超加工食品が心臓を壊す。「カロリー管理してるから大丈夫」では防げない
昼はコンビニのサンドイッチとカップスープ。夜はカップ麺で済ませる。
間食にはエナジードリンクと菓子パン。
「カロリーは計算してるし、そこまで太ってない。だから大丈夫。」
もしあなたがそう思っているなら、この記事はぜひ最後まで読んでほしい。
2026年2月、フロリダ・アトランティック大学の研究チームがなかなか無視できないデータを出してきた。全米の約4,800人の成人を対象にした健康・食事データを分析した結果、超加工食品を最も多くとっているグループは、最も少ないグループに比べて、心臓発作や脳卒中のリスクが47%高かった。

ほぼ1.5倍。
この数字は、年齢、性別、人種、喫煙習慣、収入といった他の原因の影響を差し引いた後の数値だ。「たまたま喫煙者が多かったから」ではなく、超加工食品の摂取量そのものが、独立した心血管リスクとの関連として浮かび上がったということになる。
今回は、この研究の中身と、超加工食品が心臓リスクとどう関係するのか、そして忙しい人が現実的にどう対処できるかについてまとめてみる。
経営者やビジネスパーソンの健康を診てきた立場から言うと、この結果は臨床の現場感覚と完全に一致している。外来で「食事には気をつけてます」と言う人の食事記録を見ると、だいたいコンビニの棚から選んでいるだけだったりする。
※正確にはハザード比(イベントの起きやすさの比)であり、「リスク」そのものとは異なる。生存率が高くイベントが少ない集団では、ハザード比の%表記が実際の絶対リスク差より大きく見える点には注意が必要。
そもそも「超加工食品」って何なのか(NOVA分類)
「超加工食品(Ultra-Processed Foods:UPF)」という概念は、ブラジルのサンパウロ大学の研究者が開発したNOVA分類に基づいている。食品を加工の度合いで4段階に分けたとき、その最上位に来るのが超加工食品だ。
ざっくり言えば、工場で大量の添加物を使って工業的に作られた食品のこと。
裏面の原材料を見て「これは家の台所にはないな」と感じる成分。果糖ぶどう糖液糖、乳化剤、増粘剤、人工香料、着色料。これらが並んでいたら、ほぼ超加工食品と考えてよい。
たとえばカップ麺、菓子パン、スナック菓子、冷凍ピザ、ソーセージやハム、エナジードリンク、マーガリン、ファストフード全般。
逆に該当しないのは、生鮮食品(肉、魚、野菜、果物)、最小限の加工食品(カット野菜、冷凍の素材そのもの)、チーズ・味噌・納豆などの伝統的な発酵食品、自宅で作る料理全般。

味噌も加工食品ではあるけれど、超加工食品ではない。「加工されているかどうか」ではなく「どの程度、工業的に加工されているか」がポイントになる。この区別はけっこう大事だ。
ここで一回、昨日の自分の食事を思い出してみてほしい。朝・昼・夜・間食。上のリストに当てはまるものがいくつあっただろうか。
カロリーの問題じゃない。「加工度」そのものが心臓を壊す(超加工食品の心血管リスク)
今回の研究で一番押さえておくべきは、カロリーの多い少ないではなく、
食品の加工レベルそのものがリスク因子として出てきたという点だ。
「カロリーさえ管理していれば問題ない」という考え方は、栄養学的には20年くらい前の発想に近い。現代の栄養疫学が見ているのは、同じカロリーでも何からそのカロリーをとっているかという「食事の質」の話になる。
では、超加工食品がなぜ心臓血管系にダメージを与えるのか。あなたが昼に食べたカップ麺の中の乳化剤や人工甘味料が、体の中で何をしている可能性があるか。現時点で複数の経路が示唆されている。
ひとつは慢性炎症の誘発だ。超加工食品に含まれる乳化剤や人工甘味料が、腸内細菌のバランスを崩すという報告が複数ある。腸内環境が乱れると腸壁のバリア機能が落ちて、体の中に炎症性の物質が入り込んでくる。これが慢性化すると、血管壁に炎症が起きて、動脈硬化の温床になる。
言ってみれば、腸の"防波堤"がボロボロになって、本来ブロックされるはずのゴミが血管に流れ込んでいる状態だ。
逆に「腸の防波堤を立て直す」具体策は「腸活の正しいやり方|ヨーグルトだけでは意味がない科学的理由と医師が実践する腸内環境の整え方」に書いた。乳化剤で崩れたバランスを、菌(プロバイオティクス)+エサ(プレバイオティクス)の組み合わせで戻す話。
実際に、超加工食品を多くとっている人は、体内の炎症度を測る血液検査の値「高感度CRP」が高いという先行研究もある。高感度CRPは将来の心臓発作や脳卒中を予測する精度の高い指標として使われている。
もうひとつはメタボリックシンドロームの促進。超加工食品の大量摂取は、肥満、高血圧、脂質異常症、インスリン抵抗性(インスリンが効きにくくなる状態)など、メタボの構成要素全部と関連がある。「カロリーが高いから太る」という単純な話じゃなくて、含まれている添加物や精製糖がホルモンバランスや代謝経路そのものに影響を与えている可能性がある。
