灰羽はジョークを鳴く。 #シロクマ文芸部
海の猫が鳴く。
灰褐色の羽を広げて旋回しながら鳴く。
あれは泣いているのだろうか。
ミャーオ、ミャーオと声を上げて、遠くへ行きたいと、泣いているのだろうか。
「遠くへ行きたい?」
不意に聞かれて、私はドキリとする。
「そうだねぇ……、行けるのなら、行ってみたいね」
「僕も、そう思うよ」
結局、私たちも、ミャーオ、ミャーオと声を上げて泣くあの子のように、遠くへ行きたいのだ。
「もしも僕と君が、一緒に遠くへ行けたならさ、」
「うん」
「まさにトウヒコウだね」
「逃避行? まさか、そんな関係でもないでしょ」
恋仲でもなんでもない。それを否定して怒る仲でもない。
彼だって小さく笑っているようだ。
「いやいや、だからさ、逃飛行、だよ」
彼の言う意味がわからなかった私は、きっと文字通り目を丸くして彼を見たことだろう。
「飛んで行く、の飛行」
私の表情から悟った彼は説明を加えて、やっと真意を掴んだ。
「……あは、なに、それ」
「ちょっとの願望と、寒いジョーク」
私と彼は声を上げて笑った。
ミャーオ、ミャーオと笑った。
それは、泣いているようにも広い海の上に響いた。
#シロクマ文芸部 企画に参加しました。
海の猫、海猫、ときて
仲村トオル出演の映画『海猫』を思い出した。(原作小説は未読)
ウミネコにも渡り鳥と留鳥がいるんだね。
今回改めて調べて知りました、勉強、勉強。
▶ 最近の シロクマ文芸部 参加ショートショート:
・休みの日、ずっとそばに 5/1「休みの日」
・夜に、釣り上げる 5/15「夜に釣り」
・小さな選択、だったはずなのに。 6/5「ハンカチを」
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▶ マシュマロ投げてみますか……?
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2025.06.14 もげら
