呉正男氏 6.約束
ご縁がありながら数年ご無沙汰していた呉正男さんにダメ元でハガキを出してみたところ、数日後ご本人からお電話をいただいた。「台湾出身戦没者慰霊碑に行くならご一緒しましょう」とおっしゃる。
慰霊碑には一人で参拝するのもいいのでは、という気持ちもあった。そのほうがじっくり思いを廻らすことができそうだからだ。でも呉さんはきっと、ご自身が奔走して建立に漕ぎつけた慰霊碑を、ご自身で案内されたいのだろうということも想像できた。そのご厚意を無にするわけにはいかない。
そして、呉さんご自身が、そして亡父もそうであった「陸軍特別幹部候補生」について教えていただきたい、ということもお会いしたい動機のひとつだ。どんな小さなことでもいい。
それを慰霊碑参拝と切り離して別途機会を設けていただくことは、一般論ではあるがご年齢からいって難しそうな気がした。なにぶん(数えで)100歳である。お会いするだけで、いや「慰霊碑にご一緒しましょう」というお電話をいただいただけでラッキーと言うべきだ。
野暮用が一区切りつきそうなタイミングを考え、もう一度ハガキを認めた。お電話へのお礼と、6月半ばに改めて日程を相談させていただきたいと書いた。「お時間が許せばお茶でもいただきながら、特別幹部候補生についてもお話を伺いたい」ことも書き添えた。
そのうえで6月中旬のある日呉さんにお電話をかけ、7月2日の午後お会いするお約束をとりつけた。何もなければ当日直接集合、ただし「雨の場合はやめましょう」と呉さんははっきりおっしゃった。雨が予想される場合は前日確認することになった。
結果から言うとこの日は雨の予報が出てしまい、約束はリセット。ご相談の結果7月4日の午後に、慰霊碑のあるお寺の最寄り駅であるJR根岸線の根岸駅で待ち合わせることになった。
お元気そうとは言え100歳のご老体である。念のため「お一人で見えますか?」とお尋ねしたら「家族に送ってもらう」とおっしゃる。それなら(少しは)安心だ。準備すべきこと、モノを考え、わたしは当日に備えた。
ちなみに特別幹部候補生についてお話を伺う参考にと、軍歴を含む父の履歴をまとめたものは、上述のハガキのあとに別途お送りしてあった。目が弱ってこられたらしいので、うんと大きな文字で印刷して。
【お知らせ】呉氏に関する投稿はマガジン「呉正男氏―台湾出身の元陸軍特別幹部候補生」に集約。