あとは栄養素の欠乏。超加工食品は脂質やナトリウムが多い割に、タンパク質、食物繊維、ビタミン、ミネラルが著しく足りていない。カロリーは足りているのに、体を守るための微量栄養素が慢性的に不足する。これは地味にきつい。自分が筋トレの文脈でよく言う「PFCバランス(タンパク質・脂質・炭水化物の比率)だけ見てもダメ」という話と根っこは同じだと思っている。
日本人も全然他人事じゃない(超加工食品と日本の食事)
「アメリカの話でしょ?」と思った人もいるかもしれない。
東京大学の研究グループが日本人成人2,742人を対象に行った調査がある。それによると、日本人の1日の総エネルギー摂取量のうち、超加工食品が占める割合は平均して3〜4割に達していた。
アメリカでは成人の食事の約60%が超加工食品とされるので、それよりはマシだけど、3〜4割は無視できない水準だ。特に18〜39歳の若い層では、高齢層と比べて超加工食品の割合が明らかに高いことが報告されている。
日本はコンビニの充実度が世界トップクラスなので、超加工食品へのアクセスが異常に簡単な環境になっている。忙しいビジネスパーソンにとって、コンビニが「第二のキッチン」になっている人は少なくないだろう。自分の外来に来る経営者でも、食事記録とってもらうとコンビニ弁当率が週5とかざらにある。
「健康意識高い人」ほどハマる罠
自分がパーソナルドクターとして経営者の健康を見てきた経験から言うと、高所得で健康意識が高い人ほど、実は超加工食品の罠にはまりやすい。
まず、忙しさが食の選択肢を狭めている。朝はプロテインバー、昼はコンビニのサラダとサンドイッチ、夕方にエナジードリンク、夜は遅くなってカップ麺。心当たりがある人いるんじゃないかと思う。全部超加工食品だ。
それから、「健康的に見える」超加工食品が増えている。「タンパク質○○g配合」「糖質オフ」「1日分のビタミン」といったラベルが貼られた商品は一見すると健康食品に見えるけど、裏面の原材料欄を見ると超加工食品の定義にがっつり該当する。パッケージの表面ではなく裏面を読む習慣をつけないと、ここは見抜けない。
「高タンパク」と書かれていても、食事全体でタンパク質比率が薄まると食欲は荒れる。この話はプロテインレバレッジの記事で、ポテチが止まらない理由として書いた。
あと、食事にかける時間が極端に短い問題もある。経営判断、資金繰り、人材マネジメント。頭の中は常にフル回転で、食事は「燃料補給」になっている。でもその「燃料の質」が心臓を蝕んでいるとしたら、ビジネスにおける最大のリスクは市場でもなく競合でもなく、自分の体かもしれない。
研究者の警告と、この研究の限界
今回の論文の著者らは、超加工食品への意識変革は「タバコと同じパターンをたどるだろう」と指摘している。
かつてタバコは「大人のたしなみ」であり、医師ですら吸っていた。疫学データの蓄積によって、喫煙が肺がんや心臓病のリスクを大幅に高めることが証明され、数十年かけて社会の認識が変わった。
超加工食品も同じ道をたどる可能性がある。今はまだ「便利だから」「安いから」で当たり前に消費されている。10年後、20年後には「あの頃はみんなカップ麺やエナジードリンクを毎日飲んでたんだよ」と振り返る時代が来るかもしれない。
ただし、この研究にはいくつか限界がある。
まず、これはある一時点の食事と病歴の関係を調べたもので、何年も追いかけて因果を証明した研究ではない。つまり「超加工食品をたくさんとっている人は心臓発作や脳卒中が多かった」という関連が示されただけで、「超加工食品を減らせば心臓病が防げる」とまでは言い切れない。超加工食品を多くとる人はそもそも他の不健康な生活習慣を持っている可能性もある。交絡因子の調整はされているが、観察研究の限界として完全な除去はできない。
対象もアメリカの成人約4,800人であり、食文化が異なる日本人にそのまま数字を当てはめるのは慎重であるべきだ。
それでも、超加工食品と心血管リスクの関連は、ヨーロッパやブラジルを含む複数の大規模な追跡調査でも一貫して報告されている。1本の研究だけで結論は出せないが、エビデンスの方向性はかなり揃ってきていると自分は見ている。
今日からできること(超加工食品を減らす具体策)
「じゃあ超加工食品を完全にゼロにしなきゃいけないのか?」
そこまで極端にならなくていい。大事なのは「減らす」こと。
まず1週間で超加工食品を何回口にしているか数えてみてほしい。カップ麺、菓子パン、コンビニ弁当、エナジードリンク、スナック菓子。数えると、たぶん予想以上の回数になる。自分も研修医のときにやってみて引いた記憶がある。
数えるときは、回数だけじゃなくて「そのあと何を足したか」も一緒に確認してほしい。カップ麺のあとにサラダ、菓子パンのあとにプロテイン、エナジードリンクのあとにサプリ。悪いものを食べたあとに健康そうなものを足すと、帳消しにできた気になる。自分もずっとこれをやっていた。
でも少なくとも脳の注意力に関しては、あとから足してもマイナスが帳消しになるとは限らないというデータが出ている。午後になると集中が切れやすい人ほど、この「足して安心する順番」を一度疑ってみるといい。心当たりのある方はぜひ以下の記事を読んでいただければ。
