卒業の日 #20 ラスト・シューティング
3/31 10:50GMT
Raiden1がログアウトした。
画面に残ったのは、自分のアバターだけだった。
エリックは、広大なフィールドを見つめる。
「……I’m all alone now」
(本当に、一人になった)
『LAST7』として、このゲームを終わらせないようにしていた。
自分がいる限り、この世界はある。
だが、自分が接続を切れば――。
エリックは頭を振り、画面を見つめる。
銃を構える。
撃つ。
当たる。
まだ、ゲームはできる。
一人で、敵をどんどん倒していく。
最初は、それも楽しかった。
*
だが、十分もすると、エリックの手が止まった。
……声がない。
聞こえるのは、自分の足音だけだ。
誰の声もない。
誰の気配もない。
ただ、画面に現れる敵を倒し続けるだけの時間。
「……」
エリックは、最初にログインした日のことを思い出した。
何も分からず、ただ走り回っていた。
初めての戦い。
やり方が分からないと、近くにいた人がチャットで教えてくれた。
慣れてくると、今度は自分が教える側になった。
そうして、お互いが
この『LAST SAMURAI2』を作っているという感覚があった。
そして、
三月三日のあの夜。
接続を切らなければ、いつまでもこの世界にいられると分かったとき。
そして、サービス終了の時間を過ぎても残っていた、
七人の大馬鹿野郎たち。
名前も顔も知らない。
だけど、世界で一番仲良くなれた七人。
純粋に、楽しかった。
「……そうか」
「一緒にいる人がいたから、楽しかったんだな」
小さく息を吐く。
「……祭りは終わりだ」
*
エリックは机の下をさぐる。
久しぶりだ。
配信用のセットを取り出す。
ゲーム配信の準備をする。
「LAST SAMURAI2」という世界で、
この世界の最後を配信する。
こんな馬鹿なことでも、
本気でやれば、すごい体験になる。
それを、伝えたかった。
配信ボタンを押す。
――LIVE
「今日は、『LAST SAMURAI2』の最後の日です」
「今から、『LAST7』のみんなと、このゲームを遊んでくれたすべての人たちに向けて、生配信をします」
そう言って、走り出す。
止まっては、その場所の思い出を少しだけ話す。
SNSの通知が鳴りやまない。
「ありがとう」
「いつまでやるの」
「ずっと見てる」
「ちゃんと終わらせてやってくれ!」
そのまま、走る。
撃つ。
進む。
ただ、それを続ける。
画面が、少し滲む。
「ねえ、エリック。あんたのSNSすごいことになってるよ!」
背後から声がした。
沙理だ。
エリックは振り返らない。
嗚咽が漏れる。
「……泣いてるの?」
エリックは何も答えない。
*
長い時間が過ぎた。
どれくらい経ったのか、分からない。
最後の敵。
まるで時間が止まったかのように、動きが見える。
ゆっくりと銃を上げる。
「最後の一撃」を放った。
画面が静かに止まる。
動くものは、もう何もない。
コメントすら、一瞬止まった。
そして、
「GG」
「おつかれ」
「伝説だ」
「見届けた」
英語も、知らない言語も混ざっている。
それでも、同じ瞬間を見ていた。
本当に、終わった。
エリックは配信を切った。
迷いなく【LOG OUT】のボタンを選んだ。
「これで終わりだ」
最後のクリック。
そうしてエリックは、
「LAST SAMURAI2」の世界から旅立った。
*
その配信は、ライブのみならず、世界中でたくさんの人が見ることになる。
(第20話 了 次週に続く のこり2話)
📚ZAPPING POINT
沙理の物語→#16 自分の居場所
Raiden1の物語→#19最後の七人
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いつも読んでいただき、本当にありがとうございます。
物語があなたの癒しになれば幸いです。
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