アオハル放課後ラボ・番外編⑩『FAKE IT』
ChatGPTと一緒にアオハル放課後ラボの番外編を制作しました。
イラストもChatGPTに作ってもらいました。
『FAKE IT』
昼前の教室。空調の音が静かに響くなか、プロジェクターが点灯する音がした。
「さて、今日の情報Ⅰのテーマは、ネットリテラシー、“偏り”についてだ」
高輪先生がスライドを映す。
画面には、大きな問いが浮かび上がる。
『自分の世界は、誰がつくっているのか?』
「たとえば──君たちが動画サイトで“面白そう”と思って観た動画。次に出てくるのは、大体“似たような動画”だよな」
慎也が、うんうんとうなずいている。
「これは偶然じゃない。アルゴリズムっていう仕組みが、過去の行動をもとに“君が興味を持ちそうなもの”を勝手に選んで、表示してるんだ」
陽菜が、少し驚いた顔をした。
「だから、“自分で選んでる”ようで、“選ばされてる”ってこともある。似たような情報ばかり見てると、自然と“それが普通”に思えてくる」
黒板に先生が言葉を加える。
フィルターバブル:
情報の偏りによって、他の視点が見えなくなる状態
「強い言葉、刺激的な表現、数字、演出、そういうのが先に目に入るように並べられている。“感情が動く順”で配置されてるんだ」
スライドが切り替わり、こう表示された。
■ 流されないために必要なこと
・出典を確認する
・一次情報にあたる
・異なる情報源を比べる(最低3つ)
・感情ではなく構造を見る
「これができれば、流されにくくなる。“知らずに巻き込まれる”のを防げるんだ。覚えておくように」
生徒たちは静かにノートを取り続けていた。
結衣は少し顔を上げ、ふと何かを考えるように、視線を窓の外へ向けた。
放課後、帰り支度をする教室で。
「なんか、自分が非現実空間にいるような…」
陽菜が言った。リボンを直しながら振り向く。
「“世界が自分好みに偏ってく”って、なんか夢をみさせられてるようで、怖い気分…」
「うん。だからこそ、“選ばない自由”ってのも、必要なんだろうね」
結衣が教科書をまとめながら答えた。
「……でも、慎也には難しそう」
「うん……慎也くんは夢の中で楽しんじゃいそう」
二人は苦笑した。
その夜、慎也の家。
夕食後、カレーライスの皿を流しに置いて、リビングでごろりと横になっていた慎也のもとに、妹がスマホを持って駆けてきた。
「お兄ちゃん!これ見て!マジでやばいやつ!」
「なんだよまた……」
「“ヴォイニッチ手稿”、知ってる? いままで誰も読めなかった謎の本! それをAIが解読したんだって!」
「マジで!?」
妹が再生ボタンを押すと、画面に荘厳なBGMとともに、古文書のページが現れる。
速報です。長年研究者が取り組み解読不能とされてきた『ヴォイニッチ手稿』がAIにより解読に成功。2027年新感染症、2030年環太平洋M8連鎖地震、2035年全世界デジタル通貨統合を予見されている事が判明しました。専門家によると過去の事象とも合致しており“統計的整合性は非常に高い”とのこと。別チームの二重解析でも同結果が出ています。しかし、既に査読前のプレプリントは削除され、研究者は謎の疾走――」
「すっげぇ……!」
慎也は妹と顔を見合わせた。
「AI、やっぱスゲェな……!人間より賢いってほんとだわ……!」
そして翌朝の教室。
教室のざわめきの中、慎也が机を叩いて立ち上がった。
「なあみんな、昨日の夜すげぇ動画観たぞ!“ヴォイニッチ手稿”がついにAIで解読されたんだってよ!」
結衣が目を閉じたまま深く息を吐いた。
「ねえ……、昨日の授業で何を勉強した?」
「えっ?」
「“感情が動く情報ほど疑うべき”って、聞いたよね? “出典と再現性を確認する”って、板書したでしょ」
「いやでも、それAIが言ってたんだぞ? そりゃ信じるだろ!」
「もう一回、放課後、科学準備室に来て。見せたいものがある」
「え、また怒られる……?」
陽菜が吹き出した。
「私も行っていい?」
結衣はうなずいた。
