見出し画像

「短期積み上げ」ではなく、「目指す姿からのバックキャスティング」-エンタープライズ領域におけるCSが持つべき視点と考え方

はじめに

先日、日本カスタマーサクセス協会 代表理事である山田さんと、各社のCustomer Successに従事されている方向けのオフラインイベントを実施しました。

そこで、エンタープライズ領域におけるカスタマーサクセス(以下CS)について議論をする中で強く感じたのは、顧客に向き合う時には「短期的に売上を積み上げる」発想から抜け出し、「顧客の目指す姿を共に描き、バックキャスティングして取り組みを拡大する」ことが何よりも重要だということです。

RightTouchでは、自社のCS組織を「Customer Growth Partner」と呼び、顧客の事業成長に伴走しています。
詳しくは以下のnoteをご覧ください。

本記事では、各社がエンタープライズに向けた戦略を強化する中、CSがプロフィット貢献を求められる昨今に陥りがちな課題や、それを解くためのヒントについて、整理してみたいと思います。


SMB/MIDとエンタープライズの違い

まずは、エンタープライズ領域におけるCSの特徴を理解するために、SMB/MIDとの比較から整理します。

SMB/MIDの特徴

  • 意思決定が少人数

    • トップと現場が直結しており、判断が速い。

  • プロダクト導入のスピードが早い

    • 数週間〜数ヶ月で利用開始できるケースが多い。

  • ROI(投資対効果)は短期的に測られる

    • 成果が見えなければ短期間で解約される可能性もある。

エンタープライズの特徴

  • 意思決定が多層的

    • 経営層、現場、IT、法務など様々な部門が関与する。会社や導入するプロダクトによって意思決定に強く寄与する部門が異なる。

  • 導入プロセスは長期化しやすい

    • PoC(概念実証)を経てから全社展開することも多い。

  • 契約規模は大きいが、その分「失敗した時のダメージ」も大きい

    • 信頼回復には時間がかかる。

  • 成果は中長期で評価される

    • 導入効果が出るまで1年以上かかることも珍しくない。

参考になる記事として、株式会社IVRy 事業責任者の山田さんの記事を上げておきます。
SMB / MIDとEPの違いについてオペレーション、職能や役割、組織構造などを含めて違いを整理していただいているので、とても分かりやすいです。

テックタッチの三嶋さんの、エンタープライズCS勉強会で見えたことのnoteも特徴分類などは類似をしていて、とても分かりやすいのでおすすめです。

(このままでは皆さんのnote紹介の記事になってしまうので、次章から書きます笑)

短期目線のExpansionの限界

SaaS企業が自社の成長を考えるとき、「今この顧客に提案すれば決まるか?」という積み上げ思考に陥りがちです。確かに短期的には売上が増えますが、エンタープライズ領域においてこの成長では限界があります。

  • 短期積み上げの発想では、「導入数」や「機能追加」など、目の前の取引単位拡大(=upsell)に最適化してしまいがち。

  • しかし顧客側の視点からすると、単発の導入や追加機能は「全社のあるべき姿」には直結しない。

    • むしろ「部分最適」にとどまり、全体の変革の足枷になる可能性もある。

  • さらに、短期積み上げ型の営業やCSは顧客から「売り込み」だと認識され、信頼を損ねるリスクもある。

エンタープライズにおいては「単体プロダクトを導入して終わり」ではなく、「組織の変革にどうつながるのか」という視点が問われます。
その意味で、短期積み上げの視点では、顧客の本質的課題を解決しきれないのです。

目指す姿からのバックキャスティング

では、エンタープライズ領域でCSが持つべき視点は何でしょうか。

それは「顧客のあるべき姿を共に描き、そこからバックキャスティングして道筋を設計する」ことです。

中長期の目線合わせ

エンタープライズ企業が求めているのは、1年先の改善だけでなく、2〜3年後にどんな状態になっているか、という理想の姿です。

例えば「顧客接点の高度化・AI活用」「事業部を横断したデータ活用」「プロアクティブなサポートの実現」など、中長期でのあるべき姿が定義されます。

CSはそれを顧客と一緒に言語化し、進む方向を一致させる必要があります。
様々な企業様とやり取りしている中で、これだけ社会の変化が激しい時代では中長期的な業界・自社にとって理想の姿を描くのは非常に困難です。

