アオハル放課後ラボ・番外編⑨『45』
ChatGPTと一緒にアオハル放課後ラボの番外編を制作しました。
イラストもChatGPTに作ってもらいました。
『45』
放課後の科学準備室。
机の上にはノートとプリントが散らばり、実験用のガラス器具がいくつか乾かして置かれている。結衣はメガネをかけ直し、PCを閉じたところだった。
そのとき、ドアが開いて慎也が入ってきた。肩に道着袋を抱えている。
「えっ、道着? 珍しいじゃん。幽霊部員がやっと復活?」
からかうように言うと、慎也は真剣な顔で首を横に振った。
「やめてくれよ。今日は真面目に相談がある」
その雰囲気に結衣は姿勢を正した。慎也はスツールに腰を下ろし、道着袋を足元に置いて話し始めた。
「実はさ、柔道、三段までは順調に行ってたんだけど、この一年くらい伸び悩んでてさ。気持ちが入らなくて、練習も休みがちになってたんだ。だから発想を変えようと思って、合気道とか剣道の友達に声をかけて、体験させてもらったんだよ」
「へぇ……研究熱心じゃん」
「でもさ、どこに行っても同じ言葉を聞いたんだ。“45度”ってやつ」
結衣がメガネ越しに目を細める。慎也は指を折りながら続けた。
「合気道だと、正面から受けずに45度に体をずらせ、って。剣道は斜め45度の袈裟斬りが基本。足さばきもまっすぐじゃなくて斜め前とか斜め後ろに45度で入れ、って言われた。弓道やってるやつは、足の開き方が45度くらいで安定するとか。――結衣、45度って何か特別なのか?」
結衣はすぐに答えず、少し考え込んだ。
「……いま、忙しい? 迷惑だったかな」
「違うよ。ただ、簡単に答えられる話じゃないの」
結衣は小さなホワイトボードを手に取り、ペンを走らせ始めた。
「まず、ピラミッド。ギザのクフ王のピラミッドの傾斜は約51.8度で少し例外的。50度を少し超えてるけど、ほぼ他のピラミッドは45度に近い角度。高さと安定を両立するために、結局そのくらいに落ち着いた。崩れにくく、しかも見栄えもいい。だから人類最大の建造物に選ばれた角度がこのあたりだった」
「なるほどな……」
「避雷針もそう。昔の考え方では、避雷針の先から45度の角度で地面に広がる範囲が安全圏とされた。実際には建物の高さによっては20〜45度の範囲で変わるけど、基本はやっぱりこの角度で考えられてる」
「へぇ、雷も45度か」
「階段もだよ。日本の住宅なら、登りやすい限界の勾配は40〜45度。これ以上急だと、手すりなしじゃ危険。逆に30度だと緩やかすぎて場所をとる。人の脚力と重心の移動を考えると、この角度がちょうどいい」
結衣はさらに円を描き、線を引く。
「虹もある。太陽の光が水滴で屈折・反射すると、主虹はだいたい42度の位置に現れる。副虹は50度前後。つまり空を見上げるとき、虹はだいたい45度前後の高さに見えることが多い」
「すげぇ……自然現象も?」
「数学にも出てくる。直角二等辺三角形。角度は45度で、辺の比が1:1:√2になる。これは必ず教科書に出てくるよね」
結衣はひと通り例を挙げ、ペンを止めた。眉間にわずかにしわが寄る。
「こうして並べると確かに多い。でもね、“なぜ45度なのか”をひとつの理由で説明するのは難しい。分野ごとに事情が違うし、例外もある」
慎也はその表情を見て、少し驚いた。
「……結衣でも困るんだな」
「当然だよ」結衣は苦笑いする。「私は科学の知識で説明できることしか言えないから。でも、45度は本当にいろんな場面に顔を出す。不思議なんだよ」
「いや、ありがとう。無理言ったな」
「いいの。ちょっと考えさせて」
翌日、選択授業の日。
