インドの新興金融都市ギフトシティーへの注目
インドの金融都市ギフトシティー、この新しい金融特区が、ここへ来て急速に存在感を高めています。インド経済の成長については皆様も耳にする機会が多いと思いますが、「金融の中心地としてのインド」という話題はこれまであまり聞かれなかったのではないでしょうか。アジアの金融都市といえば東京、シンガポール、そして近年存在感が薄れてきた香港が代表的で、インドがそこに並ぶイメージはほとんどありませんでした。
「GIFTシティー(Gujarat International Finance Tec-City)」は、インド初の国際金融経済特区だ。国家プロジェクトのスマートシティ事業として、グリーンフィールドから設置された。
ところが今、このギフトシティーが世界の金融機関から注目を集める存在になっています。この記事では、なぜこれほど急にギフトシティーが脚光を浴びているのかという点について解説します。
インド版国際金融特区ギフトシティー
ギフトシティーとは、グジャラート・インターナショナル・ファイナンス・テックシティ(GIFT CITY)の略称で、モディ政権が以前から開発を進めてきた金融経済特区です。プロジェクト自体は2010年代から動き始めており、2020年代に入ってから高層ビルの建設が急ピッチで進み、実際に金融機関が本格的に入居する段階へと進んできました。

ギフトシティーの特徴
このギフトシティーの最大の特徴は、法人税をはじめとした税制面での優遇が非常に大きいことです。これによって海外の金融機関が続々と拠点を設置しており、アメリカのバンクオブアメリカ、シティグループ、JPモルガン、イギリスのスタンダードチャータード、HSBC、バークレイズ、ドイツ銀行、日本の三菱UFJフィナンシャルグループなど、世界の名だたる金融機関が進出しています。シンガポール取引所も一部業務をギフトシティーで行っているとされています。
金融関連のみならず、テクノロジー企業、さらにオーストラリアの大学など教育・研究機関まで誘致し、都市としての幅を広げている点も特徴です。
インド企業へのドル融資の中心地へと急成長
ギフトシティーに拠点を置く銀行からインド国内企業に実行された融資総額は、2024年4月から2025年3月までで200億ドル、約3兆円に達しました。これはインド企業へのドル建て融資全体の3分の1を占める規模です。2年前にはシェアが16%だったことを考えると、急速に存在感を高めていることが分かります。
つまりギフトシティーは、インドと世界をつなぐ国際金融の中継地点として成長してきていると言えます。
インドとトランプ政権との関係
ギフトシティーがここまで注目された理由の一つが、トランプ政権の政策による影響です。
アメリカの投資銀行はこれまでインド人を積極的に採用してきました。金融とITが強く結びつくようになったこともあり、ITスキルが高く英語も話せるインド人は極めて魅力的な人材でした。インドには金融機関が設置する「グローバルケーパビリティセンター(GCC)」が多数あり、そこで金融システム開発やIT業務が集中して行われてきました。
例えば、ゴールドマンサックスの顧客向け取引システム「アトラス」、ブラックロックの資産管理プラットフォーム「アラディン」。これらの有名システムの開発にもインドのGCCが深く関わっています。
その結果、アメリカの大手金融機関におけるインド人の割合は非常に高いものになっており、ゴールドマンでは全社員4万3,000人のうち8,000人(17%)、JPモルガンでは31万8,000人のうち6万人(19%)がインド人とされています。他の投資銀行でも15%前後がインド人という状況で、もはやインド人がいなければ業務が成り立たないレベルです。

トランプ政権の影響でインド拠点拡大へ
しかし、トランプ政権が掲げる移民規制強化の影響で、アメリカ国内でインド人を採用しづらくなるという問題が発生しています。そこで、金融機関としてはインド国内の拠点をさらに拡充するしかないという方向に動き始めています。ただし、トランプ政権はインドのGCCに対しても規制強化を行う可能性があると見られており、これは「インド人がアメリカ人の仕事を奪っている」という論調が背景にあります。金融アナリストなど、これまでアメリカ国内の専門職とされてきた仕事もインドで担っているケースが増えているため、そうした批判が高まりつつあります。
とはいえ金融機関側は、もはやインド人なしで業務を維持することは不可能であり、トランプ政権の姿勢にかかわらず、インド拠点の拡大は避けられない状況です。
ギフトシティーに注目が集まる理由
このように、アメリカの投資銀行がインドでの事業を拡大せざるを得ない環境になりつつあり、拠点拡大候補として最も注目されているのがギフトシティーです。もちろん、すべてのGCCがギフトシティーにあるわけではありません。例えばゴールドマンのGCCはベンガルールにあります。
それでも2025年に入りギフトシティーが今まで以上に注目を浴びているのは、金融特区としての環境が整っており、海外金融機関を受け入れられる準備が最も進んでいるためです。まだ国際的な金融都市としての成熟には時間がかかりますし、シンガポールや東京と肩を並べる未来が来るかどうかは分かりません。しかし、今後しばらくはギフトシティーが今まで以上に存在感を増していくことは間違いないでしょう。
インドの金融都市の今後
ギフトシティーはまだ発展途中のプロジェクトではあるものの、インド経済の成長と世界の金融機関の動向が重なり、これまでにない注目を集めています。とりわけトランプ政権の移民政策が、結果的にインド拠点の重要性を押し上げる形になり、ギフトシティーへの関心は今後さらに高まっていきそうです。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
ご参考(インド記事のまとめ)
■ インド経済と玉ねぎと政策金利の話(2024/11/1)
■ インド経済の現状と成長率鈍化の要因(2024/12/14)
■ インド経済の強みと弱みとインド株反発要因(2025/4/26)
■ インドの消費税減税施策と経済成長の課題(2025/8/23)
■ インドで続く通貨安の背景と中央銀行の為替介入(2025/11/12)
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