見出し画像

製造業向け|声が大きい人の意見だけで、現場を決めていないか

会議で意見を聞くと、よく話す人がいる。

考えがまとまっている。
言い方もはっきりしている。
自分の困りごとを言葉にできる。
質問されても、その場で返せる。

そういう人の意見は、会議では強い。

反対に、あまり話さない人もいる。

何も考えていないわけではない。
困っていないわけでもない。
ただ、その場で言葉にするのが苦手だったり、今言っても仕方ないと思っていたりする。

現場を見ていると、この差はかなり大きい。

会議では、声が大きい人の意見が残りやすい。

でも、職場を決める時に、それだけでいいのだろうかと思うことがある。

話せる人の意見は、形になりやすい

改善会議でも、職場の困りごとを聞く場でも、すぐに意見を出せる人はいる。

「ここが使いにくいです」
「この置き場が悪いです」
「このルールは変えた方がいいです」
「こうすれば早くなります」

分かりやすい。

聞く側としても助かる。

何に困っているのかが見える。
どこを直せばいいのかも想像しやすい。
次の話にもつなげやすい。

だから、会議の場では採用されやすい。

ただ、そこに少し怖さがある。

話せる人の困りごとは見える。
話せない人の困りごとは、見えないまま残る。

結果として、会議でよく話す人の周りだけが改善されていくことがある。

これは、その人が悪いという話ではない。

意見を出せることは大事だ。
現場の困りごとを言葉にできる人は、むしろありがたい。

問題は、聞く側がそれを「現場全体の声」として扱ってしまうことだ。

黙っている人は、納得しているとは限らない

会議で反対意見が出ないと、なんとなく決まったように感じる。

「特に意見がなければ、この方向で進めます」

よくある流れだ。

ただ、現場ではこれが少し危ない。

黙っている人は、必ずしも納得しているわけではない。

言いにくいだけかもしれない。
説明がうまくできないだけかもしれない。
自分の担当ではないと思っているのかもしれない。
どうせ変わらないと思っているのかもしれない。

あるいは、頭の中では引っかかっていても、その場では整理できていないこともある。

会議が終わってから、

「あれ、実は少しやりにくいです」
「あのやり方だと、後工程が困ります」
「前にも似たようなことがありました」

と出てくることがある。

その時に、少し思う。

会議中に言ってほしかった、という気持ちはある。

でも同時に、会議中に言える形をこちらが作れていたのかとも思う。

声の大きさと、困りごとの大きさは違う

声が大きい人の意見は、目立つ。

ただ、目立つ意見が一番大きな問題とは限らない。

強く言える人の困りごとは、比較的表に出やすい。
本当に危ない困りごとは、むしろ黙っている人の手元に残っていることがある。

たとえば、段取りの中で毎回少しだけ迷っている作業。
後工程に渡す時、毎回確認し直している内容。
誰かが休むと急に分からなくなる仕事。
ルールにはなっていないけれど、特定の人が気を利かせて守っていること。

こういうものは、会議では出にくい。

大きなクレームになっていない。
今すぐ止まっているわけでもない。
誰かが黙って拾っている。

だから見えない。

でも、現場を弱くしているのは、こういう小さな引っかかりだったりする。

声が大きい人の意見だけを拾っていると、表に出る問題ばかり整って、静かに残っている問題が後回しになる。

意見を言う人を責めたいわけではない

ここで勘違いしたくないのは、発言する人が悪いわけではないということだ。

むしろ、意見を言ってくれる人は大事だ。

現場の中で、困っていることを言葉にできる人は貴重だと思う。
何も言われなければ、管理側は気づけないことも多い。

ただ、その人の意見が分かりやすいからといって、そこで止まってはいけない。

その意見は、その人だけの困りごとなのか。
同じ作業をしている人にも当てはまるのか。
前工程や後工程にも影響しているのか。
一時的な不満なのか、ずっと残っている問題なのか。

