The Roots Of George Benson
最近ジョージベンソンの自伝を読みました。感想としてはミュージシャンの自伝というと私生活(性生活)や金銭トラブル、政治観に関して赤裸々に書かれすぎていて辟易するものもありますがそこら辺は控えめ或いは触れずに音楽活動にページを多く割いているのが好印象です。またジャックマクダフやクリードテイラーの二人にも細かく紹介されていてとても良かったです。ジャックは情報がなくクリードも強欲な商業主義者(彼は商業的ではあったものの典型的な金に汚い人物ではなかった)という誤った印象が持たれ続けているので、この二人に関心があればジョージベンソンに興味がなくとも読むことをお勧めします。さらにピッツバーグのジャズ事情やミュージシャン仲間との温かくユーモラスなやり取りなどもたくさんで音楽が好きだということが伝わってくる良い本でした。
この人物解説コーナーでは日本語の本やサイト等(特にWiki)で詳しい解説が行われていないことが条件なので、自伝が出版されているジョージベンソンは対象から外れますが今回は番外編としてジョージベンソンのルーツを紹介します。今回はさらに番外編らしく自伝の口語っぽい文体に寄せてみます。
1.ナットキングコール
ナットキングコールは彼にとってスターであると同時にミュージシャンのスタートを切るきっかけとなった。なぜなら8歳で彼のMona Risaをウクレレを弾きながら歌ったのが初めての吹き込みなのだから。二人は歌手として始まり楽器奏者として売れ出し歌手として圧倒的に人気になったという共通点は忘れないでほしい。ジョージの幼いころは甘い演奏をバックに歌うナットとエレキギターに夢中になるとオスカームーアのギターが映える初期のスモールコンボにも耳を傾けていた姿を想像しよう。はっきりとそうとは言っていないけどその姿を想像するのは難しくないはずだ。
2.チャーリークリスチャン
ギターの歴史を変えたミュージシャンのリストに彼の名前を乗せることに反対する人はいないだろう。ジョージの養父はチャーリークリスチャンとおそろいの帽子をかぶるほどチャーリーを愛好していた。少年がこの人のよい養父をきっかけにクリスチャンに耳を傾けるのは自然なことといえる。後に彼を見出したジョンハモンドがジョージをスカウトしたのは奇妙な縁だ。そしてあなたがジョージをガッカリさせたくないのならベニーグッドマンとチャーリーの共演を聴くべきだ。彼はあなたの住む街を訪れたさいに試験をするつもりだから。そしてもし失格すれば悲しげな顔で諭すように言うだろう「なぜ宿題をしなかったんだい?難しいものではなかったのに」と。
3.ウェスモンゴメリー
彼もまた歴史を変えたジャズギタリストだ。想像してほしい。青年になったジョージがウェスの親指だけで驚異的なアドリブを繰り出したかと思えばバラードを美しく歌うように弾く姿を食い入るように見入る姿、このギタリストの弟(ピアニスト兼ヴァイブ奏者のバディ)から「いいジャズギタリストになれる」と言われてステージに立ち、自分がウェスのようなアドリブを繰り出す姿と今の現状のギャップに心躍らせると同時に不安が胸をよぎるところを。この時、ウェスがあまりにも若い死を迎えたあとジョージがその後継者になると誰が想像できただろうか。二人にはもう一つ逸話がある。後にジャズギタリストになったジョージはウェスに教えを請うも断られてしまう。決して意地悪でも若造に地位を脅かされたくなかったわけでもない。彼はこう言ったのだ「自分もまだ学んでいるのだから」と。謙虚な人柄で知られたギタリストらしい発言だ。
4.チャーリーパーカー
ツアーに疲労困憊したジョージがバンド仲間で奇妙なサックスを吹く奏者の部屋で横になった時、彼の耳に奇妙で素晴らしい音楽が聴こえてきた。ストリングスをバックにアルトで奇妙なフレースを吹いているのはチャーリーパーカー。その時はその名を知らなかったものの、素晴らしさに気が付き自分の演奏に取り込むようになるのにそう時間はかからなかった。もしOn BroadwayのアドリブにおかしいところがあればパーカーのJust Frendsを聴いてほしい。彼のアドリブフレーズの引用だと分かるはずだ。
その他
