見出し画像

自己コントロールを手放す勇気 〜依存症回復に必要なたったひとつのこと〜

依存症の回復で必ずといっていいほど出てくるキーワードがある。それは「コントロールを手放すこと」だ。

なぜかというと、依存症の人たちは総じて“コントロール中毒”だからだ。お酒を飲むのもやめたい、でも飲みたい、その矛盾をなんとか「自分の意志の力」で解決しようとする。スマホをやめたい、恋愛にのめり込みたくない、ギャンブルをしないと決める──そうやって頭で必死にコントロールしようとする。

でも残念ながら、それでうまくいった人はあまりいない。むしろ「自分の力でやめられるはず」という強迫的な思い込みが、回復を遠ざけてしまうのだ。

コントロール欲が生む苦しみ

依存症の人が陥りやすいのは、

  • 物質や行動を“完全に”コントロールしたい

  • 人間関係も相手も自分の思い通りに動かしたい

  • 将来を予測して、不安をすべて潰しておきたい

…という「全部が神様のように全部自分で取り仕切らなきゃ!」という発想。

けれど現実は、飲酒欲求も、人の心も、未来の展開も、自分の手には負えないことだらけ。そのギャップに苦しんで、さらに依存に逃げ込む。まさに負のループになってしまう。

私はどちらかというとコントロールの強い依存症タイプではないと思っていたが、苦しくなっている時、「できないことをコントロールしようとしている」という事実に気づいてハッとすることがある。

「ゆだねる」ってどういうこと?

回復には、手放すが大事。

ここで出てくるのが「手放す」「ゆだねる」という考え方。これは諦めや放棄ではない。むしろ勇気ある選択だ。

具体的に言うと──

  • 今日は一日だけ飲まないと決める

  • 自分ひとりで頑張らず、仲間や専門家の力を借りる

  • 「相手を変えよう」とする代わりに「自分の反応に気づく」

  • 不安や渇望の波が来たときは「波だ」と観察し、過ぎ去るのを待つ(衝動サーフィン)

こうした小さな「ゆだねる」行為の積み重ねが、回復の道をひらく。

え、ハイヤーパワー(汗)に委ねるって?

依存症回復のプログラムではよく「ハイヤーパワーに委ねる」という言葉が出てくる。聞き慣れない人からすると「え?宗教?」「神さま信じろってこと?」って身構えちゃうと思うけど、そうじゃないのだ、

ここで言うハイヤーパワーは「自分より大きな力」とか「自分ひとりではない存在」のこと。それは神でも宇宙でも、ご先祖さまでも、仲間のつながりでも、自然でも、なんなら「自分の中の健康な部分」でもいい。

要は「自分の意志の力だけでコントロールしようとするのをやめて、何か大きなものに少しゆだねてみる」ってことなのだ。

なぜ委ねるのが大切なのか

依存症の人たちは「自分でなんとかしなきゃ病」にかかっている。「強い意志でやめる」「自分の力で制御する」って思えば思うほど失敗して、自己嫌悪に陥る。

そのパターンから抜け出すには、「あ、もうこれは自分ひとりじゃ無理なんだ」って認める勇気が必要になる。そして「どうか助けてください」って委ねる。それがハイヤーパワーにゆだねる、ということ。

委ねるとラクになる

「助けてください」と口に出すだけで、不思議と肩の力が抜ける。今日は一日だけ飲まないと決めて、それをハイヤーパワーに預ける。スマホが触りたくてたまらないときも「どうかこの渇望をやり過ごせますように」と祈る。

そうやって“少し委ねる”と、自分ひとりで戦ってる感覚から解放される。そして結果的に、続けやすくなるのだ。

*もちろん、ただ手放そうとするだけでは、中等度以上の依存症からの回復に関しては、難しい場合もあるので、その場合は適切な医療機関やカウンセリングが必要になる。

手放してみると起こること

実際にコントロールを手放すと、不思議なことが起きる。人に頼れるようになって、人間関係がラクになる。「自分の思い通りじゃない展開」でも、意外と大丈夫だったりする。強迫的に抑え込まなくても、欲求はやがて波のように引いていく。

コントロールしようと必死に握りしめていたときよりも、むしろ穏やかで自由な時間が増えていくのだ。「自由」それを一番感じるかもしれない。

まとめ:コントロールを手放すのは“負け”じゃない

依存症の回復で学ぶのは、「自分だけの力には限界がある」ということ。そして、依存症者は、「意地でも全部自分の力でやろうとする人々」である。

だから戦略的に、自らの手綱をゆるめて、手放してみる。それは無力感ではなく、新しいスタート地点だ。

コントロールを手放すことは、自分を守る力であり、回復の入り口。依存症の人たちは、強さではなく“ゆだねる勇気”で生き延びていく。

今日もすべてを手放さなくてもいい。ただひとつ、小さなコントロールをやめてみる──それが回復の第一歩になるのだ。

どうしてもタバコをやめたい・・・でもうまくいかない。もうどうしようもないので、自分ではやめられない!と白旗をあげる。ニコチンパッチに頼る、周囲の人に宣言する、今日だけ、1週間だけと短い期間に区切る、大きな力に頼って祈る「どうかタバコがやめられますように。そのための方法を教えてください」・・そうしたことでやめられている期間が長くなるのだから不思議だ。

自分で自分を苦しめる自己コントロールの世界から、大きな力に頼って、大きなより良い方に向かう人生の波に委ねる感じ。これをしていくことが回復に開かれていくという感覚なのだ。


いいなと思ったら応援しよう!

小林亜希子@NPO法人マインドフルネス心理臨床センター よろしければ応援お願いします! いただいたチップはクリエイターとしての活動費に使わせていただきます!