人生で初めて、夫が誰かのために「小説」を書き、嫁が人生初・編集に携わったので、どうか読んでください
noteの人気クリエイター・コッシーさんと一緒に「東海note支部(チャレがや)」を運営しています。
運営といっても、案内文づくり、作品のマガジン収録などはほとんどコッシーさんが担ってくださっていて、正直その人気に支えられていると言っても過言ではありません。(みくさんは、何をしているんだ……)
そんなチャレがやも気づけば第13回目に突入しました。
ここまで続けてこられたのは、参加してくださる皆さんのおかげだとしみじみ感じています。今回のテーマ「おとしもの」は書きやすかったのか、応募者数が過去最多とのこと。
夏野さんごさんに至っては、なんと一人で5作も投稿してくださり、しかも全部クオリティがめちゃくちゃ高いので、届く度におもわず目を丸くしました。
他にも実力派クリエイターの皆さんが次々と参加してくださり、たいへん盛り上がっています。本当にいつもありがとうございます。
さて、この「おとしもの」というテーマ、実はうちの夫が広島で酔いつぶれてカバンを落とし、警察に届けたら無事戻ってきたという出来事がきっかけで生まれました。
くわしくはこちらをご覧ください。創作大賞エッセイ部門へ応募中です。
そこで私は夫に「あなたも『おとしもの』で小説書いてみない? コッシーさんが待ってるよ」と声をかけました。2回無視されましたが、3回目でようやく重い腰を上げてくれました。
小説を書く人生のはじまりは、トイレから
昨夜、トイレに行こうとしたら扉が半開きでした。扉の隙間から恐る恐る中の様子をのぞくと、夫が全裸の状態で、携帯を真剣に見つめていました。
何をしているのかと聞くと「小説を書いている」とのことでした。

その言葉を聞くなり、作家仲間の茨木さんと「全裸でキーボードに向き合えば心を丸裸にできるのか」という検証をした時のことを思い出しました。
あれは確か、「書く人生のはじめかた」発売記念のスペースイベントの時のこと。
全部服を脱ぐ気持ちで、今持っている情報を読者のためにすべて差し出す覚悟をもって、本を書いたと伝えた時のことです。
本の執筆に際して、
— 茨木彩菜|作家・文章コンサルタント (@essayist_ayako) February 3, 2026
”書き手が本気を出す状況”に追い込まれたとき、
「裸にならなあかん」
「魂削らんと」
の分かり味が過ぎる。
それを気付けるのが誠実さであり、
分かって実行できるのが覚悟なんだろうな。 https://t.co/WgVBlY81px
こう聞くと、とてもいい話です。
ただ、そこから作家同士で話が深まると、その好奇心から「検証」せざるを得なくなるのです。私たちが語り合い、たどり着いた先の「問い」。それは……
「服を脱いで、パソコンと向き合えば裸の心で文章を書くことと向き合えるのか」
というものでした。

しょっぱなから、やりとりが濃い。(笑)
当時ファシリテーターを務めていた岡本さんは、そんな私たちの様子を、きっと暖かく見守ってくれたことでしょう(多分)。

詳しくは「商業出版の苦悩について」をご視聴ください
茨木さんは「全裸noteプロジェクト」を立ち上げて3日ほど頑張っていました。
全裸執筆は無防備である。それゆえに息子の勝手なおせっかいと優しさで、背中とふとももに、絆創膏を貼られた。ぴんと貼れず、シワシワの、シールよりも心許ない接着物として。
私は羞恥心に負けて「気持ちだけ裸」で書きましたが、夫は最初から「裸で書くのが当たり前」かのように、トイレで文章と向き合っていました。
裸の心で……いや。彼は物理的に「裸」で創作と向き合っていました。クリエイターとして、デビューからすでに強いです。
