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入門講座#7:世間における1型糖尿病への誤解…1型糖尿病の解説

📘 入門講座#7  (1型糖尿病シリーズ 2/4)
初めての方 → #1「糖尿病ってそもそも何?」
前回 → #6「1型糖尿病の解説」

はじめに

糖尿病と聞くと、多くの人が思い浮かべるのは2型糖尿病(生活習慣との関連が語られやすいタイプ)です。

その結果、1型糖尿病の当事者は、“病因も治療も違う”のに、同じ言葉で一括りにされる場面に何度も遭遇します。


これは、じわじわとこたえます。

「説明しないといけない」疲れ。

「誤解されたまま」残る傷。

そして、ときに「注射や測定を隠してしまう」──これは安全面でも危険です。


今日の記事は、怖がらせるためではありません。

むしろ逆で、安心のための整理です。


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まずここだけ:1型と2型は"別の仕組み"

いちばん大事な前提を、いちばん短く復習します。


1型糖尿病:  膵臓のβ(ベータ)細胞が障害され、インスリンが出せなくなる(多くは自己免疫)

2型糖尿病:  インスリンが効きにくい(抵抗性)+出にくい(分泌低下)が重なりやすい

同じ「糖尿病」という名前でも、スタート地点が違うんです。

だから治療の前提も違います。

これから、私が向き合ってきた患者さんたちからよく聞く誤解を紹介していきます。



誤解① 「自己管理が悪いからなったんでしょ?」


これは1型当事者にとって、いちばん刺さる誤解です。
みなさんここでかなり苦しみます。
説明しようにも、発症した当初は自身も1型糖尿病の入門者であり、「1型」「2型」の区別を説明できるほどの知識がありませんし、誤解している人を理解させる労力は並大抵ではありません。

医師にもそんな誤解をしている人がいます…。


でも、1型糖尿病は主に自己免疫が関与し、生活習慣が直接の原因とは考えにくいタイプです。

"やった/やってない"の道徳で語る話ではありません。


ここで一つ、メディノトとして大事な線引きも置いておきます。

2型糖尿病も「自己責任」と決めつけられるべき病気ではありません。 

2型にも体質や環境など多くの要因が関わり、単純な人格評価にしてはいけない。

誤解は、1型にも2型にも、どちらにも傷を残します。



誤解② 「痩せてるのに糖尿病?」「子どもが糖尿病なんて珍しい」


1型は、体型に関係なく起こり得ます。

そして小児にも起こります。


「若年=1型、成人=2型」という雑なイメージは、現実とズレます。ご年配の方にはこの固定観念をお持ちの方が多い印象です。

大人で1型が見つかることもありますし、若年の2型も増えています。


中でも "緩徐進行1型糖尿病(SPIDDM)" というタイプがあり、それまで2型糖尿病として治療されていたけれど、「食事療法と運動療法を頑張っているのに、飲み薬がだんだん効かなくなってきた」というエピソードから発覚する方が多くいらっしゃいます。


だから年齢や体型だけで、糖尿病のタイプを決めつけない。

これは周囲の人にも、医療者にも、ずっと大事な原則です。



誤解③ 「糖尿病なら甘いものは禁止でしょ?」


"禁止"で管理するのは、長期戦としてはかなり難しいです。

1型では、インスリンと食事(炭水化物量)を調整しながら生活します。

だから「完全禁止」より、「量・タイミング・調整」が現実的です。


血糖値に焦点を当てた議論であれば、必要なインスリンと糖質量がマッチしていれば特に問題になりません。しかし、一般の方にも言える話ですが、甘いものを摂りすぎると太りますし、中性脂肪が上がります。脂肪肝にもなりますし、虫歯にもなりやすくなります。
つまり、何でも自由という意味ではありません。


でも「1型=一生甘いものゼロ」という理解は、だいたい誤解です。
(これは2型糖尿病の方にも言えることですが)



誤解④ 「インスリン打ってるなんて重症だね」


これも、1型当事者がよく受ける"ズレた評価"です。そんなふうに思わないでほしい、と心から感じています。そしてこれは2型糖尿病の方にも言えることです。


1型糖尿病の治療では、インスリンは重症だから使うものではなく、
「そもそも必要なもの」です。

どんな人でも、日中の生活でエネルギーとして必要な糖を臓器や細胞へと取り込む必要があります。食後には入ってきた栄養を吸収する必要があります。その大きな担い手がインスリンなんです。


