MVP ARCHIVE HISTORY|Energy : Energy History SPECIAL 05 : Nuclear Fission / 核分裂 - 原子核が分裂エネルギーと中性子を生みだす


核分裂
原子の中心には、原子核があり、その大きさは原子全体と比べて極めて小さく、原子の質量のほとんどは、この小さな領域に集まっている。
ウランのような重い原子核へ中性子が入り込むと、原子核は不安定になり、二つほどの比較的軽い原子核へ分裂することがある。
その瞬間、熱へ変わる大きなエネルギーと、新たな中性子が放出される。
この現象が、Nuclear Fission( 核分裂 )である。
重い原子核が分かれる
原子核は、陽子と中性子によって構成され、陽子は正の電荷を持つため、互いに反発する反面、原子核の内部では核力が働き、陽子と中性子を結びつけている。
ウランのような重い原子核では、多くの粒子を一つに保つためのバランスが複雑で、ウラン235の原子核が中性子を吸収すると、一時的にウラン236の励起状態となり、原子核が大きく変形する。
変形が進むと一つの原子核として形を保てなくなり、二つほどの 核分裂 生成物へ分かれ、通常は二個から三個ほどの中性子と、大きなエネルギーが放出される。
エネルギーはどこから現れるのか
核分裂 の前後で、物質が完全に消えるわけではない。
しかし、分裂後の原子核と放出された中性子の質量を合計すると、分裂前の原子核よりわずかに小さくなるこの質量の差が、アインシュタイン の質量とエネルギーの関係に従ってエネルギーへ変わる。
一回の 核分裂 で失われる質量は極めて小く、原子一個あたりで放出されるエネルギーは、通常の化学反応と比べて非常に大きい。
膨大な数の原子核が 核分裂 を起こすと、その差は大量の熱として現れ、核燃料が少ない量でも長期間にわたって大きなエネルギーを生み出せる理由は、ここにある。
核分裂生成物
核分裂 によって生まれる二つの原子核は、同じ種類になるわけではなく、さまざまな組み合わせがあり、セシウム、ストロンチウム、ヨウ素など、多くの種類の 核分裂生成物 が生じる。
これらの原子核の多くは中性子と陽子のバランスが不安定で、放射性崩壊を繰り返し、放射線と熱う放出しながらより安定した原子核へ変化していく。
原子炉を停止して 核分裂 の連鎖を止めたあとも燃料が熱を出し続けるのは、主に 核分裂生成物 の放射性崩壊によるものである。
この熱は崩壊熱と呼ばれ、原子炉停止後も冷却を続ける必要がある理由となっている。
中性子が次の核分裂を起こす
一つのウラン235原子核が 核分裂 すると、新たな中性子が放出される。
その中性子が別のウラン235原子核へ吸収されると、次の 核分裂 が起こる。そこからさらに中性子が放出され、別の原子核へ進んでいく。
この反応が連続する現象が、核分裂連鎖反応 である。
すべての中性子が次の 核分裂 を起こすわけではない。
燃料の外へ逃げる中性子もあれば、核分裂 を起こさずに別の物質へ吸収される中性子もある。それでも、一回の 核分裂 から次の 核分裂 を維持するのに十分な中性子が残れば、反応は継続する。
臨界という状態
連鎖反応の状態は、世代ごとの中性子の数によって変り、次の 核分裂 を起こす中性子が減っていく状態を未臨界という。
一つの世代から次の世代へ、反応を維持する中性子の数がほぼ一定になる状態が臨界、反応に使われる中性子が世代ごとに増える状態は超臨界と呼ばれる。
原子力発電所の原子炉は、連鎖反応が急速に増大しないように調整しながら、ほぼ一定の出力を保つ臨界状態で運転される。
ここでいう臨界は、「 危険な限界を越えた 」というわけではなく、核分裂連鎖反応 が安定して継続している状態を示す、原子炉物理の用語である。
中性子を遅くする
核分裂 で放出された直後の中性子は、高い速度を持っている。
多くの原子炉では、この中性子を減速材と呼ばれる水などの物質へ繰り返し衝突させ、速度を下げてからウラン235へ吸収させる。
