押入れタイムカプセル(003)
盧溝橋事件1年後の新聞広告
※本稿に掲載されている広告画像は、昭和13年発行の新聞の一部です。掲載企業名は画像により明示されていますが、本記事はその企業の現在の活動とは無関係であり、批判・風刺・揶揄の意図は一切ありません。当時の文化や感性を今に伝える「歴史資料」として紹介しています。この点をご理解いただいた上でご覧下さい。
昭和13年(1938年)、ある若者が新聞記事を切り抜いてノートに貼っていた。 この若者は私の祖父の弟である。
このスクラップブックの存在を知ったのは家の押入れを整理していた時のこと。表紙も何もない地味な古いノート。そこに戦争、広告、科学、映画、スポーツ競技… じつに多様な記事が丁寧に貼られていた。
1ページ目には「昭和九年六月」とだけ書かれている。記事の内容には明確なテーマも脈絡もないが、そこには「当時の社会の空気」が詰まっていた。
「防共聖戦壹周年」の広告
これは有名な口中清涼薬(医薬部外品)の広告である。

上部に大きく掲げられているのは「防共聖戦壹周年」という円形の図版。1937年に起きた「盧溝橋事件」は当時「北支事変」と呼ばれることが多かったが、この広告では「防共聖戦」になっている。日章旗、旭日旗、鉤十字、イタリアのファシスト党章が円状に配置され、「戦争」という言葉が、日常の生活圏と完全に結びついていたことを如実に物語っている。
「断然!超非常事態に即されよ」といった強いメッセージ。「防共容器」「体育容器」などのネーミング。五十銭という価格表記も時代を感じさせる。この広告が示すのは戦時体制が一般家庭の健康習慣や常備薬の選定にまで及んでいたという静かなる浸透だ。
現代も存続する優良企業がこのように「国防」と結びつけられていた時代があったという事実に驚いた。
※繰り返しになりますが、本記事に掲載の広告画像は1938年当時の新聞記事の一部をそのまま紹介するものであり、掲載企業の現在の活動・姿勢とは一切関係ありません。あくまで歴史資料としての意義を御汲取り頂ければ幸いです。
※この記事は6/13日に改訂しました。1934年(昭和9年)6月にスクラップ帳が始まった事が前面に出た書き方でしたが、この広告は1938年のもので、それが分かりやすい書き方に変えました。ご了承ください。
