金融リテラシーとリスク許容度の誤解
「日本人は金融リテラシーが低い」とか「金融リテラシーを上げるにはどうすればいいのか」といった質問をよくいただきます。しかし、私は日本人が欧米の人たちよりも金融リテラシーが低いとは思っていません。
イギリス人やアメリカ人と比べて日本人が金融リテラシーが低いと思い込んでいる人が多いようですが、実際にはイギリスやアメリカにはお釣りの計算もできない人も少なくありません。そうした人たちが本当に金融リテラシーが高いと言えるでしょうか。この記事では金融リテラシーについて説明しします。
私は、「日本人は金融リテラシーが低い」という話は、政府や金融機関にとって都合よく作られた物語ではないかと思っています。
金融リテラシーの評価
何をもって金融リテラシーが高いかの判断は非常に難しいものです。テレビの専門家や金融機関の営業マンがよく言うのは、預金しか持っていない人の割合を示して「日本人は金融リテラシーが低い」、逆にリスクの高い金融資産を多く持っている欧米人は「金融リテラシーが高い」と評価する傾向です。
私はこれは違うのではないかと思います。確かにアメリカ人はリスク資産の割合が高いですが、ギャンブル感覚で何も考えずにリスク資産を持っている人も多いのではないかと感じています。これは金融リテラシーの違いではなく、リスク許容度の違いではないでしょうか。

リスク許容度の違い
最近アメリカでは、子どもの教育資金をビットコインで運用する人が増えているそうです。大学の学費が高騰し、リスクの高い商品に頼らなければ払えないという背景もありますが、こうした行動は金融リテラシーが高いとは言い難いものです。教育資金は子どもが生まれてから大学入学までの限られた期間で積み立てるため、10年を切る場合もあり、その間に大損を出せば学費が払えなくなってしまう恐れがあります。教育資金の性質から考えれば、あり得ないリスクの取り方と言えるでしょう。
リスク許容度の違いと格差社会
このリスク許容度の違いは格差社会とも関係しています。欧米は格差が大きく、お金持ちは大きなリスクを取っても生活に支障がない一方、貧しい人はいつもカツカツで、一発逆転を狙う傾向が強いのです。こうした格差がリスク選好を高めています。
したがって、「日本人は金融リテラシーが低いからもっと金融の勉強をしてリスク資産を買いましょう」というのは、金融機関の戦略の側面が強く、政府にとっても都合が良いため、現在の日本の金融教育はその方向で進められていると思います。
大切なのは計画的なお金の使い方
私も子どもに経済や社会を理解してほしいと思い、いろいろ話したり試したりしていますが、一番重要なのは計画的にお金を使うことです。後先考えずに入ったお金を全部使ってしまうことがないようにすることです。難しい話ですが、ファイナンスという学問は限りある資源を効率よく使い、適切に配分する方法を考える学問です。ですから、給料が入った日に全部ギャンブルや遊びに使ってしまう人は理論を学んでも意味がありません。意外とこうした人は多いのです。
金融知識だけでは防げない問題
最近、銀行員が金庫から盗みを働いたり、証券マンが顧客宅から金銭を盗んだり火をつけたりする事件が相次いでいます。
多くはギャンブルや投資で損失を出し、その穴埋めのために犯行に及んだと報じられています。彼らは金融知識や資格を持つ人も多いですが、知識があっても目の前の欲望をコントロールできず、後先を考えられなくなってしまうことも多いです。だからこそ、まずは計画的にお金を使い、使い切って困る経験を実体験を通じて学ぶことが重要です。
子どもにはお小遣いを通してこうした経験をさせるのが良いでしょう。そしてある程度判断力がついたら知識を身につけることが大切です。金融経済については歴史を通じて多くの研究があります。
経験の時間軸
最近、知り合いから日本の金利や住宅ローンの変動金利が上がるかを聞かれました。10年前、その人は家を買う際に「固定金利は損、金利は上がらない」と言い、変動金利を選びました。しかし今は金利が上がり、その人は初めて現実を体験しています。人は自分が経験したことや目に見えるものに影響されがちですが、それは社会の一部に過ぎません。
特に金融や経済は時間軸が重要で、自分の経験だけで判断するのは危険です。2021年から世界的にインフレが起きましたが、長年のデフレに慣れていたため認識が遅れました。FRBのエリートもインフレは一時的と言っていたものです。過去の人々の経験や知恵を学ぶことは非常に重要です。
ファイナンス理論とは
ファイナンス理論は「希少資源の配分に関する学問」と言われます。
「負けると分かっている取引をしない」ことにあります。全てはそこから始まっています。これが金融ビジネス、ファイナンスの基礎です。
言葉だけだと難しく感じるかもしれませんが、YouTubeでもnoteでもできるだけわかりやすい例や言葉で解説しています。難しい言葉はあまり使わず、基礎理論を解説しているため、継続してご覧いただくことで経済やファイナンスの基礎理解が深まるでしょう。
皆様の経済や金融への理解が深まるお手伝いができれば幸いです。今後ともよろしくお願いいたします。
ご参考(投資の勉強を始めたいビギナーの方に向けた記事)
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