軽水炉では、通常の水が冷却材であると同時に減速材としても働いている。
中性子を止めるのではなく、核分裂 を起こしやすい速度帯まで緩やかにする事によって、限られた量のウラン235でも連鎖反応を維持しやすくなる。
制御棒が反応を調整する
原子炉の中には、中性子を吸収しやすい物質でつくられた 制御棒 が配置されており、深く挿入すると 核分裂 に使われる中性子が多く吸収され、反応は弱くなる。
反対に 制御棒 を引き抜くと、次の 核分裂 へ進む中性子が増え、出力が上がる。
原子炉を停止するときには制御棒を挿入し、連鎖反応を維持できない未臨界の状態へ移行させ、核分裂 は止まるが崩壊熱は残る。
そのため原子炉では、反応を止める仕組みと、停止後の熱を取り除く仕組みの両方が必要になる。
核分裂から電気へ
核分裂 によって最初に生まれるのは、電気ではなく熱である。
核分裂 生成物は大きな運動エネルギーを持って周囲の燃料へ衝突し、その運動が熱へと変わり、この熱が冷却材へ伝わり、水を加熱して蒸気をつくる。
蒸気はタービンを回し、タービンにつながれた発電機が回転を電気へ変換する。
核分裂 から始まる変換は、「 原子核のエネルギー → 熱 → 蒸気の運動 → タービンの回転 → 電気 」という流れであり、原子力発電も、発電機を回して電気を生み出すという点では、火力発電と共通する構造を持っている。
核分裂の発見
1938年、ドイツの研究者 オットー・ハーン と フリッツ・シュトラスマン は、ウランへ中性子を照射する実験から、予想外の軽い元素であるバリウムが生じていることを確認、この結果を物理的に解釈したのが、リーゼ・マイトナーとオットー・フリッシュである。
二人は、ウランの原子核が二つに分裂し、そのとき大きなエネルギーが放出されると考え、この現象を、生物の細胞が分かれる現象になぞらえ、Fission と名づけた。
原子核が変化することは知られていたが、一つの重い原子核が二つへ分かれ、大きなエネルギーを放出するという理解は、原子核物理学の新しい時代を開いた。
二つの利用へ
核分裂連鎖反応 が発見されると、そのエネルギーをどのように利用するかが大きな課題となった。
原子炉 : 中性子の増加を抑制反応を継続、熱を時間をかけて取り出す。
核兵器 : 極短時間に急速な連鎖反応を起こし、エネルギーを一度に放出。
どちらも 核分裂 という同じ物理現象に基づいてはいるが、核燃料の構成、装置の構造、反応の進み方、目的は大きく異なる。
核分裂 の発見は、新しいエネルギー利用の可能性とともに、その扱い方をめぐる重い課題も人類にもたらした。
原子炉に残る物質
核分裂 が進むと、燃料の内部には 核分裂 生成物が蓄積していく。
また、ウラン238が中性子を吸収することで、プルトニウムなど別の重い原子核がつくられることもある。
使用後の核燃料には、まだ 核分裂 していないウラン、生成されたプルトニウム、さまざまな 核分裂 生成物が含まれている。
それぞれの放射能や半減期、発生する熱は異なる。
そのため、使用済燃料は冷却しながら保管され、長期的な管理や処分、再処理を含めた取り扱いが必要になり、反応によって生まれた物質を、その後どのように管理するかまで含めて、核エネルギー利用の全体が構成されている。
Archive Point
Nuclear Fission は、ウランなどの重い原子核が二つほどの軽い原子核へ分裂し、エネルギーと中性子を放出する現象である。
放出された中性子が次の 核分裂 を起こすことで、連鎖反応が続いていく。
原子炉は、この連鎖反応を制御しながら維持し、核分裂 によって生まれる熱を発電へ利用している。
一つの原子核で起きる変化は極めて小さい。
しかし、膨大な数の原子核が同じ現象を繰り返すとき、その変化は発電所を動かすほどの熱となる。
核分裂 は、物質の内部に存在するエネルギーの大きさを、人類が初めて大規模に利用した現象の一つである。

