ディーター・ヘッキング監督が再生したVfLボーフム1848 FOKUS Bundesliga!!! #50
ヴォノヴィア・ルールシュタディオン

サッカー大国ドイツには数多くの優れたサッカー専用スタジアムがある。なかでもブンデスリーガのクラブがアウェーへ遠征する際、もっとも恐れる場所はVfLボーフムの本拠地ヴォノヴィア・ルールシュタディオンだろう。
1921年に建設された収容人数26,000人のコンパクトなスタジアムは、観客とピッチの距離が近いことに加えて音が籠る構造になっており、試合中はチャントや歓声が場内に響き渡る。その音がホームチームを鼓舞し、アウェーチームに想像以上のプレッシャーを与えるのだ。
2月15日に行われた「ルール・ダービー」でも、スタジアムがチームに味方したのだろう。当時リーグ最下位に沈んだボーフムが、監督を交代して復活を期す強豪ボルシア・ドルトムントを2-0で打ち破り、勝ち点3を獲得したのである。
今季開幕当初のVfLボーフム

今季開幕当初のボーフムは、リーグの熾烈な残留争いに参加できる状態ではなかった。複数の主力が退団したうえ、クラブ上層部と正守護神マヌエル・リーマンが対立。主力を欠く状態でシーズンに臨んだチームは、開幕9試合で1分8敗に終わり、ペーター・ツァイドラー監督が解任された。
後任として招聘されたディーター・ヘッキングに期待されたのは、それまで1だった勝ち点を着実に積み上げること。新監督はその目標を実現してみせた。初陣となったバイエル・レヴァークーゼン戦で引き分けると、以降11試合で2勝3分6敗の結果を残し、合計10の勝ち点を獲得した。そして迎えたのが、第22節ホームでのドルトムント戦だった。
戦術家としてのディーター・へッキング

縦パス主体のビルドアップで、素早い攻撃を狙うドルトムントに対し、ヘッキング監督は敵の中盤と前線を分断しようと考えた。5-3-2の布陣で試合に臨んだボーフムは、守備ラインを高く設定し、MF3人とFW2人の計5人でドルトムントの選手に強烈なプレスを実行した。
プレスの影響で、前線に素早くボールを送ることができないドルトムントは、スピードを緩め、ショートパスを繋いで局面の打開を図る。相手陣に進出したドルトムントは、選手の個人能力を活かし、セール・ギラシやユリアン・ブラントが相手ゴールを脅かしたが、ボーフムの守護神ティモ・ホルンの好守に阻まれた。

ボルシア・ドルトムントの致命的欠陥

相手のプレッシングに苦しむドルトムントとは反対に、ボーフムは敵陣でボールを繋ぎ、何度もチャンスを創出した。とくに印象的だったのは、ボーフムのMFイブラヒマ・シソコとドルトムントのMFユリアン・ブラントとのマッチアップだった。
190cmを超える巨躰と懐の深いキープ能力を武器とするシソコは、ブラントのプレスを回避し続け、左右にボールを展開した。またMFのトム・クラウスが左SBの位置に降りてボールの展開に関わったことで、ボーフムは後方で数的優位を形成し、複数のパスコースを確保しながら円滑にボールを回した。
またボーフムは、ドルトムントの右サイドを何度も攻撃した。相手CBベルナルドのケアに奔走したカリム・アデイェミとスピードに難のあるニクラス・ズーレの間には、広大なスペースが提供されたためである。左SBのゲリット・ホルトマンは、その広大なスペースを活用して「アイソレーション」となり、左足のクロスで敵を脅かした。
ボーフムの一番槍 ヨルゴス・マスラス

素晴らしいプレーを披露したボーフムの選手たちのなかでも、とくに鮮烈な活躍をみせたのは、ヨルゴス・マスラスだった。冬にオリンピアコスFCからレンタルでボーフムへと加入したギリシャ代表FWは、スプリント能力を活かしてプレスの先鋒となり、相手DFを脅かした。
マスラスは2トップを組んだフィリップ・ホフマンと見事な連携を見せる。後方からのパスをホフマンがワンタッチで落としたのに反応して、マスラスがシュートを放つシーンもあった。とくに秀逸だったのは先制点のシーン。33分、巧みな動きだしでクラウスから縦パスを引き出したホフマンが、ワンタッチで、ゴール前を横断するクロスを送る。マスラスがそれに合わせて飛び込み、得点した。
マスラスがいかに優れていたかは、この試合のスタッツを見ても明らかだった。攻撃面では両チーム最多7本のシュートを放ち、守備面でもチーム最多の8度のボールリカバリーに成功したのだ。とくに相手のバックパスを狙う動きは見事で、ズーレのバックパスを拾って得点した2点目のシーンやヤン・コウトからボールを奪ったシーンは印象的だ。
再生したVfLボーフムの今後の展望

選手の能力を引き出すヘッキングの人材登用術には驚嘆するしかない。現在のチーム状況は、シーズン開幕当初のボーフムからはまったく想像できないものだ。今のボーフムをみて降格候補だと思う人はほとんどいないだろう。
ヘッキングはこれまでも、困難な状況のクラブを再生させ、上位クラブと渡り合うチームにつくりかえる仕事を達成してきた。1.FCニュルンベルクやVfLヴォルフスブルクでの成果は、非常に有名だ。ボーフムでは、ユリアン・ナーゲルスマン監督の戦術的要素を取り入れた部分も見られた。最新の戦術にも精通しているのだろう。
ボーフムはヘッキング監督のもとで再生した。ドルトムント戦の勝利は、チームにとって大きな自信となるだろう。ヘッキング監督のチームがシーズンの残りの試合を通してどのような戦い方を見せるのか、注目していきたい。
読了していただき、ありがとうございます!
そのほかドイツ・ブンデスリーガに関するおすすめ記事はこちら

