押入れタイムカプセル(006)
🏯 満洲で暮らす兄(叔父)からの便り(1937年)
📮 康徳4年11月4日(昭和12年)
📍 満洲国熱河省(ねっかしょう)承徳 → 神奈川県三浦郡三崎町花暮
✉ 差出人:筆者の大叔父(25歳)
📬 宛先:大叔父の異母妹Y(9歳)と甥T(7歳)
🖼 表面:
絵葉書には、清朝皇帝の避暑地として名高い「承徳離宮」(避暑山荘)の風景が描かれている。木々の間に東屋が立ち、鹿が水辺に遊ぶ──まるで絵画のような、雄大華麗な庭園の一角だ。
タイトルにはこうある:「THE BEAUTIFUL GARDEN-PLOT CHENGTE DETACHED PALACE, CHENGTE」(雄大華麗なる承徳離宮内苑の絶景)
ここでは熱河省承徳について少しですが深掘りします。
🌤 気候:温暖な避暑地
避暑地としての側面:
熱河省の省都、承徳は清朝時代から「北京の酷暑を避ける夏の宮廷」として利用されました。これは標高がやや高く(400〜600m)、朝夕の気温差が大きく、夏は涼しいという地形の影響がありました。
冬は寒冷だが、満洲北部よりは温暖:
満洲北部(黒竜江省やハルビン)に比べ冬の気温が若干高く、積雪も少なめ。緯度は青森市と同程度でも、内陸性気候のため夏は暑く、冬は冷えるが、北部(たとえばハルビンやチチハル)ほどではない。

💌 本文(手紙)
Yちゃん、この間は御便りありがとう。
兄ちゃんはYちゃんはまだ赤ん坊だとばかり思っていたら、
もうあんなに立派な御手紙が書けるようになったので、とても嬉しかった。
今日はその御ほうびに承徳のシオリを御送りします。T君と一枚づつ分けて下さい。 では二人共お父ちゃんお母ちゃんの言う事を聞いて大いに勉強して下さい。 ──承徳にて 大叔父
🧭 解説:兄としての想い
この短い手紙には、当時満洲に勤務していた25歳の大叔父から、故郷・三崎に暮らすまだ幼い妹のY(9歳)と甥のT(7歳)への、あたたかな気持ちが込められている。
Yは大叔父の腹違いの妹。
Tは大叔父の兄(筆者の祖父)の子(=大叔父の甥)。
年の近い2人はまるで姉弟のように育っていた。
その2人に宛てて「しおり」を“ご褒美”として送る。遠く離れた満洲からも、成長を喜び日々の勉強を励ますこの姿勢から「家庭的な兄」の顔が浮かぶ。
🌿 栞(しおり)という贈り物
「承徳のシオリ」は、観光地の土産物としてよく売られていた紙製の栞と考えられる。絵葉書とは別送されたのか詳細は不明。YとTはそれを本に挟んで兄(叔父)の姿を想像しながら読書していたのか。戦前の遠距離通信の中で、こうした小さな贈り物が家族をつなぐ「しるし」として大切にされたのか…。手紙の書き手である大叔父は、このわずか5年後に帰らぬ人となる。
📌 押入れタイムカプセルより
この1枚の絵葉書も「満洲国」という遠い地から届いた、時代の空気と心の温もりを封じ込めたタイムカプセルといえる。