むしろ、適切なインスリン治療が合併症予防に直結することは、長期研究でも示されています。
インスリンは「怖い薬・残念な薬」では全くありません。


かつて「インスリンを打つとがんになる」「寿命が縮む」といった誤った情報が広まり、不安を抱えていた患者さんもいました。現在ではこれらは否定されています。

課題となるのは治療費が高いことです。それは我々も社会課題として、活動している方を支援しています。


安全に生きるための道具ですので、誤解なく広く認知されてほしいと願っています。



誤解⑤ 「糖尿病なら長生きできない/未来が暗い」


これも古いイメージが混ざっています。

いまは、インスリン製剤やCGMなどの進歩で、自己管理の安全性と自由度は大きく上がっています。


私が医師になってからの15年でもかなり変わっています。初期研修医時代の治療と現在の治療を比べると、明らかに現在の方が管理しやすくなっています。


つい25年ほど前までは、今のように便利な持効型インスリンや超速効型インスリンがなく、1型糖尿病の方は基礎インスリンとして中間型インスリン(N)を2回注射、速効型インスリン(R)を3回打ち…インスリンの血中濃度が不安定なため、効果が重なることで重症低血糖のリスクも高い時代がありました。
当時の患者さんや先生方のご苦労を思うと、本当に頭が下がります。


重症低血糖時のレスキュー薬も、最近では点鼻薬として発売されています。そして何よりデバイスの進歩が目覚ましいです。


これらを自身の生活に合わせて管理できれば、治療を続けながら学業・仕事・スポーツ・妊娠出産など、多様な人生を歩む人がたくさんいます。

希望を盛る必要はないけれど、必要以上に暗くする理由もありません。


スティグマは "気持ちの問題" ではなく、現実に起きる問題


調査では、糖尿病のスティグマを感じたことがある人は、1型で76%、2型で52%と報告されています。


スティグマが厄介なのは、精神的にしんどいだけでなく、


- 人前で注射や測定がしづらくなる

- 隠れて打つ、打つタイミングがずれる

- 低血糖対策の補食を遠慮してしまう


など、"安全"にも影響し得ることです。


だから「気にしすぎだよ」で終わらせない。

これは当事者の甘えではなく、環境側の課題です。



誤解されたときの「短い返し」


説明って、毎回フル解説すると疲れます。

"短く、角が立ちにくい"言い方を用意しておくのがコツです。


①「自己管理が悪いから?」

→「1型は生活習慣が原因じゃなくて、自己免疫が関係するタイプなんです。」


②「痩せてるのに?」

→「1型は体型と関係なく起こることがあるんです。」


③「甘いものは禁止でしょ」

→「量とインスリンを調整しながら食べます。完全禁止っていうより"調整"ですね。」


④「インスリン=重症?」

→「1型はインスリンが必須なんです。重い軽いというより"必要な治療"です。」


⑤「人前で打つのは…」

→「安全のために必要なので、ここで打ちますね(短時間で終わります)。」


言葉にした瞬間、場の空気が変わることがあります。

それでも難しい日があるなら、難しい日があって当然です。



周囲の人へ:今日からできる"たった3つの配慮"


当事者が助かるのは、特別扱いではなく「当たり前の扱い」だと考えます。
私はそのように1型糖尿病の友人と向き合っています。
その方々にとって1型糖尿病であるということは日常の中の1つであり、特別なことではないのです。
具体的にどんなことをすると良いのか?


- 注射・測定・補食を "許可制" にしない(必要だからやっている)

- 「原因探し」より「困ってることある?」を先に

- "見た目で判断"しない(痩せてても、元気そうでも、必要なケアはある)

ちょっとした気遣いで助かることもあるかと思います。
周囲の方々もその日常を共有してもらえたら、いち糖尿病医として嬉しいことはありません。


まとめ:誤解が消えると、治療が少しラクになる


1型と2型が混同されると、当事者は「説明の労力」と「不必要な罪悪感」を背負います。

でも、仕組みを一枚で整理できると、必要以上に傷つかずに済む場面が増えます。

あなたが1型糖尿病であることは、性格の評価ではありません。

そして、治療は"人目に遠慮していいもの"ではありません。

私も、これからも「この誤解を減らせるように努力して行かねば!」とこの記事をかきながら思いました。

👣 今日の一歩:この記事の中で「知らなかった」と思った誤解が1つでもあったら、それを身近な誰かに話してみてください。


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※この記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の治療については主治医にご相談ください。

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