
そう伝えたら、
夫は、すっと引いてくれました。
三日前は、
同じ状況で大喧嘩になりました。
いらないと言ったアイスを、
好きでしょ、と押されて。
でも今回は、押さなかった。
森で「変える」と言ったことを、
三日後に、
行動で見せてくれた。
そして別荘最後の夜、
二人でワールドカップを見ながら、
出会った頃に一瞬で恋した、
あの感覚を思い出しました。
今日の夫の好きなところは、
【今度は、引いてくれたこと】。
▼ 「何も起きない一日を、くれたこと」昨日の話はこちらに。
▼ その「アイスクリーム事件」の夜は、こちらに。
▼ このシリーズを最初から読む。
===========
お読みいただきありがとうございます。
スキいただけると嬉しいです!
次の執筆のはげみにさせていただきます。
チップは活動の励みにさせていただきます!
===========
いいなと思ったら応援しよう!
もし気が向いたら、チップでそっと応援してもらえたらうれしいです。
いただいたチップは、書く時間と心の余白に使わせていただきます。
