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実践ゼミ#6:合併症ありの人のダイエット── 制約があっても、できることはある

📗 実践ゼミ#6 / ダイエットシリーズ(合併症のある方向け)
全体ガイド → #4-7まとめ「あなたに合ったダイエットはどれ?」
前回 → #5「糖尿病初期の人のダイエット」

「合併症が出てしまったら、もうダイエットは無理ですか?」

この質問を受けるたびに、私は「無理ではありません」とはっきり答えます。

制約はあります。「何でもやっていい」とは言えません。でも制約があることと、諦めることは、まったく別の話です。

合併症があるときは「普通のダイエット」から「その人に合ったダイエット」に切り替えるだけです。やり方を変える。それだけです。

今日は合併症ごとの注意点を整理しながら、それでもできることをお伝えします。

ひとつお願いがあります。
この記事はあくまで一般的な考え方の整理です。合併症の程度は人によって大きく異なります。具体的な運動強度や食事の制限値は、必ず担当医と相談しながら決めてください。



最初に知っておきたいこと:なぜ「普通のダイエット」では危ない場合があるのか

合併症がない初期の方であれば、多少頑張りすぎても体がカバーしてくれることがあります。しかし合併症がある段階では、「頑張りすぎること」が体を傷める引き金になる場合があります。

眼底出血、腎機能の急激な低下、足の傷、心臓への過負荷——これらはすべて、善意の努力が裏目に出た結果として起きることがあります。

怖がらせたいわけではありません。仕組みを知った上で、安全な範囲で動く。それがこの記事の目的です。


食事編:合併症があるときの食事の考え方

全員に共通する土台

合併症の種類にかかわらず、以下は変わりません。

食べる順番:野菜→たんぱく質→炭水化物。血糖スパイクを抑える基本は合併症があっても有効です。

朝食を抜かない:1日3食に分散することで血糖の乱高下を防ぐ。これも共通です。

カロリーの目安:実践ゼミ#5でお伝えした標準体重×身体活動量の考え方は、合併症があっても基本的には変わりません。

腎症(CKD)がある場合:たんぱく質の扱いが変わる

腎症がある場合、たんぱく質の摂取量を制限する必要が出てくることがあります。

「筋肉を守るためにたんぱくをしっかり摂って」とお伝えしてきた実践ゼミ#5の内容と、一見矛盾します。でも腎臓の機能が低下すると、たんぱく質の代謝産物が腎臓にとって負担になります。

ただし、どの程度制限すべきかは腎症のステージ(GFRや尿たんぱくの量)によって大きく異なります。「ここは担当医・管理栄養士と個別に確認してください。」自己判断でたんぱくを極端に減らすのも、逆に増やすのも、どちらもリスクがあります。

腎症のある方の食事管理は、この記事の範囲を超えています。専門家との連携が最も大切な合併症のひとつです。

心血管疾患がある場合:塩分と脂質に気を配る

狭心症・心筋梗塞後の方は、血糖管理に加えて塩分・脂質の制限が加わります。

塩分:1日6g未満が目標。加工食品・外食・漬物に注意。「薄味に慣れる」ことが長期的には有効です。

脂質:飽和脂肪酸(バター・ラード・霜降り肉)を減らし、不飽和脂肪酸(魚・オリーブオイル・ナッツ)を意識的に取り入れる。

制限が増えることで「何も食べられない」と感じる方がいますが、そんなことはありません。和食中心の食事に近づけるだけで、多くの条件を同時に満たせます。

足病変・神経障害がある場合:食事制限そのものは他と変わらない

足の状態と食事は直接の関係が薄いため、食事の考え方は基本的に初期と同じです。ただし神経障害による**消化管の動きの低下(胃不全麻痺)**がある場合は、食後のお腹の張りや血糖の乱れが出ることがあります。その場合は少量頻回食(1日4〜5回に分けて食べる)が有効なことがあります。


運動編:合併症ごとの「OK・注意・NG」

網膜症がある場合

網膜症の程度によって、運動の制限が変わります。特に**増殖網膜症(進行した段階)**では、眼底出血を起こすリスクがある運動は避けなければなりません。

NGな運動(増殖網膜症の場合)

