リドル・バク(Ridle Baku):ドイツ人であり、コンゴ人。マインツユース出身のエリートへの高まる期待 FOKUS Bundesliga!!! #40
マインツユースの躍進とリドル・バクー

語弊を恐れずに言えば、現在のドイツで最も優秀な育成組織を持つサッカークラブはFSVマインツ05だろう。トップチームにはヨナタン・ブルカルトやパウル・ネーベルなどの優秀な若手選手を輩出し、2022/23シーズンにドイツ王者となったU19チームは、翌年のUEFAユースリーグでFCバルセロナやマンチェスター・シティFCのユースに勝利したのだ。そんなマインツのユース出身であり、現在VfLヴォルフスブルクで活躍するのがリドル・バクーだ。
バクーはドイツ西部のラインラント=プファルツ州の州都マインツの出身。コンゴ人の両親のもと、双子のマカナと共に1998年4月28日に生を受けた。「リドル」という名前は、カール・ハインツ・リードレのファンであった父ルトゥンバが彼に付けたニックネームで、生まれた当初の名前はボテ・ンスジ・バクー。その後、正式に改名してリドルという名前が入った。
FSVマインツ05での活躍とプレースタイル

バクーは2007年、マカナとともにマインツのユースに加入した。同世代には、2人GKの逸材フローリアン・ミュラーとフィン・ダーメンや怪物MFスアト・セルダールなどが在籍していた。身長176cmとサッカー選手としては比較的小柄ながら、体の内に強大なパワーを秘めたバクーは、マインツユースで頭角を現す。
バクーには大きく2つの特徴がある。1つは複数ポジションでプレーする「柔軟性」。マインツユースでは、右ワイドのポジションに加え、6番や左サイドバックとしてもプレーした。もう1つの特徴が「得点能力」。驚異的なスプリントと運動量を武器に得点を挙げてみせるのだ。バクーの得点能力の何よりの証拠が、彼がブンデスリーガデビューを飾った2018年4月29日のRBライプツィヒ戦。前日にちょうど20歳の誕生日を迎えた彼は、快速CBダヨ・ウパメカノを鮮やかにかわし、得点した。
次第にマインツの主力に定着したバクーは2019/20シーズン、26試合の先発出場を含むリーグ戦30試合に出場し、ドイツ期待の若手としてその名を轟かせた。そんな彼に目を付けたのが、強豪ヴォルフスブルクだった。
VfLヴォルフスブルクでのキャリアと新監督のもとでの「役割」

2020年夏に1000万ユーロという移籍金でヴォルフスブルク加入したバクーは、新チームでもすぐに主力に定着。スプリント能力を武器に左右のウイングと右サイドバックで主に起用された彼は、移籍先でさらに評価を上げ、2020年11月11日、チェコ代表との国際親善試合でドイツ代表デビューを飾った。その後、一時期ヴォルフスブルクは低迷するも、昨年3月に就任したラルフ・ハーゼンヒュットル監督のもと、再起を図っている。
バクーが新監督から与えられた役割は少し特殊だ。守備時には右サイドバックとなって5バックを形成し、強固な守備組織を築く。反対に、攻撃時には右のハーフスペースに進出して、フォワードとしてふるまうのだ。莫大な運動量を求められる「戦術上のキーマン」としての役割を的確に遂行するあたりが、バクーの器用さと選手としての能力の高さを証明している。
ドイツ人であり、コンゴ人。リドル・バクーのルーツへの敬愛

ドイツ生まれであり、ドイツで育ったバクーだが、彼は自身のもう1つのルーツであるコンゴ人としてのアイデンティティの持ち主でもある。彼はドイツ語とともに、リンガラ語を話すバイリンガルでもあるのだ。ドイツの国営放送局DWの取材で彼はこのように語っている。「私は自分の原点を決して忘れません。私はドイツ人ですが、コンゴ人でもあります。私には、私のもう半分を忘れることは決してできません。」
何より彼の活動家としての側面が、バクーのルーツへの敬愛を示している。バクーは「Fußball trifft Kultur(FtK)」という活動のアンバサダーを務める。「FtK」はとくに教育を投げ出してしまう移民の子どもたちに、サッカーを通じて教育を届けることを目的とする、非営利団体「LitCam」とDFL財団が協力して行う活動で、サッカーと文化活動を組み合わせたプログラムが参加した子どもたちに提供される。
またバクーと彼の兄弟は、慈善団体ワールド・ビジョンの支援を受け、もう1つの母国であるコンゴ民主共和国の北キブ州で子どもたちの教育を支援する活動「Improved after」を行っている。北ギブ州は国内有数の資源産出地域であるため、紛争が起こってしまう。同地域で苦しむ子どもたちに教育を支援する目的で、「Improved after」プロジェクトが始められた。
バクーに期待したい架け橋としての役割

ユーロ2024の直前、あるニュースが話題となった。ドイツの公共放送団体ARDが無作為に選んだ1,304人に対して行ったアンケートのなかに、「ドイツ代表に白人選手をもっと入れるべきか?」という質問があり、21%が「そう思う」と答えたというのだ。ドイツ代表MFのヨシュア・キミッヒはこの事実を「人種差別的だ」と批判したが、公共放送の質問になる以上、同様の考えを持つ人は、ドイツ国内に少なからずいるのだろう。
実際、バクーも黒人選手が評価されるには、白人選手の何倍もの努力が必要だと語っている。最近、RBライプツィヒからの関心も報じられたバクーには、ドイツ代表にまで選出された素晴らしいサッカーの才能がある。だからこそバクーには「架け橋」のような役割を期待したい。彼の活躍や活動は、ドイツとドイツ以外の国を結びつける大きなチカラを秘めているように感じられてならない。
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