そこを見ないと、現場全体の判断にはならない。

意見は入口であって、結論ではない。

誰かの一言で決めるのではなく、その一言をきっかけに現場を見る。

本来は、そのくらいの距離感が必要なのだと思う。

会議で話せない人の情報をどう拾うか

全員が会議でうまく話せるわけではない。

特に、製造現場ではそう感じる。

普段は黙々と仕事をしている。
仕事は丁寧にやる。
困っていても、自分で何とかしてしまう。
質問されると「大丈夫です」と答える。

そういう人はいる。

でも、その人の仕事をよく見ると、細かい工夫をしていたりする。

置き方を少し変えている。
道具を取りやすい場所にずらしている。
間違えないように、自分だけの印をつけている。
後工程が困らないように、余計に確認している。

これは、その人が勝手にやっている小さな工夫に見える。

でも裏を返せば、そこに職場の困りごとが隠れている。

会議で出てこない声は、手元に出る。

言葉ではなく、作業の癖や動き方に出ることがある。

だから、現場を決める時には、会議で出た意見だけでなく、実際の動きも見たい。

声が大きい人の意見で決めると、実行時にズレる

会議の場では良く見えた案が、現場に戻るとうまくいかないことがある。

話していた人には合っている。
その人の作業では問題ない。
その部署では便利になる。

でも、別の人には合わない。
後工程がやりにくくなる。
他の時間帯では使いづらい。
経験の浅い人には分かりにくい。

こういうズレは、決めてから見えてくる。

理由は簡単で、決める時に見ていた範囲が狭かったからだ。

発言した人の周りだけを見て決めると、その外側がこぼれる。

現場は一人の作業だけでできていない。

前後の流れがある。
人によって経験も違う。
担当が変わることもある。
休みもある。

だから、現場を決める時には、誰が言ったかだけではなく、その決定がどこまで影響するかを見ないといけない。

黙っている人に無理に話させるだけでは足りない

では、黙っている人に発言させればいいのか。

それも少し違うと思っている。

もちろん、話しやすい空気は必要だ。

ただ、いきなり会議で意見を言ってくださいと言われても、出ない人は出ない。

その場でうまく話せる人ばかりではない。

だから、聞き方を少し変える必要がある。

「何か意見はありますか」

ではなく、

「この作業で毎回確認していることはありますか」
「やり直しが起きやすい場所はどこですか」
「人が休むと困る仕事はありますか」
「前工程から来た時に、毎回迷うことはありますか」

こう聞くと、少し出やすい。

大きな意見を求めるのではなく、普段の引っかかりを聞く。

その方が、現場の本当の困りごとに近づける気がする。

決める前に、静かな違和感も見る

声が大きい人の意見は、会議を前に進めてくれる。

それは間違いない。

でも、それだけで現場を決めると、見えないところに無理が残る。

黙っている人。
よく聞かないと出てこない困りごと。
作業の中に隠れている小さな工夫。
誰かが当たり前のように拾っている確認。

そういうものも、できれば見たい。

現場を決める時に必要なのは、発言量ではない。

その意見が、仕事の流れのどこに関係しているのか。
誰が困っているのか。
どこで止まっているのか。
放っておくと、あとで何が起きるのか。

そこを見ることだと思う。

声が大きい人の意見は大事だ。

ただ、それだけで現場全体を決めてしまうのは少し危ない。

会議で聞こえた声だけではなく、聞こえていない違和感も見る。

そうしないと、現場はまた別のところで詰まる。

本当に現場を良くしたいなら、よく話す人の意見と同じくらい、黙って仕事をしている人の手元も見た方がいい。

そこに、まだ言葉になっていない問題が残っていることがある。

関連記事

Kindle導線

現場の声を、感覚だけで終わらせず、判断できる形に変えていく考え方はこちらにまとめています。

『判断できる工場をつくるための現場改善入門|感覚・根性・属人化から抜け出し、数字と記録で現場を守る方法』

自己紹介

書いている人についてはこちらにまとめています。
自己紹介|現場で感じたことを、少しずつ言葉にしています

いいなと思ったら応援しよう!