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Chapter2. アルブミノイド研究史③

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では、分析法で分離されたアルブミノイド物質が常に同一であると確証する方法は何か?私は、ブシャルダもまた同一性の判断根拠として用いた旋光度測定を参考にし、その計測値を基準値として採用した。以下の表は、ブシャルダが実験対象とした主なアルブミノイド物質の旋光度であり、実質的統一体仮説を否定するものである。表の数字は、ビオが定義した人間の知覚可能な光彩に対する相対値である。

※ロイコザイマス:恐らく現代のリゾチーム
※グルテンフィブリン:グルテン=グルテニン+グリアジンであり、グルテニンが当時既に発見済みである点から、現代のグリアジンの可能性。

では血液フィブリンの極希薄塩酸溶液での結果を参照しよう。微小発酵体を除去したフィブリン塩酸溶液には、水に可溶/不溶のアルブミノイド物質が混在している。

フェノール液添加の有無に関わらずこの透明な溶液は明らかな酸性反応を示し、過酸化水素水への作用もない。紛れもなくアルブミノイド物質との塩酸結合物であり、その大部分は水に不溶である。この溶液が微かにアルカリ性となるまで希釈アンモニア水を添加すると、白色の凝集沈殿物が大量に生成される。これを濾過で収集した後に蒸留水、アルコール、エーテルで洗浄し、真空乾燥機で急速に乾燥させると粉末状の物質が形成される。これは微小発酵体が除かれたフィブリンそのものであろうか?そうであれば、フィブリンは純粋に単純な溶液状態で存在する。否であれば、溶液状態は化学反応の結果である。この物質の真実は投与量で決定されるだろう。

新鮮なフィブリン60gを100℃乾燥させると11.5gの物質が得られる。この11.5gを再度100℃乾燥させると7.6gの不溶性物質が得られる。即ち、乾燥フィブリン重量の僅か66%が不溶性物質として残る。これは、物質の34%が溶解状態で残存していたことを意味する。微小発酵体の分離前に長時間反応させ続けると、アンモニアの沈殿量が減少し、溶解部分が増加する。

水に不溶の物質(アンモニア沈殿物)は、フィブリンと基本成分は共通するが、微小発酵体架橋質に相異があり、極希薄塩酸や、酢酸、アンモニアに直接溶解する。私はこれにフィブリニン fibrinineと命名した。そしてフィブリニンは過酸化水素水を分解せず、馬鈴薯澱粉も液化しない。

希釈アンモニア水の不沈殿物からフィブリニンを分離するとアルコールで析出するものがある。この沈殿物は混合物であり、一部が水に溶解し、その他は不溶である。この水溶性の部分に私はフィブリミン fibrimineと命名した。

アルコール沈殿部分はアンモニア不沈殿物より更に少ない。残りは多少胃の消化物に類似する。フィブリミンには澱粉液化作用があると付言しておくが、過酸化水素分解能の有無の確認を失念していたことを後悔している。

ともかく、フィブリン全体の塩酸溶液、フィブリニンとフィブリミンの旋光度は以下の通りである。

この多種多様な旋光度を各々の物質に備わる他の性質に照らして比較すれば、ブシャルダが実質的統一体教義を支持するに至る同一性の根拠の無さが明らかとなる。だがしかし、この同一性(そして実際的に近成分ではない混合物の元素分析)に基づき、フィブリンのアルブミン凝固形態説や変質の一段階とする見解が誕生したのである。

アルブミンに(凝固の如何を問わず)過酸化水素分解能がない事実は確認されていたが、この最大の相違点も、フィブリンの希塩酸への不完全溶解に随伴する~この点でフィブリン近成分説の誤りが明白となる~事象もまた看過された。従って、長年月に渡って筋肉組織フィブリンと血液フィブリンが混同された過去も、また今尚、動物種や採血部位、剰え乳糜、リンパ液、病的漿液などに至るまで、その抽出元を問わず血液フィブリンを同一物質と捉える現状も驚くに値しない。

ドゥニ Denisが既に、特定部位の静脈採血で得たフィブリンが、動脈血含め他の採血部位では溶けない硝酸塩(硝酸カリ)溶液に溶解する事実を立証していた。エストールと私は、子猫の血液フィブリンが馬鈴薯澱粉を液化し、液化澱粉中で消失した後の微小発酵体によるバクテリア進化を証明した。一方、雄牛の血液フィブリンはブシャルダの実験条件で溶解せず、溶解には塩酸溶液を3:1000にする必要があった。別の実験では、若鶏の血液フィブリンを2:1000の塩酸溶液で処理した後に長時間オーブンで加熱したが膨潤せず、数日後も酸による溶解は殆ど無く、アンモニア沈殿物も殆ど生成されなかった。だがこのフィブリンは、塩酸処理前も処理後水洗浄を経ても等しく過酸化水素水を分解した。即ち、フィブリンは常に同一組成の定比近成分ではなく、遥かに可変的な解剖学的物質である。この事実を確信するには、マルシャル Marchaldeカルヴィ Calviマジェンディ Magendieクロード Claudeベルナール Bernard、そしてビロー Birot、J.ベシャンの観察に回帰すれば十分である。

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