神のデス・ギフト第3話~腐りかけた俺が、ロスで再発酵した。脳がマヒしていれば何も怖くなかった
これは、神から贈られた“死にかけるほどのギフト”の開封記録。 地獄を笑い、整えを始めた男の実話。

会社を取締役によって無理やり辞めさせられた日から数日
あのエクソ爺のお払いという名の冤罪の懲戒処分から数日オレは、何もしなかった。
いやできなかった。
何をするにも無気力だった。食欲もなく性欲もなくテレビすらも見ないゲームもしない。
ただ布団に横になってボーっと窓の外を眺めるか、そのまま寝るか。また起きても同じ繰り返し。
つまらないとおも思わなくなったある日、気付いた!
灯台下暗しだ。

ネズミが出る最高のアパートの一階部分がものすごく小さな書店だったのだ。
私は、パジャマで書店へ出かけた。(外に出たわけではないからパジャマでいいだろう)
本を読むことにしたのだ。
ちなみに、外に出たり、テレビを見たり、ネットを見たりするのを選ばなかったのは情報の洪水は今の俺にはいらないと思ったからだ。
本なら、インプット一方通行、その世界から出ないし、想像力だけが外に出る。安心して冒険に出れるからだ。
暇だったから複数巻で続いている長編を読もうと思った。さらに、人生とん挫していたから、ノンフィクションの物を読んで作者の気持ちも知りたいなと思った。
これが数日後の俺の人生を変えた!
神のこの気まぐれの手に余るプレゼントはどうやら「人生を彩る」良い方のプレゼントだったようだ。

はじめてのノンフィクション長編はあの名作だった
沢木幸太郎が書いた深夜特急
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B7%B1%E5%A4%9C%E7%89%B9%E6%80%A5
内容はリンクを読んでほしいが、俺と似ている部分があった。
26歳の時に書いたこと、何をするかわからなくなっている事、複数の条件が今の俺にあっていた。共鳴した。
文庫本で6冊あるので1冊買って読んだ。(家は書店の真上。つまり天井の上)
昼すぎに購入して18時30分に読み終えた。
おもしろい・・・・
急いで「畳の下の書店」へ行き7時閉店に間に合い2巻と3巻を同時に買った。
一晩で2冊は読めるだろうと思ったからだ。
どうせ俺は無職だ。眠くなったら朝から夜まで寝ればいいんだから。天国に感じた。
さて、予想通り朝までに2冊読んでしまった。残り3冊は、畳の下の書店に行き一気に買った。
読み終えたのはその日の夜まで読み続け朝日と同時に読み終えていた。
つまり40時間ぶっ続けで読んで、およそ1500ページを読んでしまった。味わいながら。
面白かったし、実話なので「やろうと思えばできる話」という刺激もあった。
簡単に言うと、お金もないライターがネタを探して、香港から大陸を横断してロンドンまで行くという話。紀行物のノンフィクションの超名作だ。(今でも俺のバイブルとなっている)
読み終えた時は過去数年続けていた得意の超寝不足。しかし、なぜか満足感と勇気に満たされていた。本を読み続け、睡眠不足だった・・・

翌日のオレは早かった。何もかも。疲れと寝不足で判断をする脳が発酵していたしていたからだ
寝不足のオレは、考えるより行動が早かった。恐ろしく早かった。
いや、考えるなんて出来ない脳だった。本能だけだった。
なんと朝10時になると同時に住んでいる町の「JTB」に居たのだ!
オレ「今日か、明日にロサンゼルスに行きたいんですが、いけますか?」
(ロスは大谷翔平ではない時代、野茂英雄の時代。野茂に憧れてたセレクトだ)
店員「え!?今日?」
無いだろうという顔をして、とりあえず検索しているようだった。
俺はこの無鉄砲さをカッコいいとさえ感じていた。もうノンフィクション作家の気分だ。
店員「今日の夕方の便なら1席あいています」
心の声「うぉぉぉぉ」
店員「航空券の他にホテルも取りますか?」
オレ「はいお願いします。」
店員「何泊ですか?帰りの航空券も購入しますか?」
オレはそこまでの計算はしていなかった。ふつうは何泊するか先に決めるのが通常の事だろう。
焦ったオレは、こう言った。
「帰りは自力で航空券買って帰ります。行きのチケットだけお願いします。ホテルは現地で延長するのでとりあえず5泊くらい取ってください」
購入できた。
まあ何とかなるだろう。行ってしまえばの精神だった。
「最後にホテルのランクですがSからCまであります。どれにしますか」
一応見てみて驚いた。Sランクの1泊でCランクなら5泊できるではないか!
「Cランクでお願いします」
ホテルは安かった。なんと素泊まり一泊2000円だった。ロスのダウンタウンだぞ、信じられない!
安易な計算で依頼を出したことは、この時は気付いていなかった。
それよりも深夜特急の熱が冷めやらぬ前に決断できた喜びで胸がいっぱいだった。
もう引き返せない感覚が良い意味で痺れた。
さて、成田空港を離陸するまで7時間。成田エクスプレスに乗って空港内で色々すると考えると自由時間は4時間か。
時間に追われることに慣れている俺は、自分が決めた時間に追われる気分に興奮していた。
腐りかけた自分が、深夜特急という発酵菌に触れて、ロスという異国の空気で再び泡立ち始めていた。

