【美術展2025#78】ライアン・ガンダー ユー・コンプリート・ミー@ポーラ美術館
会期:2025年5月31日(土)~11月30日(日)
ポーラ美術館は、ライアン・ガンダーの最新作をご紹介する展覧会を開催いたします。
ライアン・ガンダー(1976年生まれ)は、英国サフォークを拠点に活動するアーティストです。絵画、彫刻、映像、テキスト、VRインスタレーションから建築、出版物や書体、儀式、パフォーマンスに至るまで、幅広く多元的な作品と実践を通して、ガンダーは芸術の枠組みやその意味を問い直しながら国際的な評価を確立してきました。また、自身の制作に加えて、展覧会のキュレーション、大学や美術機関での指導、また子どもたちを支援する活動にも熱心に取り組んでおり、数多くの書籍の執筆・編集、テレビ番組の制作・出演を通じて芸術や文化の普及にも携わるガンダーは、現代におけるアーティスト像を更新しています。
「一種のネオ・コンセプチュアルであり、特定の様式をもたないアマチュア哲学者」と自称するガンダーは、日常の中に潜む物語や多層的な意味を、知的な遊び心と鋭いユーモアを交えながら表現しています。その作品においては、不在や死、不可視、潜在性といったテーマが、現実と虚構が複雑に絡み合う中で展開されます。
人間の言葉を話すカエル、読めない時計や仮想の国旗、ある兄弟の偽りの歴史など、ガンダーの作品は極めて具体的でありながら、捉えどころのない神秘に満ちています。「アートの目的はコミュニケーションではなく、触媒として曖昧さを提供すること」と作家が語るように、作品の意味は固定されていません。鑑賞者の働きかけ―― 解釈と連想のプロセスによって、出会いのたびに新たな物語が創造されるのです。
ポーラ美術館ではこの時期「ゴッホ・インパクト」展と「ライアン・ガンダー」展が同時開催されている。
どちらから巡っても良いのだが美術史の時系列的に私はゴッホ展を先に見た↓
だが、入り口からエスカレーターを降りて否が応でもまず目にするのはライアン・ガンダー作品だ。

2025
ロビーにど〜んと置かれる謎の黒いGANTZ玉。
これまたGANTZよろしく玉には文字が書かれている。
「孤独なまま、幸せでいられるの?」
「影に音はあるの?」
子供が好奇心の赴くままに投げかけてくるような答えの出ない問いが堂々と書かれている。
(取って付けたような誤字があれば完璧にGANTZだったのに)
もし子供に聞かれたら、
「う〜ん、どうだろうね〜」
なんつってテキトーに聞き流してしまいそう。
だが、この巨大なGANTZ玉はそうはさせねぇと言わんばかりに迫ってくる。
お前、適当にお茶を濁してオレの問いから逃げようとしてねーか?
お前なりに本気で考えてお前なりの本気のアンサーをぶつけてこいよ。
そんなふうに詰められているような圧を感じる。
なんだこれは。
答えを探す。
色々と思いは巡るが何が正解なのかはわからない。
否が応でも答えの出ない問いに巻き込まれていく。
そもそも展覧会タイトルが『YOU COMPLETE ME(あなたが私を完成させる)』で、美術館HPにて、
「アートの目的はコミュニケーションではなく、触媒として曖昧さを提供すること」と作家が語るように、作品の意味は固定されていません。
と言っている以上、作品を通して私が何かを感じ考えれば、それが私なりの正解なのかもしれない。
作家が用意した一つの正解を答え合わせのように探す必要はないんだ。
そう思ったらなんだか気が楽になった。
よって、ややこしいことを考えずに直感で勝手に考えてみることにする。
・A multitude of phantom ambitions (The waiting Room)

様々な時代のBMWのキドニーグリルが描かれている。

右下のはE90系(前期)のやつだ。
私が10年以上前に乗っていたやつ。

運転していてとても楽しい車だった。
クリス・バングルがチーフデザイナーをしていたこの時代のBMWのデザインは今でも好きなのだが、まあそれはさておき。
はて?ポーラ美術館でBMWの展覧会?いつ?
会期を見ると今展の日程が書かれている。
鑑賞ガイドを見ると、
本当は行われなかったけれど、作家の頭の中ではあったかもしれない、50個の空想の展覧会ポスターを集めたもの。ここでは、同じシリーズの135枚のポスターの上に、9枚をたてと横にそろえて重ねて貼っています。いちばん上に貼ったポスターしか見えません。
あ、やっぱりフェイクなのね。
そう言われてよく見ると、ポスターが重なっている。

BMWのキドニーグリルが描かれた「The waiting Room」というタイトルの展覧会は、実現したら一体どんな内容だったのだろう。
タイトルからすると次期型のカーデザインの展覧会だろうか?
だが、ライアン・ガンダーがそんなことをやるはずもないし…。
何やら作家の名前が色々書かれている。
バーバラ・ブルーム、マーティン・ボイス、フィリップ・ド・シャンパーニュ、サルバドール・ダリ、マルセル・デュシャン、ピエール・ユイグ、フェリックス・ゴンザレス=トレス、河原温、アリシア・クワデ、フリッツ・ラング、クリスチャン・マークレー、宮島達男、サラ・モリス、マリー・スパルタリ・スティルマン、セリス・ウィン・エバンス
初見の名前も散見するが、時代も表現方法もバラバラだ。
やっぱりBMWは関係なさそうだ。
この人選でどんな展覧会を構成しようとしていたのだろう。
共通項が見つからずさっぱりイメージが浮かばないが色々と空想を広げてみる。
頭の中に空想の展覧会がぐるぐると回り出し、なんだか楽しくなってくる。
そしてレイヤー下部の見えない(空想の)展覧会も気になる〜。
・Chronos Kairos, 03.02 2025