次に、1日1食だけ「素材に近い食事」に置き換える。いきなり全部変えるのは無理だから、1食だけでいい。コンビニでも、ゆで卵+素焼きナッツ+味噌汁の組み合わせなら、超加工食品の割合をかなり下げられる。冷凍ブルーベリーが家にあればヨーグルトに入れるだけで間食も置き換えられる。

あとは裏面の原材料欄を読む習慣をつけること。表のキャッチコピーは無視していい。知らない名前の成分が5つ以上並んでいたら、それは超加工食品の可能性が高い。
できれば週末に作り置きを1品だけ用意する。鶏むね肉を茹でておく。ブロッコリーを蒸しておく。玄米を多めに炊いておく。たった1品あるだけで、平日の食事選択がまるで変わる。筋トレをしている人なら、これがそのままトレーニング食にもなるので一石二鳥だ。
あなたの心臓は、昨日食べたもので動いている
心臓病は日本人の死因の第2位で、その多くは生活習慣に起因する。生活習慣の中で最もインパクトが大きいのが食事だ。
今回の研究が示唆しているのは、「何カロリーとったか」ではなく「何をとったか」が心臓の健康を左右するかもしれない、というシンプルだけど見落とされがちな話だった。
週に何回コンビニ飯を食べているか。エナジードリンクを何本飲んでいるか。
今日の昼、何食べた? その裏面の原材料欄、何行あっただろうか。その確認が、10年後のあなたの心臓を守る最初の一歩になる。本当はもっとメカニズムの話を掘りたかったんだけど、長くなりすぎたのでこのあたりで。
testosteroneさんとの対談でも超加工食品の話をしていますので良かったらご覧ください。
まとめ
米国4,800人研究:超加工食品最多群は最少群より心血管イベントが47%高い(観察研究・ハザード比)
カロリーではなく「加工度」がリスク因子。腸内細菌→慢性炎症→動脈硬化のルートが有力
日本人成人も総カロリーの3〜4割が超加工食品。18〜39歳でとくに多い
「健康的に見える」UPF(高タンパクバー、糖質オフ)に注意。表ではなく裏面を読む
1日1食を「素材に近い食事」に置き換える。週末の作り置き1品で平日が変わる
ここまで読んでくださって、ありがとうございました。
役に立ったら「スキ」をもらえると、すごく励みになります。自分の体でも試した健康の話を、いろんなテーマで、数日に1本くらい出しています。
ぜひフォローしてくれると嬉しいです。
もっと深く知りたい方へ(関連記事)
同じ超加工食品でも、脳への効き方と血管の守り方は別の記事に分けています。
▼ 心臓だけじゃない。脳にも"ゴミ"が溜まる(無料)
本記事の姉妹記事。超加工食品を1日1食増やすだけで、68歳未満はアルツハイマー病のリスクが13%上がっていた(フラミンガム研究)。体重が正常な人でもリスクは残る。心臓を壊すのと同じ「腸→炎症」のルートが、脳でも動いている。40代50代の方に特に読んでもらいたいです。
▼ 心血管リスクを「数字」で追う(メンバーシップ)
人間ドックがオールAだった経営者の頸動脈に、プラークがはっきり映っていた。そこから始まる完全版。本記事で触れた高感度CRPやApoBなど、健診では出てこない項目まで含めて血管の状態をどう読むかをまとめました。
メンバーシップ「Dr.もさりラボ」のお知らせ
カロリーだけを見ていると、超加工食品の問題は見えにくい。
メンバーシップでは、ApoB、高感度CRP、血糖、肝機能、睡眠、会食の頻度をどう並べて見るかまで扱っています。「食べてはいけない」ではなく、忙しい生活の中でどこから引くかを考える場所です。
参考文献
Willett Y, Yang C, Dunn J, et al. Consumption of Ultra-Processed Foods and Increased Risks of Cardiovascular Disease in U.S. Adults. The American Journal of Medicine. 2026.
Shinozaki N, et al. Highly processed food consumption and its association with anthropometric, sociodemographic, and behavioral characteristics in a nationwide sample of 2742 Japanese adults. Nutrients. 2023;15:1295.
Florida Atlantic University. "Ultra-processed foods linked to 47% higher risk of heart attack and stroke." ScienceDaily. February 10, 2026.
※本記事は一般的な健康・医学情報の提供を目的としたものであり、特定の個人に対する診断・治療・医学的助言を行うものではありません。健康上の懸念がある場合は、必ず医療機関を受診してください。記事の情報に基づく行動の結果については、筆者は責任を負いかねます。
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