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手持ちのヘッドホンを全てハーマンターゲットに合わせて聴いてみた

オーディオの世界は奥深く、そして「沼」とも言われるように、一度ハマると抜け出すのが難しい魅力的な趣味です。特にヘッドホンは、各メーカーが独自の哲学で音作りをしており、その個性は千差万別。しかし、その「個性」の大部分が周波数特性の違いに起因するとしたら…

今回は、オーディオにおける一つの「基準」とされるハーマンターゲットカーブを用いて、手持ちのヘッドホンたちを全て同じ周波数特性に揃え、個性を改めて浮き彫りにする実験をしてみました。

何故そんな事を試してみようかと思ったのかと言うと…以下のRoonの記事を読んだことがきっかけでした。

で、記事の中でK701が激推しされていたので、近所にK701の中古が売っているのを思い出し、急遽買ってきました。それに、密閉大好きな自分が本当に開放を愛せるのか、それも検証したかったというのもあります。

手持ちの再生環境

音源:PC Ubuntu Linux
再生アプリ:Spotify
DSPソフトウェア:Easy Effects
DAC:Sabaj A20d ver.2023
ヘッドホンアンプ:Luxman P-750u mk2(バランス入力)

比較用に聴いた曲

ボーカル曲:Abracadabra / Lady Gaga アルバムMAYHEMより
 流行りの曲。シンセサイザーの低音の音とボーカルという定番POPS
小編成:Peri's Scope / Jaden Evans アルバムEvans on Evansより
 Bill Evansの孫。高音質なピアノジャズトリオ
大編成:Formula1 Theme / Brian Tyler
 低音や電子音も含む大編成クラシック
バイノーラル:Bubbles / Yoshi Hirokawa アルバムWanderlingより
 大量のボールが落ちてくる感覚。定位や音の自然さがわかりやすい

手持ちのヘッドホンとそのレビュー

※HP-DX1000はイコライザの設定が見つからなかった為、お留守番です。

SONY MDR-Z1R

総評:現時点での基準点

もともと素性の良いヘッドホンですが、補正によってさらにバランスが整い、中音域の曇り、低音のボヤけた感じ、3kHzくらいのザラザラした感じはなくなくなり自然になっています。音の密度がとにかく凄まじく、広大な音場の中に、一つ一つの音が極めて自然に定位します。特に低音は、ただ量が多いだけでなく、籠ることなく重く、そして心地よく鼓膜を揺らす質感があります。Lady Gagaのボーカルは艶と余韻が完璧に表現され、大編成のオーケストラでも音が全く混濁しません。基本的にコレをスタートとします。

AKG K701


本日購入したK701

総評:広大な音場はそのままに、弱点を克服したが…

「高音は綺麗だけど低音が…」と言われがちなK701ですが、補正によってそれなりにバランスの取れたサウンドに変貌しました。開放型ならではの広大な音場は健在で、そこに力強い低音が加わったことで、音楽のスケール感が格段に向上。ただし、音全体の「軽さ」は依然として残り、高音域のシャキーンとした鋭い質感も健在です。人によっては少し刺さり気味に感じるかもしれませんが、これがK701の個性なのでしょう。安いラジカセのようだった頼りなさが消え、立派なリスニングヘッドホンとして覚醒しました。しかし、そこは開放。低音はMDR-Z1Rみたいな空気感を震わす感じは無く、今回聴き比べた中では最弱でした。

Denon AH-D7000


在りし日のAH-D7000。今はもうちょっとボロボロ

総評:パワフルで解像度も高くバランスも良い。ただ、やや平面的

補正前のMDR-Z1Rとの差が、補正によってかなり埋まった印象です。最初聴き比べた時は、ラジカセと生音源くらいの差を感じたものですが、ハーマンに合わせたらそこまで感じませんでした。高音域がやや硬質に感じられるのは、高音の再生能力が高いせいだろうか、すこし強調された感があります。低音の芯はしっかりしていますが、低音最強と言われたのも過去の話なのか、MDR-Z1Rのような空気を震わすほどの深みは一歩譲るかもしれません。ただ残念なのは、音の鳴り方が平面的に聴こえる点。奥行き感がやや希薄で、全ての音が同じ距離感で鳴っているように感じられました。

SONY MDR-EX800ST


なんだかんだで、安定のイヤホン

総評:イヤホンの常識を覆す解像感とパワー

「これ、本当にイヤホン?」と思わず声に出るほどのパフォーマンス。2万円クラスのイヤホンが10万円クラスのオーバーイヤーヘッドホンと渡り合えるレベルの解像感を発揮します。ウレタンイヤピースを使っているのもあり、補正によって低音域が支配的になり、凄まじい迫力で音楽を鳴らします。ただ、イヤホンという物理的な制約からか、音場はやはり狭く、音が中央に固まって聴こえる傾向があります。また、低音を出すと高音などがすこしマスクされるような感覚が強いです。大編成の曲や、音の分離が求められる音源では少し苦しさを見せますが、そのポテンシャルは計り知れません。