行くと決まれば急いで準備だ!驚きの荷物!
腐ったものは、捨てるか、発酵させるか。
俺は後者を選んだ。
荷物と思考の話だ。シンプルに整理し、不要なものは邪魔になるから排除しよう。
そう自分と会話しながら、JTBから自宅への道を歩いていた。
今言うが、オレは海外に行ったことが無い!初体験で2徹夜で行くのだ。
何が必要かわからない。分からなくてもいいやと思ってもいた。それが旅だ。観光ではない。
ふと、銀行が目についた。
オレ「そうだ!アメリカのお金はドルだ!両替せねば」
このレベルのオレの頭の発酵具合だった。
俺は財布を見た。なんと10万円入っている。これは、前回の職場で取締役から罪を着せられて退職させられた退職金。少なすぎる。
ちょっとむかつきながら、全部10万円をドルに換金した。
大体600ドルになった。手数料の高さと、なんか分からないけどレートよりかなり安くなっている。
まぁどうでもよかった。俺にとって10万円(600ドル)は大金だったからだ。安心だ。
何日もつかなど、俺は考えてもいなかった。
貧乏な俺は使いきれるか心配していたくらいだ。
家に着いた。
飛行機の離陸まで6時間前頃だろう。
時間が無いのは分かっていたが俺はウキウキしていた。初めての海外だ。
しかも一人旅。深夜特急を読み終えて6時間もたっていないのに、行の飛行機のチケットもホテルもドル紙幣も持っている。
もともと家で過ごしていない俺の荷物は少ない。なんせ4畳半の部屋だし。
荷物は決まっていた。
①パンツ5枚 洗って使いまわせる
②ロサンゼルスの旅行本 さっき帰り道で買った地球の歩き方
③和英辞典 言いたい単語が分かればイケる!まだPHSの時代はスマホはない
④財布A 600ドルが入っている
⑤財布B アメリカ人に絡まれたときに提出する財布(ダミーだ!)
これで全てだ。
ナップサックに入れ、極小にした。
海外にそれだけかと、おかしいなんて思わないでほしい。
未知の海外に行くのに空港で荷物を受け取るリスクを回避したのだ。発酵が進んでいる俺には十分ではないか。
リスク回避はそれだけではない。
ホテルに置きっぱなしだと盗難されるかもしれない。常に全所持品を持ち運びたかった。
バスケットボールより小さな荷物だった。
必要に迫られれば、現地で買えばいいのだ。
今まで地獄生活を続けていた俺にはこんなサバイバルはイージーでありファンタスティックだった。と思っていたのかもしれない。
荷物の用意は1時間で終わった。
離陸まで残り時間5時間だった。
急ぎ新宿まで小田急線で向かい、成田空港行きの電車に乗った。
すでにこの時、俺は沢木幸太郎26歳の気分だった。
当時の電車は喫煙OKであったため、俺は窓の外を眺めながら窓に映る煙草を吸いブラックコーヒーを飲む自分に酔いしれた。
発酵した脳は糸を引き始め、異国へ向かう車窓で溶け合い始めていたのだ。
窓の風景はだんだんと畑だけの広がった風景に代わっていった。

無事空港に付き、チェックインは簡単だった。
呆気なかった。そんなものか。
しかし、出国ゲートを入った瞬間に成田空港は異次元だった。
なんというか、空気間が外国ではないか!
「なんだ!免税店とは!安いな!!!」
そう。税金がかかっていないのだ。そんなことも知らなかった。
俺は、ドルとは別に持っていた円で煙草を変えるだけ買った。
金は無いけど、煙は欲しい。
アメリカでカッコつけたかったのだ。それも俺の風景だと。
さて、飛行機に乗る前にドトールを見つけた。角の所にある。
知っている人は多いだろう。買った人も多いだろう。今あるのだろうか?20年たって。
ドトール好きの俺はそれを記念に買い喫煙室で外人の中で飲んで味わった。
すでに冒険は始まっていた。
「ワッチュア、ネーム?」
「アーユー、フロンム?」
危ない。ついノリノリで声をかけるところだった。
やばい日本人になる。
はやる気持ちを抑え、飛行機に乗り込んだ。
席に着いた俺の隣には、外国人だった!(当たり前だろ!)
何か話さねば。そんな脅迫めいた声が心から沸き上がった。
心「話さないと旅じゃねーぜー」
心「早速思い出作ろーぜー」
心「旅は道連れ、世は情け」
心「準備運動しよーじゃないか」
俺は俺の声に言い返せなかった。なんせ40時間寝ていない。
俺はドリンクが無料と知って、景気づけにビールをもらい一気飲み。もう一缶もらい一気飲み。最後にワインを飲んだ。
貧乏な俺は酔いしれた。タダか。そして本当に酔った。
・・・
気が付いたらロサンゼルスの空港だった。そう通称LAX(ラックス)。
12時間寝たのだ。
結局会話しなかったが、エネルギーは回復した。まぁ良いだろう。
しかし!
飛行機を降りた俺はアメリカのセキュリティーの重さに驚くことになる。
今思えば、あのロサンゼルスの脳の発酵の旅は—— 神のムダに余るプレゼントだったのかもしれない。
第3話完
次回予告
飛行機を降り、出国手続きをしたら出るまで外国人は全員1時間かかる。それは序曲だったのだった。ロスの空気は、俺の脳をさらに発酵させた。 600ドルで何日生きるか。 プランなし、言語不安、でも整えは進む。
神のムダに余るプレゼントはまだ開封途中だった。

この話は私の事実に基づいた実話です。
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