月刊AIレポート 連携編(通巻10号)
~作業机がCLIになった月、AIは種として増え続ける~
今月の一言
作業机(IDE)を守る時代から、作業机そのものを作り替える。
先月は「ACPの思想に強く共感した」と書いた。
AIは入れ替わる。しかし作業机は残る。
今月はその続きを、自分の手で実践してしまった。
n8n、Dify、Activepieces、Flowise、Langflowで開発をしてみようと思っていた。しかし1か月経って振り返ると、実践で使っていたものは先月とがらりと変わっていた。
今月の一言まとめ
● 今月の推し:CLI版LLM(特にKiro-cli, Freebuff)
● 今月の変化:Zedの出番が激減、Tolariaが新たな定位置に
● 今月の造語:ボーンAIネイティブ(Born AI-native)
● 今月の結論:作業机を捨ててCLIそのものが作業机になった。しかしAIはこれからますます入れ替わる。
特集1:アウトライナー難民、Tolariaに辿り着く
Logseqはほとんど開かなくなった。Obsidianも時々使う程度。どちらも開発のコンセプトは気に入っているが、開くまでの時間が長い。タグ分類を自分でやらないといけない。
超高速稼働で、開きっぱなしになったのはTolariaだった。Mem0でも入っているのかな?と調べたら、シンプルにベクトル検索(Embedding)がネイティブ実装されているようだ。これは強い!整理しないでアイディアの欠片を放り込めるから、ナマケモノな私によく合う。
タグ付け不要でメモを探せる。
AIに読んでもらえる。
AIを簡単に招待できる(MCP機能標準装備)。
同じWifi範囲(小さなオフィス)がMarkdownで地続きにできる。
今から使うなら、自分で集めたメモをAIが容易に整理できるメモ一択、というのが今月の結論だった。
特集2:CLI版LLMに一か月住んでみた
先月まで毎日使っていたZed(IDE)は、出番が少し減った。とはいえ、Zedが提唱するACP(Agent Client Protocol)は、これから発展すると思っている。Cursorは4年使ってなかったら今風になっていた。いいかも。
今月多用したのは、ターミナルで動くCLI版LLMだった。ワンライナー一発で動くAiderも軽く使い始めた。APIキーを持っている主要LLMはすぐに動く。Open Source(Ollama系)は、Ollamaに入っているモデルをそのまま指定できる。クラウド上のLLMもローカルもシームレスに選べる。
Aiderが凄いのではなく、誰でも呼べる自由度がいい。
まるで某国の大使館エリアで毎週末DJをやらせてもらっていた頃のバーだ。その自由な空間を思い出した。雑魚も神も同じ箱でプレイできた。
一番長い時間使ったのは、CLI版LLM:AWSのKiro-cliだった。
# 初回起動
kiro-cli
# エージェント指定で起動
kiro-cli --agent my-agent
# すべてのツールを信頼して起動
kiro-cli --trust-all-toolsプロジェクトのフォルダを見てもらい、早い段階でSkillsを作ってもらえば安定する。
言い方は悪いが、よく考えてみると、外枠をElectronで作った箱がIDEだった。CLI版の方が開発に没頭できる。一度この快適な開発をやってしまったら、CLI版の方が集中できる。ごめんなさい、VSCode+Cline も、ZedもAntigravity IDEも、気づいたら使ってなかった。同じような感覚で無料のCodebuff、FreebuffもKiro-cliと交互に使っている。
AIと私が共同で何週間も仕事を続けるためには、CLI版のAIが良い。それが確信できたのは、映像から物体検出を行うYOLOシステムのようなプロジェクトを、人とAIが囲んで話し合いする体験だった。これは「こんにちは!」「バイバイ」という1つのスレッドで完結するような、普通のWEB版LLMだけの世界とは違い、毎日一緒の職場のようなものだった。
こういう場で働くとスキルが上がる。
特集3:ワークフロー層の使い分け
ぼんやりとフローを妄想するときは、Node-REDがいい。チャンクダウンしたい小型のアルゴリズムは、Scratchの方がヒラメキが多い。何もAIが無くて、それが逆にいい。
パイプライン化するなら、Difyもn8nもいいが、Windmillならaiが喜んでやってくれる。
コード寄りで、実装の案を練りたい時はWindmillがいい。パイプライン化したり配布する段階でコンパイル型言語にリファクタリングすればよい。プロトタイプを即席で動かしてみるなら、ワークフローが長くなりそうなら、フレームワークが豊富に選べるからPythonがいい。
先月号の予告で「Node-RED、n8n、Difyは本当は競合なのか?それとも役割の違う仲間なのか?」と書いていたが、今月もまたNode-REDしか使ってなかったので、これはまたいつか書く。
特集4:AIは、生物のように増える
CLIそのものが作業机になった。だが、AIは益々入れ替わると思っている。
地球上の生物、動物の種類は無限にある。AIが生まれたとき、ChatGPTのようなAIが「神」だった。そして今は、Mythosのような上位モデルが「神」の座にいる。しかしこれから先は、地球上の人口と同じか、それ以上にAIが誕生するように感じている。