1つのツールや仕組み・プロセスを変えるだけでもかなり多くの人が関係するからこそ、潮流を見極めて進めているなと感じます。

他社や既存プロダクトも視野に入れる

顧客のあるべき姿を実現するためには、自社のプロダクトだけでは足りないことも多いです。他社ツールや既存システムとの組み合わせをどう設計するか、全体最適を考えることが不可欠です。

エンタープライズにおけるCSは「自社製品を提案・提供する」ことを超えて、顧客の事業成長に必要な全体像を描ける存在になる必要があります。

私は、昨今のキャリアでいうと「ビジネスアーキテクト」がこの考えを担うポジションとして近いものと考えています。
”エンドユーザーにも詳しいし、ビジネスプロセスにも詳しいし、データやプロダクトにも詳しい人”と思っていただけると良いかと思います。

Expansion(=純増MRR)は結果として生まれる

あるべき姿を共に追求した結果として、顧客の事業成長の実現に向け動き出し、そしてそれが実現し、はじめて売上拡大になります。

これは短期積み上げ型の「売上を先に作る」とは逆の発想です。
Expansion創出はゴールではなく、顧客との共創の副産物なのです。

私はRightTouchに来てはじめてCSに従事しましたが、「顧客に提案・セールスするのは気が引ける...」というのは間違いだと感じています。
”自社にとっての売上”から考えるからそうなるのであって、「顧客と我々のやるべきこと、目指すことはここ。だからxxのプロダクトを利用してもらうべきだ!」というのがCS的なExpansionの発想だと考えています。

もちろん、自分が描いた絵が100%正しいことはないので、顧客と共にディスカッションして優先順位や、やるやらを決めていきます。
もし、現在CSに所属していてExpansionプランを考えているけどうまくいかない、という人がいれば発想を転換してぜひ考えてみてください。

エンタープライズ参入における障壁と覚悟

とはいえ、この「バックキャスティング思考」で顧客と向き合う中でも、当然いくつかの障壁があります。

  1. 中長期のロードマップを共に描く必要がある

    • 1年単位の改善ではなく、2〜3年先を見据えてステップをデザインする。そのための信頼形成も重要。

  2. 社内外の複雑なコミュニケーション

    • SalesやAccount Manager、Productチームなどの自社関係者との連携。顧客側でも多層的な部門との調整。

  3. マルチ/コンパウンドプロダクト展開のストーリーを描く難易度

    • 「このプロダクトで成果を出すことで、次のプロダクト導入につなげる」というストーリーを描きながら進める。

    • プロダクトそれぞれの理解と、連結した際のシナジーの理解の双方が必要

  4. 成果実感の時間軸が長い

    • Expansionや効果実感が出るまで1年以上かかることも多い。短期で焦らず、長期的に伴走する覚悟が必要。

こうした障壁を乗り越えるためには、単なる売上目標ではなく、「顧客と中長期の未来を共に創る覚悟」が不可欠です。

そして、これらの壁を越える上ではほぼ1人でやり切ることは不可能に近いことも頭に入れておきたいです。だからこそ社内の様々なメンバー、社外協力者の方々と共に進めていくことになります。

私自身も日々、色んな人に助けてもらいながら進めているので、そうした共に覚悟を持って進めて行ける仲間がいることもとても大事なことだと感じています。

事例で考える:短期積み上げとバックキャスティングの違い

あるエンタープライズ企業向けの考え方の例を挙げてみます。

  • 短期積み上げの発想:まずは小さな部署で導入、成功事例を作ってから他部署に提案をする。

  • バックキャスティングの発想:数年後に「全社でデータを統合し、顧客接点を高度化する」というあるべき姿を描き、そのために最初にどの部署から始めるかを戦略的に決める。