その後も風呂に入り、娘を入浴させつつ、娘を先に出して自分は浴室で執筆を続ける夫。おかげさまで、私が風呂に入る時間が遅れてしまいました。
その後も、何度か夫より「文章を見てくれ」と言われて確認しました。ところが、ほとんど変わっていないので「どこが変わったのか」について、さっぱりわかりません。
それでも夫は推敲を続けていました。どうせ人様の目に触れるのなら、クォリティを高めたいので、最後まで粘りたいとのことでした。推敲を何度も重ねたり、音読もしていました。みくさん、見習わないといけませんね。
気づけば夫、寝落ちしていたらしいです。起きてから「やべぇ、仕事の資料作ってねぇ。小説の原稿書いてしまった」とつぶやいていました。
コッシーさんのために、俺は書く。小説を
夫が小説を書くのは今回が初めて。仕事で論文作成や校閲などをしているので文章には自信があるようですが、創作はどうでしょうか。
夫はコッシーさんのエッセイと絵本が大好きで、朗読するたびに号泣します。
あの人が文章を読んで泣いたのは、コッシーさんの作品だけです。そんなコッシーさんのために、今回頑張って書いたそうです。
コッシーさん、どうか夫の気持ちを受け止めてあげてください。
夏の落としもの【小説のようなエッセイ】
執筆:好物はもみあげドラゴン(執筆は初めてです)
編集:みくまゆたん(編集経験は初めてです)
新幹線の座席に深く腰掛け、愛知への帰路についた瞬間、背中を冷たい水滴が伝った。……いや、冷や汗ではない。新幹線の発車ギリギリまで広島の観光を楽しんでいたため、ぐっしょりとかいた汗が、エアコンの冷気で冷やされただけだ。
数日前、私は大切な学会発表のために、広島を訪れていた。初日の夜、無事に大役を終えたという開放感から、私は夜の繁華街へと繰り出し、賑やかなクラブへと吸い込まれていった。
しかし、お酒の勢いというのは恐ろしい。テキーラなどを景気よく煽り、気づけば4時間以上も飲み続けていた。店を出たまでは覚えているが……。ふと気がつくと、私は見知らぬ道端にいた。時計を見ると、深夜1:40。気づいたときには、鞄と傘がなくなっていた。ポケットを探っても、あるはずの財布も、イヤホンも、ICカードもない。ついでにホテルのカードキーもない。冷や汗をかく暇もなかった。
頭に浮かんだのは、極めて現実的な計算と焦りだ。
(ホテルのカードキー紛失、これ弁償代いくら取られるんだ?)
(もし見つからなかったら、愛知にいる妻にどれだけ怒られるだろう……)(ていうか、クソ暑いのに明日これ探さなかんの? 観光するつもりだったのに、マジでついてねえわ……)
ただ、そんな最悪の状況のなか、不幸中の幸いというか、我ながら超ファインプレーだったことがある。クラブで荷物を預ける際、スマートフォンだけはズボンのポケットにしっかりと突っ込んでいたのだ。そのため、スマホだけは奇跡的に無事だった。さらに、スラックスの小さなポケットからは、昨夜のクラブの女の子の名刺も見つかった。
「いや、これだけ残っててもどうしようもないだろ」
あまりのシュールさに、私は誰もいない道端で思わず苦笑した。とりあえずなんとかホテルに戻り、泥のように眠って目が覚めた時、枕元にある異変に気づいた。そこには、セブンイレブンで買ったと思われる水のペットボトルがぽつんと置かれていた。店を出てからの記憶は全くないのに、脱水症状を防ごうとしたのか、本能だけで水を購入していたらしい。
スマホが無事だったおかげで、ホテルの部屋には戻れたのだった。2日間の学会中、当然ながら他の先生方と名刺交換をする機会が何度もあった。しかし、私の名刺はすべて鞄の中だ。
「すみません、実は鞄を落としてしまって名刺がなくて……」