SONY MDR-CD2000


隠れた名機。まだIt's a SONYだった頃

総評:見過ごされていた実力者。最高のコストパフォーマンス

今回の比較で最も驚かされたのが、このMDR-CD2000です。そんなヘッドホン持っていたの?というね。ヘッドホン経歴の記事では一切言及しませんでした。

何故か?殆ど使ってこなかったからです。販売終了時に、バイト先の電気やで半額セールの1.2万円だったのを、更に半額の6000円とかいう破格で買わせてもらいました。2000年発売、MDR-R10やMDR-CD3000と同じバイオセルロース振動板を使った半開放型です。耳あてがふわふわでクッション性が良く、遮音性もなく、つけ心地も良いため、冬場の外出時に耳あて代わりに使ったりしてました。

で、その音ですが、EQなしだとカサカサして、ただごちゃごちゃして聴きづらい感じでした。が、イコライザで激変しました。一言で言えば「K701の広大な音場と軽さに、力強い低音を加えた」ようなサウンド。もちろん、解像度や音の滑らかさ、分離感ではフラッグシップ機に及びませんが、音楽を楽しく聴かせるバランス感覚はピカイチです。まだ、音に少し硬さやカサつきを感じる部分はありますが、定位感も悪くなく、音場も広い。何より聴いていて心地よい。隠れた名機の実力を再発見しました。

まとめ:イコライジングでヘッドホンの「真の実力」が見える

今回、全てのヘッドホンをハーマンターゲットという一つの基準に揃えてみて、改めて感じたことがあります。

  • 価格の差が一気に埋まる感覚がある。 数万円のヘッドホンが、数十万円のヘッドホンと「同じ土俵」で戦えるようになります。

  • 我々が「曇り」や「解像度不足」と感じていたものの一部は、単なる周波数特性の違いや、ピークやディップの違和感だった可能性が高い。

  • 低音不足や高音のピーク、中高音域の不足、山谷が補正されるだけで、見違えるほどクリアに聴こえるようになります。

  • とはいえ、個性が全く消えるわけではない。 これが最も重要なポイントです。周波数特性を揃えても、ヘッドホンが持つ根本的な性能差は消えません。

    • 音の硬さや柔らかさ(トランジェント特性)

    • 低音のパワーや質感

    • 高音域の滑らかさや鋭さ

    • 音場の広さや定位の正確さ

これらは、ドライバーの性能、ハウジングの構造など、ヘッドホンの物理的な設計に由来する「個性」であり、イコライザでは変えられない部分です。周波数特性という大きなマスクを取り払うことで、むしろそのヘッドホンが持つ「真の実力」や「本来の個性」が浮き彫りになるのです。ただ、それは価格の差は適切に反映されているとは…言いづらいかも?

ランキングで見る各ヘッドホンの個性

最後に、今回の比較を基にした個人的なランキングをまとめてみました。あくまで主観ですし、MDR-Z1Rには価格補正が入っている可能性もありますので、あくまでも参考程度に。

  • 総合的な好み

    1. MDR-Z1R > MDR-CD2000 > MDR-EX800ST > AH-D7000 > K701

  • 解像感(音の細やかさ)

    1. MDR-Z1R > AH-D7000 > K701 > MDR-CD2000 > MDR-EX800ST

  • 音場の広さや定位(空間表現)

    1. MDR-Z1R = K701 > MDR-CD2000 > AH-D7000 > MDR-EX800ST

  • 低音(質と量)

    1. MDR-Z1R > AH-D7000 > MDR-CD2000> MDR-EX800ST > K701

  • 中音域(ボーカルなど)

    • 正直、どのモデルも補正後は大きな差がなく、非常に優秀でした。殆ど解像感で説明が付くレベル。

  • 高音域

    • これは好みの問題が大きいため、順位付けは避けます。MDR-Z1Rの「自然さ」を取るか、K701の「シャープさ」を取るかで評価が大きく変わります。

  • お得感(コストパフォーマンス)

    1. MDR-CD2000 > MDR-EX800ST > K701 > MDR-Z1R > AH-D7000

補足:開放型は好きになれた?

MDR-CD2000は想像以上によかった、半開放だけど。K701は音が軽すぎて、好きになれなかった。やっぱり低音がドスンが大事なのと、音抜けがやや悪くても濃密で重い感じが、開放のスッとして軽い感じより好きだというのがより明確になったかも。

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