見出し画像

Futureを持たない組織は、過去由来の判断になる。|フューチャードリブン経営論

DXを導入する。
生成AIの活用を始める。
社員にリスキリングを促す。
経営塾やセミナーへ通い、コンサルタントを入れる。
異業種交流会にも参加し、新しい情報や人脈を集める。

どれも、会社の将来を考えている経営者が行うことです。

時間も費用も使い、変化に遅れないように動いている。
だから、
「自分たちは未来へ向けて準備をしている」
と思っています。

それでも、会社が変わったという実感がない。

業務の一部は効率化され、新しい知識や仕組みも増えた。
しかし、
社員の判断や仕事の進め方は大きく変わらず、
会議で交わされる言葉も以前のままです。

期待したほどの変化が見えなければ、また別の施策や専門家を探し始めます。

会社を変えようとして、経営者は動き続けます。

しかし、新しい施策を探す前に、確かめなければならないことがあります。

「その会社は、自社をどうしたいのでしょうか。」

施策の前に、Futureはあるか

DXによって、どのような会社を実現したいのでしょうか。
AIを使うことで、顧客への価値提供や社員の働き方をどう変えたいのでしょうか。
リスキリングの先に、どのような組織になっているのでしょうか。
コンサルタントには、何を実現するための力を借りたいのでしょうか。

この問いに答えられないまま、新しい施策だけが次々と入っている会社は少なくありません。

会社のFutureを実現するためにDXやAIが必要になったのではなく、
Futureを描けないため、
DXやAIを取り入れれば何かが見えてくるのではないかと期待する。

自社に必要なものが分かったから経営塾やセミナーへ行くのではなく、
そこで学べば、
これから何をすればよいかを教えてもらえると思う。

実現したい会社像と現在との間に不足が見えたから
コンサルタントを入れるのではなく、
自分たちだけでは将来像を描けないため、
答えを見つけてもらおうとする。

これらに共通しているのは、
Futureを実現するために外部の知識や力を取り入れるのではなく、
外部から何かを取り入れることで、
Futureまで見つけようとしていること
です。

Futureが先にある会社は、実現している将来の会社像から現在を見ます。

そこで初めて、現在の会社に足りない知識、技術、人材、仕組みが見えてくる。

自社だけでは補えないものがあるから
コンサルタントの力を借り、
必要な知識を得るために経営塾やセミナーへ行き、
必要な機能を実装するためにDXやAIを使います。

この順番であれば、外部の知識や施策は、会社のFutureを実現するための手段になります。

一方、Futureがない会社は、
セミナーで聞いた話から自社の課題を決め、
経営塾で教わった経営モデルから目指す姿を考え、
コンサルタントが示した選択肢から会社の方向性を選びます。

世の中で「これから必要だ」と言われているものを取り入れ、自社も未来へ向かっていると考える。

問題は、外部を使うことではありません。

会社のFutureから必要なものを選んでいるのか。
それとも、
必要だと言われているものを集めながら、会社のFutureをつくろうとしているのか。

順番が逆なのです。

自分で選んだことが、自分でFutureを決めた証拠にはならない

経営者本人は、誰かに会社の方向性を決めさせられたとは思っていません。

自分で情報を集め、比較し、決裁しています。
だから、
自分で考えて決めたと思います

しかし、
何を問題とするのか、
これから何が必要なのか、
どのような状態を目指すのか、
何を選択肢として検討するのか。

その前提まで外部から受け取っているなら、用意された問いに答え、用意された選択肢から選んでいるだけかもしれません。

これは、誰かに強制されているという話ではありません。

外部から示された考え方が、自社にとっても当然の課題に見える。
世の中で必要だと言われるものが、自社にも必要だと感じられる。
しかも、自分で調べ、自分で選んでいるため、それを自分たちの判断として受け取ることができます。

新しい情報も取り入れた。
専門家の意見も聞いた。
社員とも議論した。
費用をかけて施策も実行した。

そこまでやれば、
将来について十分に考えたと思うのは当然です。

それでも、自社がどのような会社になるのかという判断は、まだ行われていないことがあります。

Futureの空白には、過去由来の判断が入る

Futureを持たない会社は、判断基準を持たない会社ではありません。
Futureがないからといって、自由に判断できるようになるわけでもありません。

未来側の判断基準がなければ、その空白には、これまで会社が使ってきた判断基準が入ります。

過去の成功と失敗、
現在の売上、
既存顧客、
社員の能力、
今ある設備、
これまでの取引関係。

現在の会社をつくってきたものが、そのまま次の判断を決めます。

未来について考えていることと、
未来を起点にして判断していることは違います。

来期の計画をつくっていても、その基準が過去の実績であれば、その計画は過去由来です。
新しい技術を導入していても、何のために使うかを現在の会社が決めているなら、その施策も過去由来になります。