ここからは長い記述はないものの彼が言及した幾名かのミュージシャンを紹介したい。まずはカントリーギタリストながらもジャズにも長けたハンクガーランド。スポーツカーにギターを乗せたジャケットを見たジャム仲間がこれは弾ける人に違いない!早速ジョージに聴かせると予想は的中。チャーリークリスチャンに匹敵するほどのショックを受けた。さらにはブルースそのもののグラントグリーン。彼が初めて録音に参加した謎のオルガン奏者サムレイザーのレコードをお気に入りに挙げている。さらにはビリーバトラーも欠かせない。自伝にて彼が作曲したホンキートンクについて熱く語り、このギタリストのリフに耳を傾け研究したことを語っている。そのうえ彼はOn Broadwayのドリフターズのバージョンに参加したギタリストの一人。ジョージが数多あるドリフターズの曲からこれをカバーしたのはバトラーの参加が決めてだったかもしれない。さらにはジミースミスのお気に入りのギタリストだったソーネルシュワルツは思春期のジョージの耳を惹きつけ、後にレッスンを受けている。もちろんケニーバレルの影響も忘れられない。GBの推薦は1957年にプレスティッジからリリースした同名のアルバムだ。もっと知られていない人物ではベンチャーズで有名なWalk Don't Runのオリジナルを録音したジョニースミスも忘れてはいけない
ギタリスト以外にもいる。ジャックマクダフ。音楽業界を渡り歩いてきたタフな男にしごかれることは青年だったジョージにタフネスとガッツを身に着けさせた。そしてもちろんマイルスデイヴィス。Kind Of Blueで見せた芸術的なブルースはジョージのジャズ度数を高めると同時にMiles In The Skyへの参加は自信を付けることとなる。
正直いつもと違う文体なので書くのが難しかったです。ここからは具体的なアルバムリストを紹介します。
ナットキングコールはヒット曲をベスト盤や配信で抑えておいてからVocal Classics & Instrumental Classicsを聴くのがおすすめです。後者ではアーヴィングアシュビーとオスカームーアの二人がギターで参加。二人からの影響を公言していないものの聴いているのは間違いないため、少なからず影響を受けていると思います。
チャーリークリスチャンに関してはベニーグッドマンのスモールコンボ時代の音源を未発表曲含め全てまとめた(丁寧なライナー付き)編集版がでているのでそれを購入することをお勧めします。これさえ聞けばジョージからの試験に合格間違いなしです。
ウェスモンゴメリーは自伝から複数のアルバムを聴きこんでいたことが伺えます。ただウェスとジョージの二人が演奏した曲というのはCalifornia DreamingとDown Here On The Groundしかなく前者はおそらくレコード会社の意向、後者はウェスがインストでジョージはボーカル入りと大きくアレンジは変えているので直接的に影響を感じる曲はありません。またジョージが名前を挙げているのはどれも代表作といわれるようなものなので代表作がおすすめでしょう。
チャーリーパーカーはウィズストリングス一択です。自伝を詳しく読んでほしいですが彼がこの作品をどれだけ愛しているかがよくわかるはずです。
ハンクガーランドの作品に関してはジャケ写の描写からJazz Winds From A New Directionと思われます。主役のギターはもちろんゲイリーバートンの初期の録音が聴ける点に惹かれる人がいるのではと思います。同じくギタリストのメルヴィンスパークスはジョージから熱心に勧められ聴いたことや自身やジョージがかなり影響を受けたと語っています。
グラントグリーンは本文で触れたようにサムレイザーというオルガン奏者のアルバムを紹介しています。彼はシカゴのミュージシャンで記録があまり残っていない謎のミュージシャンですがSpace Flightにはベースでシカゴブルースの重鎮のウィリーディクソンとギターでグラントグリーンが参加。グラントはこれが初のレコーディングだったそうです。
ビリーバトラーはその経歴のほとんどがクレジットを表記しないという悪習故に謎に包まれています。ドリフターズのOn Broadwayにも参加してはいるようですがリードギターやソロはビリーバトラー説とフィルスペクター説がありはっきりとしません。ほかにもビルドゲットのHonky Tonkやプレスティッジのソロなどジョージが触れた作品は多いです。ちなみにジェリーバトラーの兄弟と言われることもありますが同姓同名の別人でこちらのビリーはジェリーとは無関係です。
ソーネルシュワルツというのもギタリストらしいチョイスです。レコードではジミースミスの陰に隠れがちですが、ジョージはレッスンを受けているうえにおそらく何度かライブを目にしていたと思われます。個人的にはAt The Orugun, Vol3が比較的活躍が多くておすすめです。
他のミュージシャンは本文で紹介済みなので割愛します。冒頭でも触れたようにジョージベンソンの自伝であると同時にオルガンジャズの貴重な資料であり、音楽の愛に溢れた一冊です。もし機会があれば手に取って読んでください。
