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AI時代の就活難、新卒採用を減らす企業の増加


 毎年のことですが、新入社員が入って早々、4月に仕事をやめたり、退職代行を使ってやめる人がいるといったことが話題になります。一方で、新卒採用を減らす企業が増えてきているといった話も聞かれています。
 これまでは人手不足で人材の獲得競争が起きていて、売り手市場だと言われていましたが、そのトレンドが変わってきたのか、いろいろなことが言われていると思います。この記事では新卒採用についてお話ししてみたいと思います。

 2026年4月から、富士通は新卒一括採用を前提としない形での採用を本格化させます。そこでは「どの大学を出たか」よりも、「どの役割を担えるか」、「何ができるか」が評価の起点になります。

公認会計士と呪いの剣

新卒採用で起きている複雑な変化

 今、この新卒採用においては、いろいろな変化が起こっていて、複雑なトレンドが絡み合って今の動きになっていると私は見ています。というのは、これまで少子化の影響でそもそも若者がずっと少なくて、なかなかいい人材が取れないと企業はずっと悩んできたわけですが、少子化自体に変化が生じているわけではありません。引き続き、新卒の数は減少傾向であることに変わりはありません。
 では、なぜ変化が生じているのかと言うと、大きな変化という意味では、今AIによる業務の代替というのがあるでしょう。多くの企業は、AIを使って業務の効率化を進め、人手不足を解消しようと考えています。

 DBS銀行は、2025年2月24日に、今後3年間で4,000人の従業員を削減する計画を発表しました。その理由として、「これまで人が行ってきた業務をAIが担うようになる」ことを挙げています。

DBS銀行人員削減とAI導入に見る金融業界の未来

 この傾向はもう世界的な動きで、中国ではすでに20代の失業率が上昇しているとされています。このAIが労働市場に与える影響というのは、これまでにはなかった新たな動きだと言えます。

AI時代に「優秀な人だけを採用する」流れ

 結果として、AIに任せられるものは任せて、優秀な人だけを採用する、そういう考え方になってきている部分があるでしょう。
 SBIホールディングスの北尾氏が「よっぽど優秀じゃないと採用するな」と言ったとか、パナソニックが採用を100人減らすとか、そうしたニュースも出ています。その背景にはAIでの効率化というものが大きく影響しているでしょう。

ジョブ型雇用への移行

 そしてもう1つ、ジョブ型の雇用への移行を進めている企業があり、そうしたところが新卒一括採用を見送る動きになっているといった見方があります。
 ジョブ型の雇用に移行する企業においては、採用にあたって専門的な知識を持った人たちが行う必要がありますので、新卒一括採用は難しくなります。それぞれの部門に権限を与えて採用していくということになりますので、結果として新卒一括採用は減らしていくことになります。

出所)reskilling-navi.com

定年延長が一段落したことも影響している

 また、定年退職を延長する企業が増えていて、それが一段落したということも考えられます。それまで、このままだとバブルの頃に入ったボリュームゾーンが一斉に退職してしまって、人手不足になってしまうという危機感が企業にはありました。しかし、定年退職の時期を後ずれさせたことで、足元の人手不足感が解消されたという企業もあるでしょう。

 景気循環とは関係のないいろいろな動き、トレンドが重なって、今の新卒採用の減少ということが起こっていると私は理解しています。

 そういう意味では、このトレンドはしばらく続く可能性があると思っています。AIによる業務の効率化がいきなり終わるとは思えませんし、ジョブ型の雇用への移行も、すでに多くの会社が移行し終えたとは思えません。そうしたことを考えると、しばらく新卒採用を減らしていく企業が増えるのではないかと考えています。

市場関係者が注目するAI失業

 このうち、市場関係者やエコノミストが注目しているのは、やはりAIによる失業や採用の減少というところでしょう。AIが仕事を奪っていくという主張と、AIが奪っていく仕事は一部で、むしろAIを活用する仕事は増えるんだという見方もありました。
 ただ、AIによって仕事を奪われる人と、新しく生まれる仕事は、時間や地域、領域などがきれいに一致しているわけではありません。仮に全体として大きなマイナスにならなかったとしても、失業が増える職種があったり、業界があったり、タイミングがあったりする可能性があるでしょう。そういう意味では、今、企業はAIによるコスト削減を考えているところが多いように思いますので、しばらくそうした状況が続くかもしれません。
 引き続き新卒の数は限られているものの、採用人数は絞り気味の状況がしばらく続くのではないかと私は見ています。ということで、新卒の方はここから数年は、これまでほど就職活動が楽なものではないということになるのではないでしょうか。

