中国がユーロ建て国債を発行した背景とその意味
中国政府がドル建てで国債を発行したというニュースを取り上げましたが、今度はユーロ建てでも国債を発行し、こちらも大きな投資家需要を集めたということが注目されています。この記事では、中国国債の状況を改めて振り返りつつ、後半では債券に関するご質問にお答えしています。
人民元の国際化はまだ十分に進んでいないため、企業の資金調達を支えるためには、ある程度ドルの利用を続けざるを得ないのが実情です。そのため、今回の発行もドル圏市場での企業活動を円滑にするための実務的な判断だったと考えられます。
中国のドル建て国債の振り返り
まずドル建て国債から振り返ります。2025年11月6日、中国政府はドル建てで40億ドルの国債を発行しました。3年債が20億ドル、5年債が20億ドルで、合わせて40億ドルとなります。ここに対し1,182億ドルもの応募が集まり、大札倍率は約30倍。かなりの異例の需要となりました。

利回り水準も驚くほど低く、3年債はアメリカの同年限国債とほぼ同じ、5年債ですらアメリカ国債より0.02%程度高いだけという水準でした。「中国とアメリカの国債利回りがほぼ同じなんてどういうことなのか」と思われるかもしれませんが、アメリカの財政悪化による利回り上昇の影響が大きく、構図としては中国に有利になっている面があります。このドル建て国債は香港市場で発行されています。
中国のユーロ建て国債にも殺到した投資家需要
続いて今回のユーロ建て国債です。11月17日、中国政府はユーロ建てで40億ユーロの国債を発行しました。4年債と7年債をそれぞれ20億ユーロずつ発行しました。ドル建てよりやや長い期間を採用しているのは、ユーロ圏投資家のニーズを意識したものと考えられます。
ユーロ圏の投資家、特に欧州北部の年金基金などは比較的長めの年限を好む傾向があります。ここに対して40億ユーロの発行を行った結果、集まった需要は1,045億ユーロ。大札倍率は26倍となり、こちらも異例の需要が確認されました。
利回り水準は4年・7年ともにドイツ国債より0.2%ほど高い程度で、フランス・スペイン・イタリアなどと比較すると中国国債のほうが利回りが低い状況です。「そんな低い利回りで中国国債を買うのはどうなんだ」と思われるかもしれませんが、ユーロ建てで人民元リスクを取らなくてもよい点、発行量が少なく希少性がある点、欧州市場で発行される安心感などが投資家を引きつけたと見られています。
中国がユーロ建てで国債を発行する理由
中国が外貨建て国債を発行するのは、中国企業の資金調達を助けるためという意味合いが大きいです。欧州で活動する中国企業はユーロ建ての債券を発行して資金調達することがありますが、その際に基準となる国債が存在していると投資家は利回り判断がしやすくなります。
これはつまり、中国企業がより低いコストで資金調達できる可能性が高まるということです。人民元の国際化は進んでいるとはいえ、世界で最も使われる通貨は依然として米ドル、次にユーロです。中国企業が世界で活動する以上、ドルとユーロでの調達環境を整えることは不可欠ですので、今後もこうした外貨建て国債の発行は続くと見られます。
債券に関する疑問
ここから債券についてのご質問にお答えします。
長期国債で含み損を抱えている日本の機関投資家の話をした際、「債券は満期まで保有するのが普通なのでは」というコメントを多くいただきました。期間投資家の場合、実際のところ、満期まで持つ場合と途中で売ることを前提にする場合とで会計処理の仕方が変わってくる関係で、それを踏まえてそれぞれの金融期間で決定している場合が多いです。
債券の分類
会計上、債券は保有目的に応じて3つに分類されます。そして、それぞれ異なる評価・計上方法が採用されています。(株式の場合は、下記に支配目的を加えた4つに分類されます。)
満期まで保有する前提の場合は「満期保有目的有価証券」として扱われます。この場合、途中で価格が下がっても最終的には元本が返ってくるため、中途での価格変動を損益に計上する必要がありません。超長期債のように価格変動が大きいものは、この扱いにしないと決算が不安定になるため、満期保有を選ぶケースが多いです。
一方、途中売却を前提とする場合は「売買目的有価証券」となり、時価の変動を損益に反映させなければなりません。これは決算に大きな影響を与えるため、長期債では選ばれにくい傾向があります。その中間に「その他」という分類があり、こちらは含み損益を純資産に計上する形になります。
簿価も一定ではなく、買値と満期価格の差額を定期的に償却するアモチゼーションや、逆に利益を積み上げるアキュムレーションといった処理が行われます。これらの処理によって会計上の利回りも変化するで、実務上は複雑な世界になっています。
流動性と長期債の存在理由
ファンドなどの運用機関では会計基準が異なるため、こうした縛りはありません。市場の流動性を見ながら、国債を途中で売却することを前提に運用しています。ここで出てくる「流動性」とは、売りたい時に売れるかどうか、つまり取引のしやすさを示す概念です。
また、「なぜ30年債や40年債のような長期債を発行するのか」という質問もありますが、これは投資家側のニーズがあるからです。長期間にわたり資金を預かる年金基金や保険会社は、長い期間の資産運用を必要とします。新興国では超長期の金融サービスを提供する企業が少ないため、長期債市場が育たないという事情もあります。
30年〜40年というスパンでリスク管理を行うのは非常に難しく、経済環境も劇的に変わる可能性があります。日本の長期国債で起こっている含み損問題も、こうした難しさの中で生じているものです。こうした超長期ファイナンスにはロマンを感じるという人もいるかもしれませんが、実際にはリスクと隣り合わせの世界です。
ご参考
金の取引が人民元建てで行われる可能性が高く、これは人民元圏における新しい金市場の誕生につながります。金は一般的に米ドル建てで取引されますが、人民元建ての金市場ができれば、米ドル依存からの脱却を進める上で大きな一歩となります。
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