ドル円以外で進む円安の動きと日銀の利上げ観測
先週は自民党総裁選の結果を受けて、マーケットが大きく動きました。そこでこの記事では、為替相場の動向を中心に、その背景や要因を丁寧に見ていきたいと思います。
株式市場では、日経平均株価が48,000円を超えて上昇し、市場最高値を更新しました。まさに大幅な上昇となっています。一方、為替相場も円安が進行し、ドル円は153円をうかがうレベルとなりました。去年の夏場には161円台という円安局面もありましたので、それに比べると「それほど円安ではない」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかしこれはあくまでドル円だけを見た場合の話です。
ユーロ円とポンド円は円安が進行
ドル円見てると、あんまり円安になっていない気になると思いますが、ドルも弱いからです。ユーロ円が177円、ポンド円204円ですからね
— 【世界経済情報】モハPチャンネル (@MohaP_WorldNews) October 8, 2025
ユーロ円は1ユーロ=177円台と、昨年の高値を更新し、ユーロ導入以降の最高水準となっています。ポンド円も1ポンド=204円台まで上昇。昨年夏には207円台という局面がありましたので、それには及びませんが、十分に円安が進んでいる水準です。
ここで注目すべきは、ユーロ円やポンド円がこれだけ円安になっているのに、ドル円はあまり円安になっていないという点です。これは裏を返せば、ドル自体が弱くなっている、つまりドル安が進んでいることを意味しています。実際、ユーロやポンドは今年に入ってから対ドルで大きく上昇しています。
ユーロ高の背景にある金融政策の違い
ユーロドルの相場を見てみると、2025年9月には一時1.19ドル程度までユーロ高が進んだ場面もありました。今年前半には1.015ドル前後でしたので、そこから大きくユーロ高・ドル安になっていることがわかります。
なぜこれほどユーロが強くなっているのか。その要因の一つは、金融政策の方向性の違いにあります。アメリカのFRBは利下げを再開し、今後も追加利下げを行っていく見通しです。一方、ECB(欧州中央銀行)はすでに利下げを終えており、9月の会合では「これ以上の利下げはないかもしれない」と示唆しています。つまり、利下げを続けるFRBと、政策金利を維持するECBという構図が、ドル安・ユーロ高を引き起こす要因の一つとなっているのです。
景気の方向性の違い
もう一つの要因は、景気の方向性です。アメリカは関税政策の影響もあって徐々に景気が悪化してきており、その影響は雇用にも表れています。一方、ユーロ圏は持ち直しの傾向が見られます。特にドイツが積極的な財政政策に転換したことが大きく影響しています。ユーロ圏経済の約3割を占めるドイツ経済が持ち直すと、ユーロ圏全体の成長率も上向くという構図です。こうした景気の違いも、ドル安・ユーロ高を後押ししています。
ポンドが比較的強い理由
次にポンドについて見てみましょう。ポンドも対ドルで上昇しています。ユーロほどの強さはありませんが、それでも堅調に推移しています。背景にあるのは、バンク・オブ・イングランド(イギリス中銀)とFRBの金融政策の違いです。バンク・オブ・イングランドは2024年から利下げを進めており、現在の政策金利は4%です。景気は増税の影響などであまり良くはありませんが、依然としてインフレが高止まりしており、「もう利下げはできないのではないか」という見方が広がっています。
イギリスは慢性的に経常赤字であり、国債は海外投資家の資金に大きく依存しています。スターマー政権下でも赤字は拡大傾向にあり、これ以上財政悪化が進むと、国債と通貨はますます売られやすくなるでしょう。
そのため、FRBが利下げを進めていく中で、バンク・オブ・イングランドが利下げできない状況となり、相対的にポンドが強くなりやすくなっているのです。
ただし、11月にも増税が発表される見通しがあり、増税によって景気が一段と悪化すれば、再び利下げ期待が高まる可能性もあります。そのため、ユーロほどの強さを保つのは難しい状況と言えるでしょう。
ドル円が限定的な円安にとどまる理由
この結果、ユーロ円が過去最高水準となっている一方で、ドル円は152円台にとどまっています。昨年の161円台と比べると、まだ「ましな円安」といった印象です。欧州やアメリカの経済動向、金融政策の方向性次第で、この構図は今後も変化していく可能性があります。
ドルインデックス上昇の背景にある日本とNZ
もう一つの注目点は、ドルインデックスの上昇です。ドルインデックスとは、ドルが主要通貨に対してどのように動いたかを示す指数です。

97.7から一時99を超えて上昇しました。これは高市氏の自民党総裁選勝利によって円が安くなったことが要因の一つです。ドルの動向を見ている海外投資家にとっても、日本円や日本の政治情勢が改めて注目される展開となりました。
もう一つの要因は、ニュージーランドドルの急落です。2025年10月8日、ニュージーランド準備銀行が0.5%の利下げを実施しました。事前予想では0.25%の利下げが中心でしたので、予想を上回る大幅な利下げとなりました。これは景気の悪化とインフレの沈静化を背景に、利下げ余地が広がったためです。今後も追加利下げの可能性が高まっています。
高止まりしてきたノン・トレーダブルインフレがようやく落ち着き始め、利下げ期待も高まっていますが、外需の弱さや人材流出といった構造問題は依然として残っています。
日銀の利上げ観測は後退
一方、日本の短期金融市場が織り込む日銀の利上げ観測は大きく後退しました。2025年10月3日時点では、10月の利上げ確率が6割、12月までには8割近くが織り込まれていました。しかし、10月9日時点では10月利上げは2割程度、12月でも6割程度に下がっています。つまり、利上げ期待が剥落したということです。
高市氏が首相に選出され、10月30日の日銀金融政策決定会合では、政権との対立を避けるために利上げは見送られる可能性が高いと私は見ています。12月も補正予算の審議と重なり、政府が利上げを嫌がる時期ですので、こちらも見送りとなる可能性が高いでしょう。
円相場を左右する今後の焦点
こうした要素を踏まえると、円相場の動向を占う上で、今後の焦点は日銀の金融政策の行方、そしてアメリカと欧州の政策の違いにあります。冷静な目で経済や投資を見極めていきたいと思っています。引き続きよろしくお願いいたします。
ご参考
アメリカの経済動向は世界中に波及しますので、日本経済も無縁ではありません。日銀が用いる景気予測モデルには必ずアメリカのデータが組み込まれているため、その情報が得られなくなると日本の金融政策の判断も難しくなります。
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