両者は一見似ていますが、根本が異なります。
前者は「売れるところに売る」思考。後者は「ゴールから逆算して最適な一歩を選ぶ」思考です。

結果として後者の方が顧客の長期的成果に寄与し、信頼関係が深まり、Expansionにもつながりやすいのです。

私は弊社代表の長崎の、「First Domino」の考え方がとても好きでして、自社の事業展開だけでなく顧客との取り組みにおいてもこの「まず、どこから着手すべき?」というのを日々考えるようにしています。

複数プロダクトを有する企業に属している方であれば、ぜひ1度考えてみていただけるとイメージが湧くのではないか、と思います。

どうすればできるようになるのか?という話

ここまでお読みいただいた方の中には、

  • 違いと考え方はイメージついたけど、習得すべきことが多すぎない?

  • アカウントマネージャーとどう違うの?

  • 時間も機会も必要になるし、できるようになるイメージが湧かない

という方もいるのではないか、と思います。

結論、「TRYと振り返りを重ねて考え抜く中で日々成長するしかない」です。
当たり前ですが、最初からできる人はいません。

また、私自身は顧客に向き合い、やり切るmindがあれば、時間の差はあれど誰にでもエンタープライズCSはできるようになるもの、と考えています。

RightTouchのmindの1つ、やりきりオーナーシップ。ビーバーが可愛いです。

私自身も、3ヶ月ほど何をやってもうまくいかない、お客様に納得していただける提案や構想が描けない時期がありました。正直とても苦しかったです笑
ただ、代表の長崎や野村、他メンバーが日々フィードバックをくれたり、打席にも立たせてくれて、議論できるお客様にも恵まれたことで、力をつけることができました。

バックキャスティング思考で顧客と共創していくためには、まずは以下のSTEPで考えてみると良いかもしれません。

  • プロダクトの理解を深める:まずは自社が提供しているプロダクトの価値・ユースケースを深く理解する

  • プロダクト同士の連携/シナジー:自社の他プロダクトと組み合わせたら、他社のソリューションと組み合わせたら何ができるか?を理解する

  • 業界のトレンド、トップランナーの取り組み:顧客の対象業界において、トップランナーの企業群は何をしているか?どのような考えを持っているかを理解する

  • 顧客との”できたらいいな”を妄想する:この顧客とこんなことできたらめちゃめちゃ楽しいのに、、、をベースにまずは妄想して絵にしてみる

良い絵を描き、ディスカッションをするためには、まずはプロダクトの理解は欠かせません。CSの方々であれば日々のサクセス活動の中で幅広いユースケースに触れることもできるため、活かさない手はありません。

そこから、視野を広げ、視座を上げて業界、会社の単位でみてみると新たな発見やワクワクする未来を描きやすいのではないかと思います。

まとめ

改めて、エンタープライズCSにおいては、短期的な積み上げ思考では限界があります。

必要なのは、顧客と共に目指す姿を描き、そこからバックキャスティングして進める姿勢です。

RightTouchのCustomer Growth Partnerは、顧客と未来を構想し、共創することを使命としています。Expansionはその結果として生まれる副産物にすぎません。
エンタープライズという難易度の高いフィールドだからこその面白さや、色んなキャリアに通じる経験を得られると考えています。

私たちも日々模索と研鑽を重ねている最中ではありますが、Customer Growth Partnerに限らず、SalesやMarketingなど幅広い職種で募集をしており、ご連絡いただいた方のWillに合わせて柔軟にポジションを一緒に検討させてください。

当社のチャレンジにご興味を持っていただいた方は、ぜひ以下の採用サイト応募導線からのご連絡をお待ちしております!

カジュアル面談・情報交換も大歓迎ですので、気になった方はYOUTRUSTで友達申請してください。

ここまでお読みいただきありがとうございました!

いいなと思ったら応援しよう!