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明日を迎える恐怖。

21時46分。

テレビの音が聞こえる。

スマホには何件か通知が来ている。

明日になればどうせ見るのに、
なぜか今は開く気になれない。

今日が終わる。

ただそれだけのことなのに、
胸の奥が少しだけ重くなる。

明日も同じように過ごせるだろうか。
明日もちゃんと笑えるだろうか。
そんなことを考え始める。

まだ夜は長い。

けれど心だけは、
もう明日の方を向いている。

窓の外はいつもと変わらない。

車の音が聞こえて、
信号は規則正しく色を変える。

明日が来ることなんて、
誰も気にしていないみたいに。

それなのに私だけが、
少し立ち止まっている。

明日が怖い。

そう思うのは、
何か特別な理由がある時ばかりじゃない。
大きな失敗をした日でもない。
誰かと喧嘩した日でもない。

理由が見つからない不安ほど、
厄介なものはない。

何が怖いのか聞かれても答えられない。
ただ漠然と苦しい。
ただ漠然と明日が嫌だ。

そんな夜がある。

きっと明日そのものが怖いわけじゃない。

本当に怖いのは、
明日の中に起こるかもしれない出来事の何かだ。

うまくいかないかもしれない。
傷つくかもしれない。
期待した分だけ落ち込むかもしれない。

そんな「まだ起きていない出来事」を、
心は先回りして考えてしまう。

考えても仕方ないとわかっている。
考えたところで未来は変わらない。
それでも考えてしまう。

人の心は案外、
理屈だけでは動いてくれない。

だから夜は少し苦手だ。

昼間は色々な音がある。
やることもある。
誰かの言葉もある。

けれど夜になると、
自分の考えだけが残る。

静かな部屋の中で、
頭の中だけが騒がしくなる。

未来のこと。
過去のこと。
自分のこと。
他人のこと。

普段は見ないふりをしているものまで、
次々と浮かんでくる。

そして気づけば、
まだ来てもいない明日に疲れている。

少し不思議な話だと思う。
明日はまだ始まっていない。
何一つ起きていない。

それなのに私たちは、
想像だけで苦しくなることができる。

未来を考える力は、
人を助けることもある。

けれど時々、
その力は自分自身を追い詰める。

最悪の未来を想像して。
まだ起きていない失敗に落ち込んで。
まだ言われてもいない言葉に傷つく。
そんなことを繰り返してしまう。

けれど振り返ってみると、
思い描いた最悪の未来が
そのまま来たことは意外と少ない。

怖かった朝も。
逃げ出したかった日も。

始まる前は終わりみたいな気持ちだったのに、
気づけば乗り越えていたことがたくさんある。

もちろん、
全部が上手くいったわけじゃない。

傷ついた日もある。
失敗した日もある。

それでも今ここにいる。

少なくとも、
あの頃想像していた
最悪の未来だけでは終わらなかった。

だから今夜も、
無理に前向きにならなくていい。

「明日はきっと大丈夫」

そう思えないなら、
思わなくてもいい。

ただ、

「明日は来るんだろうな。」

それくらいで十分だと思う。
未来を好きになれない夜があってもいい。
期待できない夜があってもいい。

それでも時計の針は進んでいく。

この夜も、
気づけば過去になる。

そしてまた一つ、
怖かった明日を迎えた自分だけが残る。

それを繰り返しながら、
私たちは思っているより
ずっと遠くまで歩いていくのかもしれない。



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