Futureを持たない組織は、判断をしなくなるのではありません。
過去と現在を基準に、これまでと同じ判断を続けます。

攻めに見える施策が、守りの経営に使われる

FutureがないままDXを導入すれば、
現在の業務をより効率よく続けるために使われます。

AIを導入しても、
今ある仕事を少ない人数で処理する方向へ向かう。

社員が新しい知識を学んでも、
現在の事業へさらに適応するために使われる。

コンサルタントを入れても、
求めるのは現在の売上や利益を減らさず、
今の事業をより安定させるための答えです。

現在の事業を効率化し、既存顧客を守り、利益を確保することは、必要な経営判断です。
問題は、それを未来へ進んでいることと同じだと思うことです。

新しい技術を使い、新しい事業を始め、新しい知識を学んでいる。
外から見れば、会社は攻めているように見えます。
経営者自身も、攻めの経営をしていると思っています。

しかし、その施策を選ぶ理由が、
競合に遅れたくない、
今の売上を失いたくない、
現在の業務を止めたくない
というものであれば、
判断の中心にあるのは、現在を失わないことです。

やっていることは新しくても、守ろうとしているものは今の会社です。

頭では攻めの経営をしているつもりでも、
組織のマインドは全力で守りに入っています。

現在の成功を再生産する組織になる

前の記事では、会社が成長するほど、過去の合理的な判断が「べからず集」として残っていくことを書きました。

会社を守ってきた正しい判断が、前提やルールとなって組織に残り、現在の成功を守ることに長けた会社をつくっていきます。

その会社にFutureがなければ、新しく取り入れた施策も、既存の判断基準の中へ組み込まれます。
DXもAIもリスキリングも、現在の成功をより効率よく再生産するために使われる。

新規事業は、現在の事業へ損失を出さない範囲で進められ、採用ではFutureに必要な人材より、現在の会社へ適応しやすい人材が選ばれる。

誰かが、保守的な会社をつくろうとしたわけではありません。

営業は、現在の顧客を失わないように考え、
現場は、今の仕事を滞りなく回すことを優先する。
管理職は、失敗しにくい方法を選び、
経営者は、売上、利益、雇用、信用を守ろうとする。

一つひとつは、会社に必要な合理的判断です。

しかし、それぞれが現在を守るために合理的な判断を重ねれば、組織全体は現在の成功を再生産する方向へ最適化されていきます。

誰も保守的な会社をつくろうとしていない。
それでも、結果として会社は保守的になる。

会社を変えるために入れたはずの施策が、「現状の会社」をより強固にしていきます。

だから、期待した変化が起きなければ、また別の施策や専門家を探します。

しかし、Futureがないままなら、次に選ぶものも、今の会社で使いやすいか、すぐに成果が出そうか、現在の売上を減らさず導入できるかという、同じ判断基準から選ばれます。

そうして選ばれた施策は、再び現状の会社へ最適化されます。

Futureが、必要なものと不要なものを決める

不足しているのは、新しい施策ではありません。
先に必要なのは、Futureです。

Futureを解像度高く描いたとき、初めて、現在の会社に足りないものが見えてきます。
同時に、すでに持っているもの、これからも残すもの、Futureには必要のないものも見えてきます。

その不足を補うためにコンサルタントを使い、
必要な知識を得るために経営塾やセミナーへ行き、
必要な機能を実装するためにDXやAIを導入する。

Futureが先にあるからこそ、何を取り入れるかだけではなく、何を取り入れないかまで判断できます。

外部の知識や専門家を使うことが問題なのではありません。

Futureを実現するために外部を使うのか、
外部から得た答えによってFutureまで決めようとするのか。

その順番が、外部の力を会社を変える手段にするのか、現在の会社を再生産する材料にするのかを分けます。

Futureを持たない組織は、過去由来の判断になる

その組織は、
未来へ進んでいるつもりで、
新しい施策を現在維持のために使います。

頭では攻めの経営をしているつもりでも、
組織のマインドは現在の成功を守る方向へ入っていきます。

そして、その変化は、
最初に数字へ表れるとは限りません。
売上も利益も、しばらくは伸び続けることがあります。

それより先に変わるのは、組織の中で交わされる言葉です。

会議で、提案より確認が増える。
可能性より前例が重視される。
Futureに必要かどうかより、社長がどう考えるかが先に読まれる。

現在の成功を再生産する組織が、日常の言葉と判断にどのような兆候を見せるのか。

次の記事では、その変化を見ていきます。

いいなと思ったら応援しよう!