見出し画像

投資初心者のための債券の基礎知識


 この記事では、これまでいただいてきたご質問にお答えする形で、債券の基礎知識について丁寧に解説します。債券の解説を取り上げる機会が多いですが、「そもそもの基礎が分からないので説明してほしい」というリクエストをいただくことが少なくありません。債券の世界は専門用語が多く、似た意味の言葉が複数出てくるため、最初はどうしても混乱してしまう方が多いのではないかと思います。
 そこで今回は、基本的な部分をなるべく丁寧に説明し、そこから少し専門的な話にも広げ、理解の助けになるように解説していきたいと思います。

元本より上回れば勝ち、下回れば負けと考える方にとっては、債券現物の方が安心感があるでしょう。ただし、元本はあくまで投資時点での金額であり、物価水準が大幅に上昇した場合、元本を取り戻しても実質的な価値では損失を被る可能性があります。

債券投資の質問と回答、金利の関係

利率・利回り・金利の違い

 よくいただく質問として「債券の利回りが上昇すると保有者は損をする」という説明について「利回りが上がったら儲かるのでは」という疑問を受けることがあります。
 これは、債券取引に馴染みのない方にとって特に分かりづらいポイントで、実は言葉の定義の理解と密接に関係しています。債券の話をする際に、意味が似ているようで違う「利率」、「利回り」、「金利」という三つの言葉がありますが、その違いを理解していないと誤解が生じてしまいます。

利率

 まず利率ですが、これは英語でクーポンと呼ばれ、日本の国債の場合は年2回支払われる利息の、元本に対する割合のことを指します。利率2%の債券であれば、元本の1%が半年ごとに支払われるという仕組みです。ここでのポイントは、利率は債券が発行された段階で決まり、基本的には満期まで変わらないということです。

利回り

 では利回りとは何かというと、利息に加えて、債券の購入時の価格と満期時に返ってくる金額の差、つまり価格変動による損益を含めて計算した実質的な収益率です。同じクーポン2%の債券であっても、価格が100円のときと99円のときでは利回りが変わるということです。例えば満期100円の債券が99円に下落した場合、利回りは3.03%になります。ここに「利回り=価格変動を含む」という大きな特徴があります。

金利

 金利という言葉も使われますが、これは一般的に利回りとほぼ同じ意味で使われていることが多いと思っていただいて構いません。ただし細かく見ると使い方に若干の違いもあるため、ニュースなどで見かける場合は文脈で判断することが多いです。

利回り上昇が損失になる理由

 ここで最初の疑問に戻ります。クーポン2%の債券を100円で買ったとします。その後価格が99円に下がると、利回りは3.03%に上昇しますが、保有者は1円分の含み損を抱えていることになります。この段階では評価損が発生していますので「損をしている」という説明になります。もちろん、満期まで保有すれば100円が戻ってくるため、最終的には損をするわけではありませんが、途中の時価評価では損失が出ている形です。金利上昇局面で債券価格が下がり、保有者の含み損が増えるというのは、まさにこうした仕組みによるものです。

債券投資の収益と会計の解説(農林中央金庫の件)

 以前、「利回りは変わらないのに何を言っているのか」というコメントをいただいたことがありますが、発行後に一定なのは利率であり、利回りは常に価格変動とともに変わっていきます。ここを混同してしまうと理解が難しくなるため、最初に押さえておくべき重要なポイントです。

債券利回りの種類と専門的な視点

 ここから少し専門的なお話になります。債券の利回りには多くの種類があります。一般の方がすべて覚える必要はありませんが、代表的なものとして単利と複利があります。日本の国債は単利で表されることが多く、アメリカの国債は複利で語られることが多いです。また、利回りを比較する際には複利で見る方が適切だと言われることもありますが、必ずしもその限りではなく、利率や銘柄の違いによっても適切な指標が変わります。専門家は連続性のある比較をするため、ゼロクーポン債を仮定して利回りを算出するケースもあります。

日本でしか使われていない利回り概念として「直利」と「単利」があります。直利はクーポンを購入価格で単純に割ったもの、単利はそこに償還差益・差損を加味したものです。

日本国債利回り5%の正体と業界の特殊取引慣行

 さらに、利率が固定されている債券が一般的ですが、変動金利の債券も存在します。頻繁に利率が変わるものはそこまで多くありませんが、ニュースで取り上げられる利回りの変化は、基本的に固定金利債を前提としたものだと理解しておくと混乱しにくいと思います。

会計処理と利回りの関係

 ここでもう少し踏み込んだ話をすると、債券の損益や利回りには会計処理が大きく関係します。企業や機関投資家が債券を保有する場合、その目的によって会計処理が異なります。売買目的、満期保有目的、その他の3つの分類があり、それぞれで評価方法が違います。

債券の分類
 会計上、債券は保有目的に応じて3つに分類されます。そして、それぞれ異なる評価・計上方法が採用されています。(株式の場合は、下記に支配目的を加えた4つに分類されます。)

今さら聞けない債券の含み損の開示

 売買目的では時価で評価し、価格変動を当期の損益として計上します。一方で満期保有目的の場合は価格変動による損益は認識されず、簿価で計上されます。ただし、簿価も一定ではなく、買値と満期価格の差額を定期的に償却するアモチゼーションや、逆に利益を積み上げるアキュムレーションといった処理が行われます。これらの処理によって会計上の利回りも変化するで、実務上は複雑な世界になっています。

まとめ

 この記事では、債券に関するよくある質問にお答えする形で、基礎から専門的な部分まで幅広く解説しました。債券は最初のハードルが高い分、理解が深まると経済や市場のニュースがこれまでとは違って見えるようになります。そして、投資判断の幅も広がります。今後も分かりやすく伝えていきますので、どうぞよろしくお願いいたします。


ご参考(投資初心者のための記事のまとめ)

■ 投資初心者への質問と回答、誤解の解消(2023/1/8)
■ 投資初心者のための情報収集術、疑う力と分析(2024/2/4)
■ 投資初心者に伝えたい、プロと素人の違い(2025/4/10)
■ 金融リテラシーとリスク許容度の誤解(2025/8/11)
■ 日本の財政は本当に危機か

サイトマップ(目的別)はこちら

いいなと思ったら応援しよう!

この記事は noteマネー にピックアップされました

noteマネーのバナー