息をこらえる運動全般:重いものを持ち上げるウェイトトレーニング、腹筋運動、いきみを伴う動作

頭を心臓より低くする姿勢:前屈、逆立ち、ヨガの一部のポーズ

激しい有酸素運動:全力ダッシュ、縄跳び、激しいエアロビクス

頭部への振動・衝撃:ジョギング(強い着地衝撃)、ボクシング

OKな運動

ウォーキング(強度を上げすぎない)、水中歩行、椅子に座ったままできる上半身の体操、軽いストレッチ。

眼科主治医に現在の網膜の状態を確認し、「どのレベルの運動までOKか」を具体的に聞いておくことをおすすめします。

腎症(CKD)がある場合

軽度〜中等度の腎症であれば、「適度な有酸素運動は推奨されています。」むしろ運動は腎臓の保護にも働くというエビデンスが蓄積されています。

注意が必要なのは高強度の運動です。激しい運動は一時的に腎臓への血流を変化させ、尿たんぱくが増えることがあります。ウォーキングや軽い自転車こぎ程度の有酸素運動を、無理のない強度で続けることが基本です。

神経障害がある場合

神経障害で最も気をつけたいのが足のトラブルです。感覚が鈍くなっていると、靴ずれや小石が刺さっても気づかず、気づいたときには傷が深くなっていることがあります。

運動前後の足チェックを習慣に。

① 運動前:靴の中に異物がないか確認。靴下は厚手・縫い目が当たらないものを選ぶ。

② 運動後:足全体(指の間・かかと・爪の際)を目で確認する。鏡を使うか、見えにくい部分は家族に見てもらう。

ウォーキングに不安がある場合の代替運動:水中ウォーキング(水が傷を保護し、浮力で足への負担も軽減)、椅子に座ったままの足首の回転・膝の曲げ伸ばし、上半身の筋トレ。

心血管疾患がある場合

心筋梗塞・狭心症後の方は、運動強度の上限を意識することが重要です。

目安は「会話ができる程度の有酸素運動」。息が上がって話せなくなるほどの強度は避けます。心拍数でいえば、最大心拍数(220-年齢)の40〜60%程度が安全域の目安です。

「動かないこと」もリスクです。心臓病があるからといって安静にしすぎると、筋力低下・体重増加・血糖悪化の悪循環に入ります。心臓リハビリの考え方——「安全な範囲で少しずつ動く」——がここでも有効です。

心臓の状態が安定している方は、担当医に「どの程度の運動までOKか」を確認した上で、ウォーキングから始めてみてください。

足病変がある場合

活動性の潰瘍や壊疽がある場合、患部に荷重をかける運動は原則NGです。

ただし上半身・座位での運動は可能です。椅子に座ったままの腕の運動、軽いダンベル、腹筋(足に負荷をかけない形)など。足が使えなくても、上半身・体幹の筋肉を動かすことは血糖管理に有効です。

足病変が治癒・安定した後は、フットウェアの選択(糖尿病用シューズ)と合わせて、少しずつ歩く運動を再開します。


共通して言えること

合併症の種類が違っても、変わらないことがあります。

体重を5〜10%落とすだけで、合併症の進行を遅らせられる。
これはどの合併症があっても言えることです。完璧な体型を目指す必要はありません。少しの変化が、体の内側では大きな変化につながっています。

「完璧にやろうとしない」ことが、長続きの条件です。
制約が増えると「あれもダメ、これもダメ」と感じて、全部やめてしまいたくなることがあります。でも何かひとつ続けていれば、それは前進です。


合併症別・早見表



まとめ

合併症があることは、ダイエットを諦める理由にはなりません。やり方を変える理由です。

制約の中でできることを見つけて、小さく続ける。それがこの学校のやり方です。

次回(実践ゼミ#7)は「高齢者のダイエット」。
若い人とは目標そのものが変わってくる、という話をします。

👣 今日の一歩:自分の合併症の種類と、「できること」を1つだけ確認してみてください。迷ったら次の受診で主治医に聞く。


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※合併症の程度は個人差が大きいです。食事・運動の具体的な数値は必ず担当医と相談してください。

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