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納得してくれた母が、いちばんつらかった

母の退院が、延期になりました。

担当医からは
「申し訳ない。早く退院したかったのにね」
と、言われました。
その言葉に、こちらがどう返していいのか一瞬迷いましたが、仕方のないことだと思っています。医師も最善を尽くしてくれている。その事実は、頭ではよくわかっています。

それでも、胸の奥が少し重くなりました。

いちばんつらかったのは、退院を心待ちにしている母に、そのことを伝えることでした。
早く家に帰りたい。自分の布団で眠りたい。
そんな気持ちを知っているからこそ、言葉を切り出すのが苦しかったのです。

もしその場で言い出してしまったら、こちらが先に泣いてしまいそうで。
何度か深呼吸をして、なんとか気持ちを整えてから、タイミングを選んで伝えました。

母は、少し黙ってから「そうかい」と言い、状況を受け入れてくれました。
その姿が、あまりにも静かで、あまりにも大人で。
納得してくれたことが、ありがたい反面、余計にかわいそうに思えてしまいました。

本当は、がっかりしているはずなのに。
本当は、早く帰りたいはずなのに。

介護や看病をしていると、「正しい判断」と「つらい気持ち」が同時に存在する場面に、何度も出会います。
理屈では間違っていなくても、心は追いつかない。
それでも、今日も一歩ずつ、できることをやっていくしかありません。

泣かなかった自分を、今日は少しだけ褒めようと思います。
そして、母がまた笑って「帰れる日」を迎えられるように、静かに支えていこうと思います。

同じような気持ちを抱えている人がいたら、あなたも一人ではありません。
言葉にできない思いがあること自体が、ちゃんと向き合っている証拠なのだと思います。


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