気まずそうに白状すると、相手の先生方は一様に目を丸くし、「ええっ!? 学会どころじゃないですよ! 今すぐ探しに行かないと!」と、自分のことのように本気で大慌てしてくれた。
しかし、当の本人は至って冷静(という名の開き直り)だった。2日目の16時に学会の閉会式が終わると、私はすぐに大学病院の先生(後輩の女性医師)と合流した。そこから21時半過ぎまでの5時間半、私たちは一緒に広島の街を観光し、美味しい夕飯を食べた。
客観的に見れば、まるで普通のデートを楽しんでいるかのようだった。周りからは「学会どころじゃない」と本気で心配されていたが、私の頭の中の計算はこうだ。
(どうせ、真っ先に探しに行くべきあのクラブが空くのは夜の20時だしな。まぁ、それまで後輩と楽しく観光してよっと)
楽しい時間の終盤、事情を知った彼女は、
「先生、私も一緒に鞄を探しに行きますよ!」
と親切に言ってくれた。非常にありがたい申し出だったが、私は固辞した。なにせ、これから探しに行く場所は昨夜テキーラを煽り散らかした「クラブ」である。後輩の女性医師の前で、自分のクリーンなイメージを崩壊させるわけにはいかなかった。
21時30分過ぎに彼女と別れた後、私は一人で夜の広島の街へ繰り出し、記憶の糸口を求めて繁華街周辺のセブンイレブンを数件、しらみつぶしに回った。しかし、残念ながらセブンイレブンに私の鞄はなかった。万策尽き、時計の針が23時を過ぎた頃、私はようやく警察の派出所に駆け込んで遺失物届を出した。
しかし、無情にも残りの出張期間中、私の鞄が見つかることはなかった。だが、落ち込んでいても始まらない。身分証も金もないが、スマホが生きているおかげで最低限の連絡手段はホテルで確保できた。
「まあ、カードは止めたし、どうせ金がないなら、残りは楽しんだれ!」
そう思い切った私は、「手ぶらの旅行」を全力で満喫することにした。地元の人が勧めるお好み焼き屋を何軒も食べ歩き、厳島神社のある宮島へと足を延ばした。名物の穴子飯に、サクサクの牡蠣フライ、そして出来たて熱々のもみじ饅頭をハフハフと頬張る。さらに、宮島では家族へのお土産はもちろん、職場の外来や病棟のスタッフたちの分まで、手ぶらのまま大量のお土産を買い込んで着払いの手配をした。
実は、愛知で待つ妻に「鞄を落とした」とようやく打ち明けたのは、この出張4日目の午後16時49分、まさに宮島でお土産を選んでいる真っ最中のことだった。初日の夜に無くしてから丸3日間、私はすべてを隠し通して広島をエンジョイしていたのだ。
交番で遺失物届け出しました
— 好物はもみあげドラゴン (@d7v41910) June 29, 2026
落ち込んでもしゃあないので、次の日は宮島観光楽しんだったわ
なぜ言わなかったのかって? それは、初日からこんな大事件を報告したら、妻が心配して夜も寝られなくなってしまうからだ。我ながらなんて優しい夫なのだろう。お土産売り場で「かきめしの素」や「杓子せんべい」、そして「もみじ饅頭」の写真を妻に送り、
「6,000円で送料無料 これ買えば6,000円いく」
「もみじ饅頭とこれどっちがいい?」
などとLINEをしながら、私は新幹線の時間をギリギリまで引っ張り、広島発20時37分の「のぞみ106号」に滑り込んだ。財布はないのに、新幹線の発車ギリギリまで粘って観光地を遊び尽くした。本当は冷えたビールでもグッと煽りたかったが、流石に自重した。代わりに、寝過ごして東京まで運ばれてしまわないよう、全神経を集中させて気を張っていた。
22時34分、名古屋着を目前にした新幹線の中から、私は妻に再びLINEを送った。
「名古屋に22:54前後着くとのこと ✖✖急行23:10乗って、〇〇駅23:25頃着 駅でマナカの紛失申請するから、帰宅するの23:40くらいになります ごめんな」