放課後、科学準備室。
窓際の机に三人が並ぶ。
結衣はタブレットを開いて言った。
「一つ、動画を観てもらうね」
画面に再生されたのは、ニュース風の映像。
「東京地下に隠された幻の高速鉄道計画、AI解析で存在が裏付けられる」
2025年9月、ある海外の研究チームが公開したAI解析結果が大きな波紋を呼んでいる。
解析対象となったのは、戦後に撮影された航空写真数百枚。AIは通常では見えにくい地下構造の影を抽出し、「東京駅から皇居の地下を通り、霞ヶ関、その先は八王子付近まで続くトンネルらしき痕跡」を示したという。
さらに、当時の鉄道計画資料と照合した結果、未公開の「首都防衛用高速鉄道網」が存在した可能性をAIは90%以上の確度で示したとされる。
一部の専門家は「冷戦期に極秘裏に建設されたものではないか」と指摘し、ネット上では「政府が隠し続けた都市伝説がついに現実となった」と騒がれている。
ただし、この解析について公式の発表や確証はなく、関係機関も「そのような施設の存在は確認されていない」などと否定している。
慎也が食い入るように画面を覗き込む。
「……これ、スゲーな! マジで地下にそんなのあったのか!?」
「信じる?」
「だってAIが解析したって……こんなに映像も証言も揃ってるんだろ!?」
結衣は静かにタブレットを止めた。
「これ、私が作ったものだよ」
「……えっ?」
「ナレーションはAI音声。原稿はChatGPTに、“もっともらしい都市伝説のフェイク記事を書いて。授業で使いたいから”って頼んだの。高輪先生が授業に使うのための動画制作を手伝ってた。一応、先生に早めに見せていいか断ったけど」
慎也は目を見開いた。
「ちょ……じゃあ……」
「そう。嘘。でも、嘘っぽくないように書かせた。画像はフリー素材を加工して、AIボイスで信じたくなるトーンにしてね」
陽菜が目を丸くする。
「……怖……」
「AIは嘘をついたわけじゃない。指示通りに作っただけ。文脈よ。たぶん、人を騙したいから作ってって言えば、ChatGPTは拒否するわ。授業でネットリテラシーの資料映像として、という文脈で作れば作れてしまう。つまり“使う側”に悪意があれば何でも作れる。それをどう使うかで“嘘にも真実にもなる”。そこを見抜けないと、いくらでも騙される」
慎也は机に突っ伏したまま呟いた。
「……完全にやられた……」
結衣が静かにうなずいた。「だから一歩引いて検証が重要なの。 90%って何と比べた? 一部の専門家って誰?ってね」
「YouTube、怖い…」陽菜がつぶやく。
「だから鵜呑みにしない。感情に流されないことが大切」画面をみつめる結衣。
慎也はゆっくり顔を上げ、ぽつりと続けた。
「でもさ……感情って、本当にそんなに警戒すべきものなのかな。なんかさ、みんなで盛り上がるときとか、何かに一致団結するときって、だいたい感情が先に動いてるじゃん。そういうのまで“疑え”って言うと、逆に冷めすぎてつまんないっていうか……」
結衣は少しだけ目を細めた。
「うん。慎也の言うことも、わかるよ。感情を動かすものすべてが悪いわけじゃない。“感動”や“共感”は、人をつなげる力にもなる。でもね……」
結衣はゆっくり眼鏡を持ち上げた。
「問題は、“それが事実かどうか”を判断するときに、“感情だけ”で決めてしまうこと。それが嘘だったとき、盛り上がってた分だけ、誰かが深く傷ついたり、信じすぎて判断を誤ったりする」
「……うわ……なんか重い話しだね……」陽菜が顔をこわばらせる。
「だからね、感情は使っていい。でも、“感情を頼りにしすぎない”って、意識しておくこと。それだけでも、ずいぶん違うはず」
陽菜うなずいて、そして笑った。
「慎也くんには、ちょっとハードル高そうだね」
「うっせーよ!」
三人の笑い声が、夕暮れの科学準備室にふたたび広がった。
アオハル放課後ラボ・番外編⑩『FAKE IT』 ーーー 終
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