入門講座#6:わかってそうで理解が難しい…1型糖尿病の解説
📘 入門講座#6
#6〜#9は1型糖尿病の集中シリーズです。
2型の方は、#5の次に#10「脂肪と血糖の意外な関係」へ進んでもOKです。
初めての方 → #1「糖尿病ってそもそも何?」
前回 → #5「血糖は一日の中で、どう動いている?」
知ってそうで知らないことが多いです、我々医師の中でも十分な理解にいたってない人います。それが糖尿病専門と標榜しているクリニックの医師や看護師でも…
まずは定義ですが、1型糖尿病は「インスリンが足りなくなる」タイプの糖尿病
糖尿病にはいくつかタイプがありますが、1型糖尿病はひとことで言うと、体内でインスリンが出にくく(または出なく)なるタイプです。
インスリンは「血糖(ブドウ糖)を細胞に届けてエネルギーとして使う」ためのホルモン。
メディノト流に言うなら、インスリンは細胞のドアを開ける鍵です。
鍵が足りないと、糖は血液中に残りやすくなり、血糖が高くなります。
この状態が続くと、体調不良を起こしたり、長期的には合併症リスクにつながります。
発症メカニズム:なぜインスリンが足りなくなるの?
1型糖尿病の多くは、自己免疫(免疫が自分の体を誤って攻撃する反応)により、膵臓のβ細胞が障害されることで起こります。
ここは大事なので、安心材料も含めて言い切ります。
・1型糖尿病は、「食べすぎ・運動不足・肥満が直接の原因ではありません」(ここが2型と大きく違う点です)。
・発症には遺伝的な要因や環境要因(感染など)が関係すると考えられていますが、すべてが解明されているわけではありません。
つまり、「本人の努力不足で起きる病気」ではありません。
ここは、まず誤解を外しておきましょう。

いつ発症する?「子どもの病気」だけではない
昔は「若年性」と呼ばれたこともありますが、今は表現としてあまり正確ではありません。
1型糖尿病は、子ども〜大人まで、あらゆる年齢で起こり得ます。
特に大人の場合、ゆっくり進むタイプ(緩徐進行=LADA/SPIDDMとして扱われる領域)があり、最初は2型に見えることもあります。我々も今まで2型として治療を受けていた方が治療が難しくなったので…というエピソードでご紹介いただいた時に、抗体検査やインスリン分泌能を評価して判明することがよくあります。(つまり意外となんですが…タイプの検査されてないんです。後述)
症状:最初に出やすいサイン(早めに気づくため)
インスリンが足りなくなると、血糖が上がり、次のような症状が出ることがあります。
・尿が増える(回数・量が増える)
・のどが渇く、水をたくさん飲む
・体重が減る(食べているのに)
・だるい、疲れやすい
ここで大事なポイント。
「怖い話」をしたいわけではなく、「早めに安全に対処するため」に知ってほしい赤信号があります。
*赤信号(迷わず受診してください)
強い口渇・多尿に加えて、
・吐き気、嘔吐
・腹痛
・ぐったりして動けない
・呼吸が深く荒い、息が甘酸っぱい感じ
こういうときは、糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)という緊急状態の可能性があります。
ここは自己判断で様子見せず、医療機関へ行ってください。
(知っていれば、早期に助けられることが多い領域です)
診断:糖尿病かどうか+「1型かどうか」は別の話
糖尿病そのものの診断は、血糖やHbA1cなど一般的な基準で行われます。
一方で、「1型か2型か」を見分けるには追加の検査が重要です。
⭐︎ 1型を疑うときに役立つ検査
・膵島関連自己抗体**:GAD抗体、IA-2抗体、ZnT8抗体、ICA、(治療前なら)IAAなど
・Cペプチド:自分の体がどれくらいインスリンを出せているかの目安
特に大人の発症では、最初に2型として扱われることもあり得るため、必要に応じて抗体・Cペプチドで丁寧に評価するのが大切です。私の外来でも初診時に多くの方で検査しています。体型やエピソードだけある程度タイプを推察はできるのですが、完全には測るまでわからないものです。
治療の基本:インスリン療法(「生きる鍵」を外から補う)
1型糖尿病では、インスリンが足りないため、「外からインスリンを補う治療が基本」になります。
ここで安心材料を、もう一つ。
インスリン治療が確立したことで、1型糖尿病は「適切に管理すれば、学業・仕事・スポーツ・妊娠出産など、人生の選択肢を十分に持てる病気」になっています。
そして、血糖を良好に管理することが合併症を減らす、という強い根拠があります。
*エビデンス(医学研究抜粋 少しマニアックです。)
DCCT/EDICの研究で、「強化インスリン療法により網膜症・腎症・神経障害のリスクが35〜90%低下」したことが示されました。
この「管理すれば未来が変わる」という感覚が、1型糖尿病の学びの核です。
血糖モニタリング:CGMで“管理が楽になる時代”
近年はCGM(持続血糖モニタリング)などで、血糖の流れを見ながら調整できる環境が整ってきています。
「勘」ではなく「データ」で、しかも低血糖を避けやすくなる方向へ進化しています。
今後の展望:発症を遅らせる治療などが登場
根治療法はまだ確立していませんが、免疫に働きかけて進行を遅らせる研究が進んでいます。
代表例として、抗CD3抗体テプリズマブ(Tzield)が、「ステージ2からステージ3への進行を遅らせる薬として米国で承認(2022年)」されています。日本でも先進的医療機関で治験が進められています。
そのほかにも「インスリン投与方法が注射以外の選択肢を開発中」、「インスリンポンプ療法の発展によるまるで人工膵臓のような役割を持つデバイスの開発」などが期待されています。
まとめ(恐怖ではなく“武器になる知識”として)
1型糖尿病は、主に自己免疫でインスリンを作るβ細胞が障害され、インスリンが足りなくなる病気です。
生活習慣のせいではなく、子どもにも大人にも起こります。
治療はインスリン補充が中心で、血糖を良好に管理するほど合併症を減らせることが実証されています。
「怖いから知る」のではなく、「安全に生きるために知る」。
この姿勢で、次は「低血糖の基本」「シックデイ」「CGMの読み方」へつなげると、1型の理解が一気に実践に落ちます。怖く感じてしまう時もあるかと思います。そんな時は周囲の力を借りながら、そして一緒に学ぶ中で実践していってください。
少なくとも私が医師になった15年前より、現在の1型糖尿病の治療は明るくなっています!!それもかなり!
👣 今日の一歩:1型糖尿病について知らなかった方は、「1型は自己免疫の問題で、生活習慣が原因ではない」この1点だけ覚えて帰ってください。
📘 次の入門講座 → #7「1型糖尿病の誤解」
📘 前の入門講座 → #5「血糖は一日の中で、どう動いている?」
📗 2型の方で実践したい方 → 実践ゼミ#1「食後10分ウォーク」
📗 2型の方で肥満と血糖の関係を知りたい方 → #10「脂肪と血糖の意外な関係」
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