財布はないが、スマートに帰宅ルートと紛失手続きの予定を計算して伝える私に、妻は「はい」「寝ないようにするわ」と、深夜にもかかわらず健気に待っていてくれたのだった。そうして愛知へ帰ってきてから、2週間以上が過ぎた頃だった。ある朝、私はあの日宮島で買った「酒は飲んでも呑まれるな」の柄杓キーホルダーを、出勤用の別の鞄に取り付けて家を出た。
すると、なんという運命の悪戯か。その鞄を持って職場に着いた、まさにその日の午前9時52分、私のスマートフォンが鳴った。画面に表示されたのは「広島中央警察署」の文字だった。
「あ、もしもし。落ちていた鞄が見つかりましたよ。中身もそのままで保管しています」
(本当に見つかった…… そんなことがあるんだ)
ラッキーと思っていた私に、警察官は事務的にこう続けた。
「つきましては、10月8日までこちらで預かっていますが……取りに来られますか?」
――行けるわけないやん。
心の中で即座にツッコミを入れながら、「すみません、着払いで送ってください」とお願いした。本当に鞄が見つかることは難い!!まさに「事実は小説より奇なり」とはこのことである。
新しい出会いに学びあり、かばんや財布なくすなど最高で最悪な広島出張で忘れない6月になりそう😁
— 好物はもみあげドラゴン (@d7v41910) June 29, 2026
***
現在、この「広島大紛失事件」は, 私の職場で欠かせない鉄板のネタになっている。仕事柄、落ち込んでいる患者さんと接することも多い。
ある日、落ち込んでいるおばあちゃんの患者さんにこの話を披露した。すると後日、そのお孫さんが目を丸くして病院にやってきた。
「おばあちゃん! 先生が広島でかばん落としたって!! 財布もカードもいっぱい落としたって!」
私が「いやあ、初日にクラブでテキーラとか飲みすぎちゃってさ。4時間以上飲んでたのがダメだったわ」と苦笑いしながら白状すると、患者さんは「そりゃあかんわ! けど命落とさなくてよかったねぇ」と声を上げて笑ってくれた。
横にいたお孫さんには「クラブ行ってたなら同情できん」とバッサリ斬り捨てられたが、院内には温かい笑い声が響いていた。まさに、災い転じて福となす。公私の学びだけでなく、人を励まし、笑顔にする最高の武器まで手に入った。
私にとって、文字通り「一生忘れない出張」だ。しかし、である。運よく着払いで鞄も戻ってきたというのに、私の「落とし物」はまだ終わっていなかった。
「……また落ちてる」
職場で、家で、あの夜に広島のセブンイレブンを必死に回った時みたいに、所構わず「汗』という落とし物をしている。夏の暑さで身体中からとめどなく汗が吹き出している。滴り落ちる汗。まさに、夏の落とし物。財布もカードも戻ってきたけれど、この落とし物だけは、夏が終わるまで止まりそうにない
【完】
☆書籍「書く人生のはじめかた」好評発売中です。
今回、ひとつレビューを紹介させていただきます。
この本には、長年にわたって第一線で活躍されてきた著者だからこそ語れる「ライターのリアル」が決断されています。
特に心に響いたのは、終盤の「マインド(お知らせ)」の部分です。長く活動していると、つい他人の活躍と自分を比べて落ちてしまうこともありますが、そんなときは自分とどう向き合い、どう状況を評価すべきか。
「仕事を長く続けるためのヒント」が詰まっています。「テクニックだけでなく、長く続けるための心を知りたい」という方に、ぜひ手に取ってほしい内容でした。
レビューは、そのべゆういちさんからいただきました。
とても素敵なレビューをありがとうございますーーー!
☆私も、創作大賞に応募しています。