新入社員の早期離職は本当に増えているのか

 近年は売り手市場で就職活動が比較的楽だったと言われていて、そうした新卒で入った人たちがすぐにやめるなんていう話を聞くことがちらほらありました。毎年4月になると、もう新入社員がやめたとか、ゴールデンウィーク明けにまたやめた人がいっぱいいるとか、そうした記事もたくさん出ていると思います。これは「最近の若い奴はな」と言いたいサラリーマンに読んでもらおうと思って書いている記事なのでしょう。
 
今年の新卒社員に関してのデータは私は持ち合わせていませんが、長いトレンドで言うと、今極端にやめる新卒が増えているということはないと思っています。新卒採用から3年以内の離職率という厚生労働省が出しているデータを見ても、極端に増えているという感じはありません。むしろ1990年代から2000年代前半の、いわゆる就職氷河期世代と言われていた時代の方がやめていたということです。

出所)厚生労働省

就職氷河期の方が離職率が高かった理由

 当時の方がやや新卒の離職率が高かったのは、やはり景気が悪くて、就職してからもなかなか大変だったというのがあるでしょう。当時はまだパワハラという言葉がなかった時代です。長時間のサービス残業も当たり前で、有給休暇なんて取れなかった時代でした。そのような状況でずっと業績が悪いわけですから、それなりに大変だったと思います。これが離職率が高くなった1つの要因でしょう。また、この辺りから終身雇用が崩壊して、転職する人たちが増えていったということもあったかもしれません。
 私が新卒で証券会社に入った時も、すぐにやめた人たちが何人もいました。最初の導入研修でもう耐えられなくなってやめていった人たちもいます。ゴールデンウィーク明けに帰ってこなかった人たちもいました。

当時の証券会社の新入社員研修

 私の経験で言うと、当時の証券会社の新入社員の研修って、頭を使うことはほとんどなくて、朝から晩まで挨拶の練習とか、わけの分からないことをやっていたと思います。気合が足りない人たちがいると、「お前ら舐めてんのか」とか言って、朝から晩まで怒鳴られるようなこともありました。当時は就職氷河期で、なかなか内定がもらえない中で、やっとの思いで掴んだ内定だったと思うのですが、それでもすぐにやめていく人たちもいました。というか、企業の方も離職率が高くても別にどうとも思っていなかったような時代だったと思います。
 この辺りは今と違うところもあります。ただ、やめていく人たちがみんな「こんなはずじゃなかった、イメージしていたものと違った」と言っているのは、今も昔もそんなに大きく変わっていないのではないでしょうか。今、就職してすぐにやめる人たちがいるという話を聞いても、私も「やめたかったな」ぐらいにしか思いません。

就職活動はこれまでより厳しくなる可能性

 今後については、これまでよりは就職活動が少し厳しい状況が続くのではないかと私は見ています。AIを使った効率化というのは、みんなどこまでできるのか、今は手探りの状態です。しばらくそうしたことを試す状況が続くことになるでしょう。その中で、若者の失業率は世界的に上昇しやすくなるかもしれません。そうした中で、勤めた会社をすぐにやめてしまうと、路頭に迷うということもあるかもしれません。
 どんな会社に入っても、どんなことをやるにしても、「想像と違った、こんなはずじゃなかった」と思うことはあると思います。それでも後で振り返った時に、「まあ、入って良かったな」と思える選択ができるように、なるべく事前に多くの情報を収集して就職活動に取り組まれることをお勧めしたいです。


ご参考(雇用記事のまとめ)

■ 日本での解雇規制緩和に関する一考察(2024/9/3)
■ 役職定年の年齢引き上げに見る日本経済の課題(2024/11/16)
■ 日本企業が直面する人手不足と対応策を巡る課題(2025/11/21)
■ メガバンクが語る失敗を恐れない人材への違和感(2025/12/5)
■ 新卒一括採用廃止に見るジョブ型雇用の良し悪し(2026/1/8)

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