「百人一首を旅しよう!」短歌と写真で今と繋がる〜第八回●光孝天皇●〜
「声に出して読みたい名歌三選」
最後は光孝天皇(830〜887)です。鮮やかな描写力に加えてお人柄までじんわり沁みてくる優しい歌。
君がため 春の野に出でて 若菜摘む
わが衣手に 雪は降りつつ

意味)貴方を想いながら春の野に出て若菜を摘みました。まだ寒いので私の袖には雪が降り掛かっていましたよ。(どうぞ召し上がれ)
なんて優しい…!
今でいうギフトメッセージでしょう。
現代でもあまり変わらない、「早春の寒暖差激しい頃の和歌」です。『古今集』詞書にはまだ皇子だった頃、誰かに実際に若菜を贈った時に添えた歌とされ、誰かは具体的には不明ですが恋人や親友だったのではないかと推測されています。
光孝天皇は第58代天皇で、文芸を愛し後世まで仰がれた方。しかも温厚で謙虚な性格であり、家臣への心配りや清貧の逸話まで残したとことん優しい帝でした。

百人一首には何人もの帝が登場しますが悲劇的な生涯を送った方も多いです。(その一人崇徳院については文末の記事を参考にして下さい)
光孝天皇が政争に巻き込まれず名歌を残せた点においても、美しさと清々しさを素直に堪能することができますね。
若菜とは萌え出る若草の総称。「若菜摘み」の風習は『枕草子』にも描かれています。いわゆる春の七草のルーツ。「つつ」は反復・継続の接続助詞。当時の陰暦では1月〜3月(今の2月〜4月)を春としました。俳句の季語と同じですね。

フォト俳句 もりやま
話は逸れますが、2006年に発表されたSuaraの楽曲「キミガタメ」をご存知ですか?悲しみや別れ、儚さと永遠を切々と歌い上げるバラードでありつつ実は非常に色彩感覚豊かな曲です。

「君がため」というわずか五文字に、私たち日本人はDNAレベルで昇り立つような記憶を呼び覚まされるのでしょう。気になった方はチェックしてみて下さいね!
では無粋ながら最後はもりやま作で。
雪かかる 若菜の君ぞ 恋ひしけれ
幸多き身に 何か捧げむ
意味)雪に濡れながら若菜を摘んでくれた貴方に恋をしています。貴方のような幸せな方に、私のような者が一体何を捧げられるでしょうか。(何でもしてさしあげたい)

最後までお読みいただきありがとうございました!次回は紫式部のライバルのように描かれることが多いあの女性をご紹介します。
お楽しみに!!
(第六回・崇徳院、第七回・寂蓮法師については下記をご覧下さい)⤵︎