咲良がスケッチブックを抱えて廊下を歩いていた。
「芸術の授業?」と結衣。
「“45度を取り込んで絵を描いてこい”って言われたんだけど、自信ないなぁ」
「え?? 45度!?」結衣と慎也の声が同時に出た。
「なに? どうしたの?」咲良が目を丸くする。
「詳しく聞かせて!」と慎也。
「じゅ、授業で先生に理由を聞いてくる。放課後、科学準備室に行ってもいい?」
「絶対来て!」結衣は勢いよくうなずいた。
放課後。科学準備室。
咲良が恐る恐る扉を開けると、二人が待ち構えていた。
「それで!?」二人の声が重なり、咲良はのけぞった。
「こ、怖いよ……。先生の話ではね、“45度は安定と動きを両立できる角度”なんだって。肖像画なら真正面よりも45度の斜め顔の方が自然で立体的に見える。透視図法でも45度の線を入れると奥行きが出る。浮世絵も、橋や波を斜めに配置することで視線が動かされる。書道だと、払いの角度は45度前後が一番きれいに見えるんだって」
スケッチブックを開くと、斜めの線がたくさん描かれていた。
「安定、か……」結衣が小さくつぶやく。
彼女は咲良に、昨日の慎也との会話をかいつまんで説明した。武道、建築、数学、自然現象。どこでも45度が顔を出すが、ひとつの説明にまとめられないこと。
咲良は少し考えてから言った。
「黄金比ってあるよね。1対1.618。その比率から出る角度がだいたい51.8度で、クフ王のピラミッドに近いんだって。美しくて安定するって。――“安定して美しい”じゃダメ?」
「……」結衣は俯く。
「それに、人の身体にも合ってるんじゃない? 階段とか屋根とか、本を立てかける角度もそう。生活の中にたくさんあるよ。地球全体でそれがちょうどいいってことなんじゃない?」
「地球……?」顔を上げた結衣の声が震えた。
「え?」咲良が目をぱちぱちさせる。
「そうかも! それだ! 地球だ!」結衣は立ち上がって声をあげた。
慎也と咲良がびっくりして彼女を見る。結衣はタブレットを引き寄せて図を描き始めた。
「投射運動で言うとわかりやすい。真空なら45度で飛距離が最大。でも地球には空気があるし、人の腕は角度によって出せる速さが違う。だから実際は30〜40度の方が遠くまで飛ぶこともある。つまり地球の条件が重なって、結果として45度前後が“最適”になってる」
階段の断面を描いて見せる。
「階段もそう。重力9.8m/s²と人の脚力のバランスで、40〜45度が限界。雪国の屋根も同じ。45度を超えると雪が自然に落ちる」
肖像の顔を斜めに描く。
「美術だって。首や目の可動域、顔の立体感、光の入り方。地球の重力の中で動く人間にとって、咲良ちゃんが言った通り、斜め45度が一番自然で見やすい角度なんだよ」
さらに円を三つ描いて「地球」「月」「火星」と書き込む。
「もし違う星なら変わる。月は重力が地球の6分の1だから、階段はもっと急でも登れるし、砲弾を飛ばすなら最適角度は30度くらいになるかもしれない。つまり――45度は宇宙共通の魔法じゃなくて、“地球だからこその安定角”なんだ」
慎也は思わず笑った。
「昨日の悩んでた顔と全然違うな。やっと戻った」
「なんで慎也君まで嬉しそうなの?」咲良が茶化す。
「え? いや、だって、仮説にせよ、方向が見えたからさ」慎也は頬をあからめ肩をすくめた。
「よし、甘いもんでも食べに行こう。アイス、どうだ?」
「賛成!」咲良が即答する。結衣も笑顔でうなずいた。
三人は並んで科学準備室を後にした。
アオハル放課後ラボ・番外編⑨『45』 ーーー 終
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