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羊を数えるかわりに子守話

うちの子は宵っぱりだった。保育園から帰り、晩ご飯を食べ終え、お風呂に入る頃には9時を過ぎていた。

そこからが楽しい時間。「夜はこれから!」とばかりに元気になり、敷いた布団にダイブしたり、ビデオを見せろとせがんだり、水でお絵かきするシートを引っ張ってきて「何か書いて」とペンを差し出したり。

10時を過ぎると、電気を消し、抱きかかえたまま無理やり横になるのだが、目はらんらん。子守唄を歌っても寝そうにない。

そこで、子守話を聞かせることにした。

📢noteに上げた子守話は末尾の「子守話noteたち」に順次加えていきます。


子守話職人だった頃

ちょうど最相葉月さんの『星新一 一○○一話を作った人』に刺激を受けたところで、お話を作りたい気分でもあった。

「なんかお話してあげよっか」と聞くと、「ん」と短くうなずいた。

「じゃあねえ、えーと」と考えて、「なんでも屋さんの話にしよう」と決めて話しはじめたのが子守話の第1話。

子どもの頃、わたしは、お店には必ず「~屋さん」をつけるものだと思っていた。レストランは「食べ屋さん」と呼んでいた。

飲み屋があるのだから、食べ屋があってもおかしくない。なんでも売っているお店は、「なんでも屋さん」。

そんな風に、思いつきで紡いだり、リクエストから発想したり、その日の出来事を入れ込んだり、シリーズ展開をしたりして、書き留めた子守話は116話になった。 

「よくこんなに作ったな」と思う。数年の間、子守話職人になっていた。お題から話を転がす即興力はあの時期に鍛えられたといえる。

作家の眉村卓さん(小学6年のとき図書室で手に取り、一気に読んだ『まぼろしのペンフレンド』でお名前を知った)が闘病中の妻のために毎日語り聞かせた物話は1778話に上ったらしい。わたしの子守話は足元にも及ばないが、待っている目の前の人のために物語が引き出されることを実感した。

あの頃が蘇るタイムカプセル

子守話は、日記よりも分かちやすい物語という形でその時期を閉じ込めている。読み返すと、当時の出来事や子どもが好きだったものが解凍され、蘇る。

noteに公開し、膝枕erの鈴蘭さんが毎日読んでくれ、鈴蘭さんや漂流工房さんに派生作品で遊んでもらっている「ドラキュラと赤いチョコレート」も子守話がオリジナル。

スイート編は109話「なかよし編」、ビター編は110話「ひとりぼっち編」。保育園の劇でせなけいこさんのドラキュラのお話を上演して、ドラキュラさんに夢中になっていた頃に生まれた。

絵本になったりアプリにならなかったり

子守話が出揃った頃、どれかを絵本にしたいというお話がエンブックスの西川俊充(編集者表記:西川季岐)さんからあった。すべてに目を通した上で第20話『わにのだんす』が選ばれた。

島袋千栄さんに絵を描いてもらい、絵が語るところの文は引き算した。とくにラストが変わった。

そのおかねで だんすわには ぴあのをかって
わにのこどもたちのむらにおくりました。
またいっしょにおどりましょうと てがみをけんばんのうえにのせておきました。

オリジナルの子守話「わにのだんす」のラスト

「おじゃる丸」の脚本に子守話を取り込んだものもいくつか書いた。

子守話をアプリにしませんかというお話をいただいたこともある。実現には至らなかったが、100余りある物語を気分にあわせて選べる仕様を考えてくれていた。

幼稚園児がお絵描きしてくれた

アプリにはならなかったけれど、読みものとして楽しんでくれた人はいた。

友人が、うちの子よりひとつ上のお子さんに子守話を読み聞かせしていたら、その子が物語にあわせて絵を描くようになった。

色のついていない塗り絵があったら色を塗るように、絵のついていない文章に絵をつける。子どもの素直で自発的な反応は面白い。

「幼稚園に持っていったら、先生がどんなお話なんですかって興味を持たれたから、持って行ってもいい?」

自分の子を寝かしつけるために作ったお話が他の子にも楽しんでもらえるなんてと喜んだ。

今も絵を描いてくれる子がいるかもしれない。少しずつnoteに上げ、遊んでもらえたらと思う。

子守話noteたち

noteに上げた子守話をこちらに。

2026.2.3
羊つながりで48話「ひつじが100ぴき」

2026.2.4
河合隼雄先生の最終講演をNHKプラスで見て、ギリシア語で「ちょうちょ」は「心」を意味すると知り、104話「ちょうちょの木」

2026.2.6
バレンタインデーが近づくなか、8月ジャーナリズムの保温の気持ちも込めて、74話「チョコレートのちきゅう」

2026.2.14
言葉遊びの子守話ふたつ。58話「あかいろのありんこたち」59話「アラブのあぶらうり」


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脚本家・今井雅子📚言葉遊びが好きな物書き 目に留めていただき、ありがとうございます。わたしが物書きでいられるのは、面白がってくださる方々のおかげです。