いちいちAIの名前とスペックを調べる時代は、もう終わる。目指すのは、どのAIとでも仕事をやれる状態だ。
作業机(Kiro-cli、Aiderなど)さえ固定できれば、中身のAIは種として増え続けても構わない。ACPの思想を先取りして自分の手で実践し、さらにその先にある「AIの爆発的多様化」まで見据える必要がある月だった。
ボーンAIネイティブという言葉
今月あちこちのOSSを触っていて気づいたのは、最近登場する新しいツールの多くが、登場した時点からすでにネイティブでAI連携ができているということだ。
後からAIチャット窓を追加した「AI-first」とは質が違う。MCPサーバー標準装備、AGENTSファイルの自動生成、Git安全網と組み合わさったAIエージェントの読み書き権限など、プロトコルと権限設計そのものがAI利用を前提に組まれている。
これを「ボーンAIネイティブ(Born AI-native)」と呼ぶことにした。生まれた時からAIネイティブ、という意味だ。Tolariaが自称する「AI-first, not AI-only」という言葉も、実質この「ボーンAIネイティブ」の一種の自己定義と言える。
今月Tolariaを開きっぱなしにしていた理由(タグ付け不要、AIが読める、MCP標準装備)は、まさにこの世代のツールの特徴そのものだった。
📰 ニュース速報
🟢 n8n、MCP周りの機能拡張が加速
2026年5月19日リリースでは、MCPサーバーを手動設定なしにエージェントが選択できる機能が追加され、Apify・Linear・monday.com・Notion・PostHogなど主要サービスが最初からカバーされるようになった。さらに7月に入ってからはper-node validationのMCPツールが追加されるなど、細かい信頼性強化が続いている。
🟢 Zed、ACP陣営の拡大が加速中
2026年1月、ZedとJetBrainsが共同開発したACP(Agent Client Protocol)が正式発表され、2026年6月時点で50のエージェントと成長を続けるエディタ群が仕様を実装している。Devin Desktop(Windsurfのリブランド)は6月2日にACPサポートを追加し、Claude Agent・Codex・OpenCodeをそのAgent Command Center内で動かせるようになった。一方MicrosoftはVS CodeでのネイティブACP対応を明言しておらず、MCPで十分という立場のままだ。
🟢 Kiro(AWS CLI)、Claude Sonnet 5対応と機能拡張が続く
Kiroは7月、IDE・CLI・WebにClaude Sonnet 5を追加し、AWS US-East-1とEurope(Frankfurt)リージョンでPro/Power層に段階的に展開している。7月1日にはKiro WebのサンドボックスがAWSリソースに直接アクセスできるようになり、Figma・Stripe・Supabaseなど外部サービスとの接続が標準的な認可フローに統一された。CLI側でもMCPのOAuth管理コマンドが追加され、認証が詰まった際にセッション再起動不要で再認証・中断・認証情報削除ができるようになっている。
🟡 Windmill、AIエージェント機能を継続強化
7月の1.748.0リリースではAIエージェントのワークフローステップに推論の強度(reasoning effort)設定が追加され、データパイプライン周りの安全機構も拡張された。6月にもAIチャットにフォルダ作成ツールや/compactガイダンス、パーソナル指示の編集機能が加わるなど、地味だが継続的な機能追加が続いている。
🟡 Aider、リリース頻度は落ち着くも思想は変わらず
Aiderの最新安定版はv0.86.2(2026年2月12日リリース)で、初期の月に複数回というペースから、リリース頻度は落ち着いてきている。一方Claude Codeは同時期v2.1.172(npm、6月10日公開)と、ほぼ毎日のペースでアップデートを続けているという対照的な状況。AiderはGit中心・モデル非依存という「小さく、速く、ベンダーに縛られない」思想を保ち続けている。
🟡 Tolaria、MCP機能が着実に拡充
6月6日のリリースでは、AIエージェントが直接ノートを作成できる機能や、ボールト操作を自動化するネイティブMCPツールが追加された。7月1日リリースではAIエージェントセッションをより直接的に停止できるようになり、OpenCodeのMCPセットアップも分かりやすくなっている。
まとめ:作業机は残る、しかしAIは種になる
今月はDifyをほとんど触らなかった。n8nも深掘りしなかった。その代わりに、CLIに没頭し、Tolariaを開きっぱなしにし、Node-REDで妄想を続けた。
作業机(CLI)は残る。
しかしAIは、これから種として爆発的に増える。
ボーンAIネイティブなツールが増えるほど、どのAIを使うかを気にしなくていい世界に近づいていく。それが、今月一番手触りのあった変化だった。
次号予告
Node-RED、n8n、Difyは本当は競合なのか?それとも役割の違う仲間なのか?実際に連携させながら、今度こそ考えてみます。
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