見出し画像

MVP ARCHIVE HISTORY|Energy : Energy History SPECIAL 16 : Nuclear Fusion Reactor / 核融合炉

Nuclear Fusion Reactor / 核融合炉

核融合炉

太陽は、約46億年もの間、核融合( Nuclear Fusion )によって膨大なエネルギーを放ち続けている。同じ原理を利用して発電を行おうとする装置が、Nuclear Fusion Reactor( 核融合炉 )である。

現在の原子力発電所がウランなどの重い原子を分裂させる「 核分裂 」を利用しているのに対し、核融合炉 は軽い原子同士を融合させ、その際に生まれるエネルギーを利用する。

核融合とは

核融合は、軽い原子核同士が結び付き、より重い原子核へ変化するとき、一部の質量がエネルギーへ変換される。
この現象は アインシュタイン の有名な式、
E = mc²
で表されるように、わずかな質量から非常に大きなエネルギーを生み出す。

太陽では水素同士が段階的に融合し、最終的にヘリウムが作られている。
地上では、より実現しやすい 重水素( Deuterium )三重水素( Tritium )の 核融合反応 が主な研究対象となっている。

なぜ超高温が必要なのか

原子核はどちらも正の電荷を持つため、互いに強く反発する。
この反発を乗り越えて 核融合 を起こすには、非常に高速で衝突させる必要がある。

そのため燃料は約1億℃以上という超高温まで加熱される。
この温度では物質は固体・液体・気体ではなく、電子と原子核が分離したプラズマ状態になり、核融合炉 は、この高温プラズマを長時間安定して閉じ込めることが最大の課題となっている。

核融合炉の種類

1億℃の電気を帯びているプラズマをそのまま扱うことができないため、強力な磁場を利用し運動を制御する。

トカマク型
現在の主流で代表的な方式。
ドーナツ状の真空容器の周囲へ巨大な超電導磁石を配置し、磁場によってプラズマを浮かせた状態で閉じ込める。
現在建設が進められている ITER もこの方式を採用している。

ヘリカル型( ステラレーター型 )
もう一つの代表例で、複雑な磁場構造によってより安定したプラズマ閉じ込めを目指している。
日本の大型ヘリカル装置( LHD )などで研究が行われている。

レーザー核融合 ( 慣性閉じ込め方式 )
多数の高出力レーザーを小さな燃料ペレットへ同時照射し、一瞬だけ核融合を起こす方式。

燃料

核融合炉 で最も有望とされる燃料
・重水素(Deuterium)
・三重水素(Tritium)

重水素は海水中に比較的豊富に存在している。
一方、三重水素は自然界にはほとんど存在しないため、炉内でリチウムから生成する方法が研究されている。
燃料資源が比較的豊富であることも、核融合炉 が期待される理由の一つである。

核融合炉の利点

核融合炉 には、次のような特徴が期待されている。
・発電時に二酸化炭素をほとんど排出しない
・燃料資源が比較的豊富
核融合炉 のような連鎖反応を利用しない
・長寿命高レベル 放射性廃棄物 が比較的少ないと期待されている

これらの特徴から、将来の低炭素エネルギー源として世界各国で研究が進められている。

実用化への課題

核融合炉 は非常に有望な技術である一方、実用化には多くの課題が残されている。
・超高温プラズマを長時間安定して維持すること。
・高エネルギー中性子に耐えられる材料を開発すること。
・三重水素を効率よく生産・回収すること。

そして、発電所として経済的に成立することも重要である。
現在は研究炉や実験炉でこれらの課題の解決が進められている。

ITER と未来

核融合研究を代表する国際プロジェクトが ITER( International Thermonuclear Experimental Reactor )である。
ITER はフランスで建設が進められており、日本、欧州、アメリカ、中国、韓国、インド、ロシアなどが参加している。

ITER の目的は、核融合 によって投入エネルギーを上回る熱エネルギーを長時間取り出せるかを実証することである。
ITER の次の段階として、実際に発電を行う実証炉( DEMO )の計画も検討されている。

太陽を地上へ

核融合炉 は、「 人工の太陽 」と呼ばれることがある。
しかし、その目的は太陽を再現することではなく、太陽で起きている核融合反応を地上で安全かつ制御可能な形で利用することである。

超高温プラズマ、超電導磁石、耐熱材料、精密制御技術など、多くの最先端技術が結集する巨大プロジェクトでもある。
実用化にはなお時間が必要と考えられているが、将来のエネルギー供給を支える可能性を持つ技術として研究が続けられている。

Archive Point

Nuclear Fusion Reactor は、軽い原子核を融合させてエネルギーを取り出す発電技術である。

現在の 核分裂炉 とは異なり、重水素と三重水素の核融合反応を利用し、約1億℃のプラズマを磁場で閉じ込めることで発電を目指している。

実用化にはプラズマ制御、材料開発、燃料供給など多くの課題が残されているが、低炭素で将来性のあるエネルギー技術として世界各国で研究が進められている。


いいなと思ったら応援しよう!