見出し画像

アオハル放課後ラボ#29『Across the Universe』

ChatGPTにアオハルシリーズ第29話を依頼しました。
イラストもChatGPTへ依頼したものです。


『Across the Universe』


「今日は皆さんに、ちょっとした思考実験をしてもらいます」

理科の先生の声が教室に響いたのは、ちょうど午後の眠気が生徒たちを包み始める時間だった。

「もし、人類が宇宙に移住することになったら、あなたは何を持っていくべきだと思いますか? 自由な発想で考えてきてください。答えに正解はありません」

ざわつく教室。課題の提出は明日。

「宇宙で生活とか、ピンとこねぇな」 と慎也がつぶやくと、隣の席の結衣はすでに真剣な表情でノートを開いていた。

放課後、科学準備室。
窓の外では吹奏楽部の練習音がかすかに聞こえている。

「……で? 結衣は何書くのか決まったのか?」

慎也が部室に顔を出し、白衣姿で資料を整理していた結衣に尋ねた。

「まだ。持っていく“もの”って言っても、移住先によるわ」

「例えば?」

「火星みたいな惑星か、スペースコロニーか。現実的なのはスペースコロニーだと思う」

慎也は椅子にどさっと座る。

「スペースコロニーって、あの……筒の中に町があるやつだよな。空が真ん中にあって、地面が内側っていう」

「そう。スタンフォード・トーラス型やオニール型が有名ね。筒状の構造を回転させて人工重力を生み出す設計。技術的には、すでに地球低軌道での建設構想や材料研究は進んでるわ。地球近傍に置けば太陽光も利用しやすく、物資の輸送もまだ現実的な距離に収まる」

「なるほどな……。ところで、さ。そこって雲ってどこにできるんだ?」

結衣はくすっと笑った。

「面白い疑問ね。人工重力は筒の回転で作っているから、中央の軸付近は無重力。上昇気流で水蒸気が昇ると、そのまま軸の近くに滞留して雲になる可能性が高いわ」

「なるほど、空の真ん中に雲が浮いてるのか」

「ええ。しかも、人工太陽が軸に沿って配置されているから、雲が光を遮ることで“天気の変化”も演出できる」

「ってことは、季節も全部つくるのか?」

「そうね。照明の色や温度、湿度、植物の育成周期まで、人の手で“春夏秋冬”を再現するの。心理的健康を保つためにも、四季の演出は重要とされてる」

慎也は腕を組んで考え込む。

「でも、火星とかの惑星移住も夢あるよな?」

結衣は頷きながらも、少し真顔になる。

「惑星移住は確かに夢がある。でも課題が多すぎるの。たとえば火星なら、大気が二酸化炭素主体で酸素がない。気圧も地球の100分の1以下、寒さも極端で、放射線も強い。住むためには完全に密閉されたドームを作り、水も空気もすべて人工的に循環させなきゃならないわ。着陸のコストも膨大よ」

「それでも、重力があるってメリットあるんじゃないの?」

「ええ。火星の重力は地球の約3分の1。それでも、長期の無重力環境よりは人体への負担が少ない。大地に根を下ろす“感覚”も、たしかに大きな魅力ね」

慎也はふと、呟くように言った。

「……なんかさ、地球ってスゲーよな。全部、備わってるって気がする」

結衣は静かにうなずいた。

「地球には、広さがある。時差がある。天気がある。不規則で、不安定で、でもそれが“生きてる”ってことなのかもね」

「……アニメでさ、宇宙で育ったやつが地球に憧れるってあるじゃん。あれ、わかる気がしてきた」

「地球って、完璧じゃない。でも、ゆらぎがある。“そよ風”とか、“うっかり雨”とか。そういう不確かさが、人の心をほどくのよ」

慎也は目をそらして照れくさそうに言った。

「なんか俺たち、地球に生まれて、ラッキーだったのかもな……」

その言葉に、結衣はそっと笑って答えた。

「……ほんと、たまにはいいこと言うのね、慎也」



翌日の放課後。校舎裏の菜園。

物理科学部は、園芸部との共同活動で、土壌のpH測定と栄養分析を担当していた。

結衣が水やりの準備をしていると、スコップを持った慎也が現れた。

「……なんか、昨日の話してたらさ、急に“土”を触ってみたくなって」

結衣は驚きながらも微笑んだ。

「ようこそ、原始地球人のみなさん」

「おい、原始人みたいな言い方すんな」

「ふふ。でもわかる気がする。人間って、“手の感覚”で何かを確かめる生き物だから」

土を掘り返しながら、慎也がぽつりと言う。

「でもさ、未来の宇宙じゃ、合成タンパクとか水耕栽培で食料は足りるんだろ? 土で野菜作るより、たぶん効率いい」

「……それでも人は、土に触れたがると思うわ」

結衣は少し手を止めて、夕陽に照らされる畑を見渡した。

「効率や数値じゃなくて、感覚として“育てている”“つながっている”という経験が、たぶん人間らしさを保つために必要なのよ。自然に触れる行為って、機能じゃなくて存在そのものに意味があるのかもしれない」

慎也は黙って、手のひらの土を見つめる。

「……でさ、結衣。おまえ、課題には何て書いたんだ?」

結衣はスコップを立て、そっと答える。

「“春の風”って書いた。説明できないけど、それがないと私、私じゃなくなりそうな気がして」

慎也は少し笑って、肩をすくめる。

「俺は、“季節のある惑星に帰るチケット”って書いた」

「それ、誰と帰るの?」

「さあな。でも、誰かと一緒じゃなきゃ、春の風も味気ないだろ」

風が、二人の間をやさしく吹き抜けた。


アオハル放課後ラボ#29『Across the Universe』 ーーー 終



いいなと思ったら応援しよう!

ハクセキレイ よろしければ応援お願いします! いただいたチップはクリエイターとしての活動費に使わせていただきます!