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痛みの正式ルーティーン

深夜1時。
私はパソコンの前で、
幼少期の思い出に
ついて考えていました。

原因は、AIです。
いや。正確には、
観照人さんの記事です。

観照人さんの記事を
いくつか読んでいたら、
幼少期のことを鮮明に
思い出しました。

私の幼少期の痛い思い出は、
主に二つでできています。

一つは、腕が抜けた事件。

夏のお泊まり保育を間近に控え、
幼稚園全体がいつもより
浮き足立っていた頃。

友達と遊んでいた私は、
腕を引っ張られました。

痛つっ!


「離して」と言いました。
しかし、同じくテンションが
上がり気味だった友達は、
私がおちょけていると
勘違いしたのです。

友人は引っ張り続け、
そして、腕は抜けました。

私は号泣しながら、
幼稚園の先生の車で病院へ
連行されました。

柔道整復師の先生は、
ちょっと痛いけど、
がんばろうね
みたいなことを言いました。

これ以上に痛いのでしたら、
結構です。

私は立ち上がろうとしました。

しかし、看護婦さんらしき
女性と幼稚園の先生が
ガッチリ押さえにかかります。
そして、いつの間にか
現れた母までもが、私が
立ち上がるのを阻止します。

そして、先生は、私の
ブラーンとなった手を
引っ張り、そのまま
大きく持ち上げて
ぐるっと回します。

つっっ!

私は、ぎゅっと目を
つぶりました。
また涙がボロボロと
こぼれ落ちます。
そうして、抜けた腕は、
はめられました。

はめてもらった瞬間、
それまでの痛みが
嘘のように消えました。

そう、一瞬です。

ただし、抜けたときの痛さと、
はめられたときの痛さは、
思い出すだけで、体の中が
きゅーっとなります。

しかも、それで終わりでは
ありません。

一度抜けた腕は癖になり、
その後、何度も簡単に
抜けるようになったのです。

抜ける。
悶絶する。
先生にがんばろうね
と言われる。
抵抗する。
はめられる。
治る。

ここまでが、
正式なルーティーンです。

そんな私が、腕の痛みに
匹敵するかもしれないもの
として覚えているのが、
レゴブロックです。

私は、何かを作るのが
好きでした。
レゴでもよく遊びました。
特に、小さいレゴです。

細かい部品を組み合わせて、
家なのか乗り物なのか、
よくわからないものを作る。
そして満足する。

問題は、作り終わったあとでした。

小さなレゴは、こちらが油断すると、
存在を消します。

そして、裸足で近づいた瞬間だけ、
全力で自己主張します。

踏んだ瞬間、声は出ません。
足の裏から頭のてっぺんまで、
一気に何かが突き抜けます。

つつっ!

すると、私の中で、
沸々としたマグマの
ようなものが発生します。

そして、まず、投げます。

踏む。
悶絶する。
頭に血がのぼる。
投げる。

ここまでが、
正式なルーティーンです。

なお、片づけは、
ルーティーンに
含まれていません。

投げたレゴは、視界から消え、
別の場所へ移動します。
その後、親に片付けなさいと
怒られて、しぶしぶ片付けた
ときには取り残されます。
そして、数日後、また踏みます。

こうして、レゴの陣地だけが
広がっていくのです。

私は、AIに聞きました。
「なぜ、人類はレゴブロックを
踏んでしまうのかな」

AIは答えました。
「レゴブロックは小さく、
床の色に紛れやすいため、
視界に入りにくいからです。
また、子どもは遊びに集中すると、
片づけを忘れてしまうことが
あります」

そうではない。
「私が聞きたいのは、なぜ
人類は同じ悲劇を繰り返して
いるのかってこと」

AIは、少し考えました。
「レゴブロックは、創造力や
空間認識力を育てる玩具として、
世界中で長く親しまれています。
遊び終わったら、決められた
場所に片づける習慣をつける
ことが大切です」

そんな、教科書みたいな
答えを求めているのではない。
「そもそも、子どもの
おもちゃでしょ。なぜ、
あれほど痛いのかね」

AIは答えました。
「レゴブロックは硬い樹脂で
作られており、角や突起部分に
体重が集中するため、足の裏に
強い圧力がかかります。
小さい面積に全体重が乗る
のです」

怒りが最高潮になるのも
無理はない。
AIの話を聞いて、私は
自分を正当化しました。

「未桜さん、レゴブロック
そのものに、人を傷つける
意図はありません。
悪意もありません」

AIは人間の悪意の話まで
始めそうになったので、
そこで止めました。
「じゃあ、レゴって、
そもそも何なのかな」

AIは少し考えました。
「レゴブロックは、置かれる
場所によって役割が変わるもの
なのかもしれません。
机の上では知育玩具ですが、
床の上では対人地雷に
なり得ます」

でも、その瞬間。
私はまた一つ、
精神的無敵の人になりました。

小さいものは、小さい
影響しか与えない。

そんな決まりは、
どこにもありません。

無敵だ。
最強だ。

これから職場で、
小さな問題を
「たいしたことではない」
と言われても、私は動じません。

大きさだけで判断する人には、
裸足でレゴの上を歩いて
もらいます。

おそらく、一歩で考えが
変わる。

ただし、踏んだレゴを
拾って片づけるかどうかは、
別問題です。


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