読めねえよっ!!
・Turn back your watch 2025

画家のゴッホが絵の道具を買うために、弟のテオから毎月もらっていたお金(2025年の価値で計算)と同じ金額で、175枚のスクラッチくじを買いました。くじは額の中にまとめて貼られていて、当たって賞金をもらったくじのところだけは、ぬいていあります。当たったお金は、ガンダーがじぶんのアトリエにつくった「ソリッド・ハウス」という、若いアーティストたちが新しいことにチャレンジする展示の場所のために、ふたたび使われています。
同時開催されているゴッホ展にかけているのか、ゴッホネタの作品。
当たりくじは抜いてあるとのことだが、そうすると結構当たっているな。
っていうか賞金のかかったくじなのにこんな当たり確率いいもんかね?
やっぱりフェイクなの?
・Closed systems 2024

おもちゃがきれいに並ぶ。
自閉スペクトラム症の5歳の息子が熱心に取り組んでいることのひとつらしい。
こういうのって一見とりとめのないように見えても自分の中での厳密なルールがあるから、私の持ち物をこっそりと並べてもきっとすぐに気付かれるんだろうな。
だがしかし、それをかいくぐってこっそり並べたい欲がふつふつと湧き上がる(こらえる)。

カフェにもGANTZ玉が転がされている。


シランガナ━━━(ノ#゚Д゚)ノ彡┻━┻ ドルァ!!
・The story is in the telling 2025

ギャラリーのかべに空いた穴から、ロボットのねずみが2ひき顔を出して、自分たちはどこから来たのか、何のためにいるのかを、違う意見を出し合いながら話しています。
東京オペラシティアートギャラリーでの展覧会のねずみを思い出したが、こちらは2025年の新作らしい。
やはり何か喋っている。
母国語でないのでいまいち感情移入できないのが悔しい。
日本語訳のテキストもあるがテキストで見るのは何か違う気がする。
が、参考までに↓

カエルはこちら↓


ライアン・ガンダーのこれ系の作品ってほんとによくできている。

・Arles 2025

「作家の父が1960年代に記した手書き文字をもとにしたペインティング作品」とのことだが、さりげなくゴッホネタのひとつだと思う。

ところで、キャプションには作品タイトルがもう一つ書かれているが、はて?

床に何か転がっているが…まさか。
・Everything is counted 2021

とても小さな蚊のロボットが、今にも死んでしまいそうな動きをしながら、この空間にもともとあった台の上に置かれています。
ロボットなの?動くの?
ということでしばらく凝視する。
3分…5分……
…動いてるかこれ???
ということでこれ状態↓でしばらく見続けるがわからんかった。

第三者的に見たらヤバい人でしかないなこれ。
・Temporal Departures (146 Mare Street, London)

かべに取りつけられたチケットマシン。ボタンを押すと、作家が考えた「まだ実現していないアート作品のアイディア」が1つ出てきます。
ミニオンズの目みたいなボタンを押すと、

なになに?

とは??
頭の中でイメージを膨らます。
50年前だから1975年は確定、だが同じ物体とは?さらにその横にある物体とは?
もやっとしたイメージが浮かんでは消える。
1976年生まれの私としては1975年の世界をいざ想像しようとしても、自分がまだ存在していなかった世界はやはりリアリティが無く、なかなか具体的なイメージに結びついてこない。
いつか見た1975年以前の昔の映画の風景が甦る。
結局そのような曖昧で錆びついた記憶の引き出しをこじ開けて無理やりイメージを探してきて形作らねばならない。
そしてそこで生まれたイメージは作家が考えた「まだ実現していないアート作品のアイディア」とは似ても似つかないものなのだろう、きっと。
・Do ghosts have teeth? (Your questions in a world that only wants answers)

ガラスケース内いっぱいに転がるGANTZ玉。

こちらはビリヤード玉くらいの大きさ。

なんだかんだと質問やら指示やら説明やらが書いてある。
作品タイトルの邦題
《おばけには歯があるの?(答えばかり求める世界での問い)》
そうだよね。
世界は曖昧で、まだまだ謎に満ちている。
丸投げのコンセプチュアルアートではないが、積極的なやり取りがあるわけでもない。
だが、コミュニケーションを拒否するわけではなく、しっかりと思考を促す問いを投げかけてくる。
普段見過ごしてしまっている無意識の深い部分をくすぐられるような感覚が心地よかった。
「ゴッホ・インパクト」展とともに、どちらもとても良かった。

外に出たらまだ6月の箱根なのに暑かった。
(※6月に行った展覧会の記事がようやく追いついた…)
(時系列的には前後するが)8月に岡山に行ったが、岡山市の「ラビットホール別館福岡醤油ギャラリー」ではライアン・ガンダーの個展を行っており、めちゃ行きたかったのだが、ハーゲンダッツのせいで時間が足らずに行けなかった。
詳細↓
ちなみに「ラビットホール」はライアン・ガンダーが名付け親とのこと。
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