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卒業の日 #20 ラスト・シューティング

3/31 10:50GMT
Raiden1がログアウトした。

画面に残ったのは、自分のアバターだけだった。

エリックは、広大なフィールドを見つめる。

「……I’m all alone now」
(本当に、一人になった)

『LAST7』として、このゲームを終わらせないようにしていた。
自分がいる限り、この世界はある。
だが、自分が接続を切れば――。
エリックは頭を振り、画面を見つめる。

銃を構える。
撃つ。
当たる。
まだ、ゲームはできる。
一人で、敵をどんどん倒していく。
最初は、それも楽しかった。

だが、十分もすると、エリックの手が止まった。

……声がない。

聞こえるのは、自分の足音だけだ。
誰の声もない。
誰の気配もない。

ただ、画面に現れる敵を倒し続けるだけの時間。

「……」

エリックは、最初にログインした日のことを思い出した。

何も分からず、ただ走り回っていた。
初めての戦い。
やり方が分からないと、近くにいた人がチャットで教えてくれた。
慣れてくると、今度は自分が教える側になった。
そうして、お互いが
この『LAST SAMURAI2』を作っているという感覚があった。

そして、
三月三日のあの夜。
接続を切らなければ、いつまでもこの世界にいられると分かったとき。

そして、サービス終了の時間を過ぎても残っていた、
七人の大馬鹿野郎たち。

名前も顔も知らない。
だけど、世界で一番仲良くなれた七人。

純粋に、楽しかった。

「……そうか」

「一緒にいる人がいたから、楽しかったんだな」

小さく息を吐く。

「……祭りは終わりだ」

エリックは机の下をさぐる。
久しぶりだ。

配信用のセットを取り出す。

ゲーム配信の準備をする。

「LAST SAMURAI2」という世界で、
この世界の最後を配信する。

こんな馬鹿なことでも、
本気でやれば、すごい体験になる。
それを、伝えたかった。

配信ボタンを押す。

――LIVE

「今日は、『LAST SAMURAI2』の最後の日です」
「今から、『LAST7』のみんなと、このゲームを遊んでくれたすべての人たちに向けて、生配信をします」

そう言って、走り出す。

止まっては、その場所の思い出を少しだけ話す。

SNSの通知が鳴りやまない。

「ありがとう」
「いつまでやるの」
「ずっと見てる」
「ちゃんと終わらせてやってくれ!」

そのまま、走る。
撃つ。
進む。

ただ、それを続ける。
画面が、少し滲む。

「ねえ、エリック。あんたのSNSすごいことになってるよ!」

背後から声がした。
沙理だ。

エリックは振り返らない。
嗚咽が漏れる。

「……泣いてるの?」

エリックは何も答えない。

長い時間が過ぎた。
どれくらい経ったのか、分からない。

最後の敵。

まるで時間が止まったかのように、動きが見える。
ゆっくりと銃を上げる。

最後の一撃ラスト・シューティング」を放った。

画面が静かに止まる。
動くものは、もう何もない。
コメントすら、一瞬止まった。

そして、

「GG」
「おつかれ」
「伝説だ」
「見届けた」

英語も、知らない言語も混ざっている。
それでも、同じ瞬間を見ていた。

本当に、終わった。

エリックは配信を切った。

迷いなく【LOG OUT】のボタンを選んだ。

「これで終わりだ」

最後のクリック。

そうしてエリックは、
「LAST SAMURAI2」の世界から旅立った。

その配信は、ライブのみならず、世界中でたくさんの人が見ることになる。

(第20話 了 次週に続く のこり2話)


📚ZAPPING POINT
沙理の物語→#16 自分の居場所
Raiden1の物語→#19最後の七人


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一条 詩紋 いつも読んでいただき、本当にありがとうございます。 物語があなたの癒しになれば幸いです。 チップはご無用です。一緒にドキドキしてくれた思いを伝えてくだされば・・・。それがうれしいです。